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夜の街で豪遊、社長への「貸付金」と巨額使い込みで破産した仙台の名門企業(現代ビジネスより)

夜の街で豪遊、社長への「貸付金」と巨額使い込みで破産した仙台の名門企業

最近の倒産事例を集めた書籍から、Sharp Document 21yoshida(SD21ヨシダ)という会社とその関係会社の倒産を解説した記事。

シャープ製複合機などを販売していた会社ですが、架空リースで売上を水増しし、資金調達をしていたそうです。

「民事再生申立書によると、粉飾を始めた時期は2006年。設立から数年後だったという。東日本大震災後に資金繰りに窮した際には、複合機の架空リースに手を染め始めた。この架空リースとは、1台の複合機の販売に対し、二重のリース契約を組み、二重の販売代金が入金となる不正な手法である。この手法は複合機の仕入れ代金も発生しないため原価が抑制され、損益計算書上の粗利益率が改善されるなど、実態の利益率との乖離が生まれる。

皮肉なことにこれが会社の対外信用をさらに高めたようだ。金融機関に提出する見かけ上の決算書の内容が良くなり、「融資を受けやすくなった」(申立書)という。地方銀行を中心に借入明細と現預金明細、リース債務などが違う決算書を複数作成し、融資を引き出した。一方で複合機販売1万台を目標とし業績の拡大と従業員教育を図るため、架空リースの回数も増やした。「銀行借り入れ」と「リース債務」という、金融機関に提出した決算書上には見えない簿外債務が膨れ上がっていった。」

リース会社に複合機を販売(代金はリース会社からすぐに入金)、リース会社はユーザーとの間でリース契約を結ぶという取引なのでしょう。架空のリース契約を締結すれば、そのリース料を自社で払わないといけませんが、それは長期に少しずつ払っていけばよいので、時間稼ぎはできます。新たな架空リースなどで資金繰りをつけることもできるでしょう。

決算の上では、優良企業だったそうです。

「SD21ヨシダは、対外信用を高めるためか、信用調査機関には丁寧に対応していたが対外公表していた2020年9月期の決算内容では、負債合計は約11億円、純資産合計約8億円で自己資本比率は40%超。売上高約35億円に対し最終利益は約3000万円と、優良企業だと判定されるよう繕っていた。」

しかし「2021年に入り内容が異なる複数の決算書が存在することが判明」、「社長は粉飾決算を認め、5月中旬以降、弁護士同伴で関係者への事情説明を余儀なくされた。」

経営実態はひどいものだったそうです。

簿外債務は20億円どころでなく「70億円」。そしてその主な使途は「赤字の穴埋め」(31億円)だけでなく、社長への巨額の「貸付金」(33億円)だった。架空リースを繰り返し行っていたため、リース料の支払いが増えていたほか、複合機販売の競合激化で1枚当たりのカウンター料金を値下げせざるを得なかったことで、実際は30億円以上の赤字となっており、大幅な債務超過に陥っていた。」

貸付金の中身は、「遊興費」と「株式投資失敗への穴埋め」など。公私混同がひどかったようです。「ある同業者によると、「社長の国分町(仙台の歓楽街)での豪遊は有名だった」という。」

結局、事業は東証プライム上場会社の子会社の引き継がれましたが、社長と会長は破産、社長は刑事告訴され、実刑判決を受け収監されたそうです。

こちらは同じ書籍から、鶏卵業の会社のグループの倒産です。

「森のたまご」を全国のスーパーに出荷 鶏卵最大手が急転、倒産した理由(現代ビジネス)

「エッグ・キング」と呼ばれた業界最大手 美術品に魅せられた創業者の末路(現代ビジネス)

「鶏卵大手のイセ食品グループの中核企業・イセ食品株式会社とイセ株式会社は2022年3月11日、債権者(あおぞら銀行)と株主(伊勢俊太郎氏)から東京地裁へ会社更生法の適用を申し立てられ、同月25日に更生手続き開始決定を受けた。

同グループは俊太郎氏の父・伊勢彦信氏を実質支配者とする鶏卵業16社で、2020年3月下旬に取引金融機関に金融債務の返済猶予を要請し、私的整理手続きを進めていた。更生法を申し立てられるまでの経緯と真相を追った。」

親子間での事業承継がうまくいかなかったことや、ワンマン経営、過大投資、M&A、多額の美術品購入など、いろいろな背景があるようです。

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