会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

四半期開示が企業の成長阻害、自社株買い規制の議論を-原氏一問一答(ブルームバーグより)

四半期開示が企業の成長阻害、自社株買い規制の議論を-原氏一問一答

首相に助言している原丈人氏へのインタビュー記事。企業の開示や財務に関することも述べています。

「-四半期開示の見直し

「上場会社は知名度も上がり企業力も上がってくるが、大きく成長しない。四半期決算が問題だと。四半期決算内で業績を上げるというプレッシャーで多くの経営者が短期志向になってしまう」

「中長期の視点で設備投資や商品開発、研究開発投資をやっていくことを日本人は忘れてしまった。そういうところに日本の経営者の大きな問題点がある」

-自社株買い

「自社株買いは会社法が商法の時代には禁止されていた。今もドイツでは禁止だ。自社株買いは資本主義の大原則に反している行為だが、常態化して多くの会社が使っているので、商法の時代に帰るわけにもいかない。原則として自社株買いをどこまで認めるのか、これから議論するのが重要だ」」

「-公益資本主義

「会社が株主のものだという考え方を入れた途端、米国の実体経済の中枢の会社が皆がたがたになってきて、ファンドの売り買いのおもちゃになってきた」

「公益資本主義による分配と成長というのはとても良い。社員の給料が上がると、もっと働こうという気になる。給料が上がる会社は業績が良くなる。業績が良くなると株価も上がる。配当金を若干減らすのが株主にとって損だと思うのは大きな間違いで、必ず株価は上がる。公益資本主義というのは、株式市場の立場からみれば株価の時価総額を上げるのに最も有効な、強力なエンジンだ」」

首相の「新しい資本主義」のための四半期開示見直しや人的資本開示のルーツは、このあたりにあるようです。投資家保護という観点は薄いようです。

「自社株買いは資本主義の大原則に反している」というのは初耳です。自己株式取得は資本の払い戻しの一手段です。株式会社は株主のものだとすれば、会社に投下され増えたり減ったりした資本を、株主が自由に払い戻しできるのが、資本主義の原則でしょう。ただ、詐欺行為の手段になったり、債権者を害したり、株主間の公平を損ねたりといった問題が生じやすいので、規制をかけているのでしょう。長期資金が必要だから自己株式取得はしないというのなら、所有者である株主にそのような方針を説明すればよいでしょう。

分配の次は財政出動強化、首相に助言の原氏が分析-新しい資本主義(ブルームバーグ)

「原氏は、首相とのやりとりの頻度は「私からは言えない」としたが、「よく会っている。いろいろな助言はしている」と明かす。岸田首相は原氏が代表理事を務めるアライアンス・フォーラム財団の2021年10月の会合に寄せたビデオメッセージで、公益資本主義は「新しい資本主義を実現するために非常に重要な理論的な骨格になる」と話し、新しい資本主義実現会議と原氏の財団を「車の両輪」に例えたという。」

「原氏の影響を受けた岸田首相は、2018年には自民党に自身が会長を務める「公益資本主義議員連盟」を設立。20年の総裁選で菅前首相に敗れた後、21年6月に「新たな資本主義を創る議員連盟」を立ち上げ、格差是正のための再分配を重視する自らの経済政策を打ち出した。9月の総裁選では「新しい資本主義」を政策の柱に据え、勝利を収めた。」


(電子書籍版)

(書籍の宣伝文より)

「株主優先、四半期決算、時価会計、社外取締役制度など、「会社は株主のもの」とみなす「米国流の株主資本主義」の導入が「改革」と称されていますが、むしろ弊害を生んでいます。「会社は株主のもの」という考えでは、投資や経営が、短期利益重視となり、新技術開発にまわすべき中長期資金や、真にリスクをとる投資が不足してしまいます。

税制や金融のルールを改めることで、マネーゲームに回っている資金を中長期投資へと導くことこそ、「公益資本主義」が目指す「成長戦略」です。中長期経営を重視する日本型経営こそ、「公益資本主義」の雛形。米国を反面教師にし、今こそ日本が新しい資本主義のルールを示すべきなのです。」
名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事