利益は4社合計でも大和ハウスにかなわない
週刊東洋経済の先週号は、ゼネコンの特集だったようです。これはその宣伝記事。
上場スーパーゼネコン4社が束になっても大和ハウスに勝てないのだそうです。
「上場スーパーゼネコン4社の前2020年度営業利益は1位大成建設1305億円を筆頭に、2位鹿島、3位大林組、4位清水建設という順番だった。
ところが今2021年度の営業利益見込みは1位鹿島1095億円、2位大成建設900億円、3位清水建設765億円、4位大林組345億円と変動する。
一方、大和ハウスの2021年度営業利益見込みは3200億円だ。」
「大手ゼネコンは江戸時代や明治時代に創業した老舗企業が多く、道路や橋梁、大型ビルなどで多くの建築実績や高い技術力を持つ。それに対して、大和ハウスの創業は戦後の1955年。扱う建築物件も、規模が比較的小さい住宅が中心だ。会社の規模に大きな差があったこともあり、ゼネコン関係者はハウスメーカーを格下に見る傾向があった。
ところが今や経営規模は逆転している。例えばスーパーゼネコン・大成建設は2020年度売上高1兆4801億円、時価総額8611億円(2月3日時点)。対して、大和ハウスは2020年度売上高4兆1267億円、時価総額2兆2605億円(同)。2055年には「売上高10兆円」の目標もぶち上げている。」
大手ゼネコンは、工事が大型化して豊作貧乏状態のようです。
「(請負額が)1000億円を超える工事が普通に出てくるようになった」と大成建設の相川善郎社長が語るように、工事は大型化傾向にある。特に、首都圏の再開発工事は規模が巨大化。ゼネコンにとって工事の大型化はプラスのように見えるが、採算性が厳しくなる側面がある。
大型工事の発注者である大手デベロッパーにしてみれば工事価格が安ければ安いほどよく、値下げ圧力は強い。「デベロッパーの価格交渉がこれほど厳しいものになるとは想像していなかった」と吐露するのは、銀行からゼネコンに転籍した中堅ゼネコンのある社員だ。
「再開発案件は、ほとんど赤字なんだよね」。大手ゼネコンの役員たちは会合で顔をそろえると、こう嘆いているという。」
収益認識とか、工事損失引当金とか、見積り要素も大きいので、採算悪化傾向だと監査も難しくなりそうです。
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「関係者の間では、大林組の業績の足かせになったのは首都圏の大型工事と見られている。同社は東京・港区の高輪ゲートウェイ駅前の再開発プロジェクトの一環で、2021年4月に超高層タワーを着工している。港区虎ノ門麻布台の大型再開発でも、低層タワーなどの工事を進めている。「これらの首都圏物件が昨今の資材高の影響を受け採算が低下した」というのが関係者のもっぱらの見立てだ。」
「あるスーパーゼネコン社員は「北海道北広島市で建設中の新球場『北海道ボールパーク』が、大林組の業績下方修正にもっとも影響を与えたのではないか」と指摘する。」
「北海道ボールパークは北海道日本ハムファイターズの新スタジアムを核とするエリア開発で、2020年4月に着工し、2023年3月の開業を目指して工事が進行している。総工費は約600億円。北海道民が期待を寄せる大型プロジェクトだが、「工事採算が相当に厳しく、工事損失が発生していてもおかしくはない」(スーパーゼネコン社員)と言われる。」
「大林組はアメリカの大手設計事務所HKSと共同で、ボールパークの設計・施工を受注し、2020年春に工事をスタートさせた。ところが、「想定外のコストアップ要因が施工の段階で発覚したようだ」(スーパーゼネコン社員)。」
マスコミにここまで書かれたら、引当金を検討しないわけにはいかないでしょう。
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