企業会計基準委員会が、検討中の仮想通貨会計基準の対象から、企業が自社で発行した仮想通貨を除くという記事(「当面策定しない方針」)。
仮想通貨技術を使った資金調達(ICO)などの実態がつかめていないことが理由だそうです。仮想通貨会計基準案自体は3月中旬をメドに公表のようです。
「ASBJでは仮想通貨の保有や売買をした際の会計処理について議論し、昨年12月に草案を公開した。自社で発行した仮想通貨については議論の範囲外としており、パブリックコメントも踏まえ、草案の適用範囲から自社発行の仮想通貨を除外することとした。ICOは企業が「トークン」と呼ぶデジタル権利証を発行し、事業に賛同する投資家がビットコインなど広く流通する仮想通貨で買い取る仕組み。」
ASBJがなぜ仮想通貨の会計処理基準設定を急いでいるかというと、たぶん、登録制度が始まった仮想通貨業者の決算書のルールが必要だからでしょう。世界初のルールだとしたら、ICO関連を対象から外すだけでなく、本来はもう少し時間をかけて検討する方がよかったようにも思われます。
東証マザーズ上場のメタップス(IFRS適用会社なのでASBJの基準は直接は関係しませんが)が子会社でICOをやっています。会計処理は、ICOにおいて自社で発行した通貨だけでなく、ICOで取得した仮想通貨が原価評価であるなど、ASBJの案とはだいぶ違うようです。
また、税務上(所得税)での扱いは、仮想通貨は時価評価しない(売却益に課税)というものであり、これもASBJの案とは違います。
当サイトの関連記事(「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」の公表について)
その2(メタップスが海外子会社で行ったICOの会計処理について)
その3(所得税での扱いについて)
なお、ASBJの草案に寄せられたコメントが公開されています。
↓
実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」に寄せられたコメント(企業会計基準委員会)
三菱東京 UFJ 銀行のコメントで、仮想通貨を発行している場合の会計処理について懸念を表明しています。
「昨今の新聞報道等によると、仮想通貨の発行時に負債計上する会計処理がある模様だが、例えば仮想通貨の発行時に、将来に渡り法定通貨と交換することを保証することから、受入対価と同額の負債を計上し、かつ期末において計上し続ける場合、当該案 14 項iに従うと、自己の発行する仮想通貨を預かった際、同一の取引相手に対し仮想通貨の価値を越える負債を計上することとなるため、合理的でないと考える。」
この銀行は仮想通貨発行を計画しているのでしょう。こういうコメントもあって、自社発行仮想通貨を除外したのかもしれません。
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