金融庁の企業会計審議会が、監査基準の見直しを始めたという記事。30日に会議が開催されています。
「・・・オリンパスの損失隠し事件や大王製紙前会長の特別背任事件など企業会計の不正が相次いだためで、オリンパスの事件で問題視された監査法人の交代時の業務引き継ぎ項目の明確化などが焦点になる。監査基準の厳格化で不正の抑止し、企業会計に対する不信の払拭を目指す。」
「・・・業務引き継ぎ項目の明確化に加え、不正会計が疑われる事案を監査法人や公認会計士が発見した際に追加監査を行う基準の整備や、会計上のリスクに応じて重点的に監査する項目の規定が提案された。」
監査人間の引き継ぎに焦点が当たっているようですが、オリンパスのケースでは、監査人が交代するはるか以前から粉飾が行われており、オピニオンショッピングなどと違って、監査人交代で不正が見逃されていたわけでもありません。
さらに、前任監査人と会社がいろいろともめていたことは、後任監査人に伝わっていたわけですから、後任監査人がそれで把握したリスクに対応した手続をやっていれば、問題なかったはずです。粉飾首謀者の思惑どおり、子会社の優先株を数百億円で買い取る取引を見逃してしまったのは、リスク対応がまずかったといえます。
また、不正への対応という課題は、2002年の監査基準改正の際にも取り上げられており、基本的には、監査基準に組み込み済みといえます。
「財務諸表の虚偽の表示は、経営者による会計方針の選択や適用などの際の判断の誤りのみならず事務的な過誤によってももたらされるが、重要な虚偽の表示の多くは、財務諸表の利用者を欺くために不正な報告(いわゆる粉飾)をすること、あるいは、資産の流用などの行為を隠蔽するために意図的に虚偽の記録や改竄等を行うことに起因すると考えられる。そこで、監査人はこのような不正等について特段の注意を払うとともに、監査の過程において不正等を発見した場合には、経営者等に適切な対応を求めるとともに、その財務諸表への影響について評価することを求めることとした。」(「監査基準の改訂に関する意見書」(2002年1月)(PDFファイル)より)
さらにさかのぼれば、1997年には日本公認会計士協会から「不正及び誤謬」という監査基準委員会報告書が公表されています(現在も改訂が続けられ、残っている)。(もともとは米国での議論が発端だと思われます。)
不正対応については、基準上も実務上も、かなりの蓄積がすでにあるわけですから、それらを検討せずに、マスコミ受けする表面的な対策を要求しても、意味がありません(チェックリストの項目が増えるだけ?)。
監査基準の見直し議論 金融庁(日経)
「公認会計士による企業監査は財務諸表が適法かつ適正に作成されているかをチェックすることが目的で、不正発見は直接の業務とされていない。・・・」
「期待ギャップ」をどう解消――会計不正で監査基準見直しへ(@IT)
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30日の審議会の模様を少し詳しく伝えています。
「・・・萩原氏は「定められた時間の中で書類作成に時間がかかりすぎ、実際の監査時間はむしろ減っているのではないか」と指摘。「金融庁や日本公認会計士協会の監査法人に対するレビューが厳しすぎるのではないか」と話した。北海道大学大学院教授の吉見宏氏も「金融庁のチェックが厳しいことがマイナスになっているのかもしれない。チェックよりもサポートする体制が必要ではないか」と述べた。」
企業会計審、論議スタート 不正防止へ監査基準を見直し(SankeiBiz)
「監査基準」見直しへ…金融庁(読売)
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