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日興、担当役員が辞任 会長ら報酬減額 決算水増し疑惑

asahi.com:日興、担当役員が辞任 会長ら報酬減額 決算水増し疑惑〓-〓ビジネス

日興コーディアルグループの不正経理事件の記事。

結局05年3月期の有価証券報告書を訂正することになっています。また、証券取引等監視委員会も、虚偽の有価証券報告書を作成したとして日興に過去最大の5億円の課徴金納付を命じるよう金融庁に勧告しました。

「日興は04年、100%出資子会社の日興プリンシパル・インベストメンツ(NPI)が東証1部上場のコールセンター大手のベルシステム24を買収。この過程で特別目的会社(SPC)がNPIに対し、ベル社株に交換できるEB債を発行した。日興はNPIに生じた含み益約140億円は利益として計上したものの、含み損が発生したSPCは連結対象外にし、損失を計上しなかった。

 一方、監視委は日興がEB債発行の際に発行日を偽るなどして、本来なら計上できなかった株式の評価益など計184億円を計上したとみている。ベル社の株価が9月中旬に上がったことから、日興が組織ぐるみで帳簿や会議録を改ざんして発行期日を変えたとみており「1人の担当者の問題ではなく、役員など組織的な関与がないとできなかった」と指摘している。」

従来は、連結範囲に関する会計基準の解釈を(意図的かどうかは別として)間違えて、SPCやベルシステム24を連結から外したことが問題とされていましたが、実はもう少し悪質な不正だった可能性があるようです。つまり、ベルシステムの株価が上がったあとに、バックデートでデリバティブ取引を(値上がり前の条件で)契約したのではないかという疑惑です。

連結問題をひとまずおいておくとすると、SPCは多額の金銭債務を負ってベルシステムの株式を買っているのですから、ベルシステム株の価値下落をヘッジするようなデリバティブを契約すること自体はあり得る話です。しかし、それは契約時点の株価に基づく公正な条件で契約した場合に限られます。株価が上がった後(9月)に、8月までバックデートして、上がる前の株価で算定した条件で契約すればSPCは最初から含み損を抱えることになります。逆にデリバティブ取引の相手である日興の連結子会社は、含み益を持つ状態からスタートし、決算時点で時価評価した結果利益が出たということになります。

これは会計基準の解釈の問題ではなく、日興コーディアルの連結子会社が、取引先であるSPCと共謀して、連結子会社に最初から利益が生じるような不正な契約を結んでいたという悪質な粉飾決算になるのではないでしょうか。

もちろん、バックデートにより金額的にどのくらいの影響があったのかなど詳しい情報が明らかになっていないので、意図的な粉飾とまで決めつけるつもりはありませんが、相当いかがわしい取引であるという印象は受けます。(まさか一般顧客相手にはそうした行為はしていないとは思いますが。)

日興コーディアルグループのプレスリリース(PDFファイル)

(日経)日興コーデ、決算訂正を発表・監視委、課徴金5億円勧告

(毎日)虚偽記載:日興に課徴金5億円 金融庁に証券監視委が勧告

(読売)日興利益水増し188億円、課徴金5億円を勧告

株式会社日興コーディアルグループに係る発行登録追補書類の虚偽記載に係る課徴金納付命令の勧告について(証券取引等監視委員会プレスリリース)

このプレスリリースでは「NPIHが発行しNPIが保有していた他社株券償還特約付社債券の発行日を偽るなどしてNPIの会計帳簿等を作成」していたといっています。(注:NPIHがSPCで、NPIが日興コーディアルの子会社です。)

バックデートして取引日を偽ったという点では、米国で最近問題となっているストックオプションの付与日を株価が低い日付までバックデートしていたという不正に似ています。

(補足 12月20日)
ここでは問題のデリバティブ取引がヘッジのためではないかという趣旨のことを書きました。しかし、その後の報道をよく読むと、問題の他社株転換社債は、保有者側に株式で償還を受ける権利を与えるようなタイプのようですので、SPCのヘッジには役立ちません。会社のプレスリリースをみても、スキーム自体の説明も乏しく、また、こうしたスキームの取引を行った理由もはっきりしていません。もう少し詳しい情報がほしいところです。
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