(先日公表されたコーポレートガバナンス・コード(案)もそうだと思いますが)政府が最近熱心に取り組んでいる日本企業のガバナンス(企業統治)の改革について、問題点があるというコラム記事。
「先ず、気になるのは、政府が経済界に異例の要請を行っている賃上げとの関係だ。・・・
ROEを高めるためには、分子である純利益を増やすか、分母である自己資本を減らすかだが、前者にあって最も手っ取り早いのは人件費を含むコストの削減だ。ROE向上を強く求めることによって、いわゆる「トリクルダウン」が企業と従業員の境目でせき止められる可能性がある。賃上げとガバナンス改革を両方同時に求めることは、いわばアクセルとブレーキを同時に踏むような効果になりかねないのだが、この点について、政府はどの程度自覚しているのだろうか。」
「第二の問題点は、企業経営者がROE目標を聞き流せばいい第一の問題よりももっと根の深いものだ。それは、公的機関が大株主となって、企業に影響力を持つことが、企業ガバナンスを矯正する道であるとする「大きな勘違い」だ。」
「企業の監督官庁と株主のように相反する立場(プロ野球なら特定の球団のオーナーと試合を裁く審判のような立場)に、利害を共通にする主体が同時に立つと「利益相反」の問題が起こる。加えて、もともと国が民間企業の株主になることは、国による民間経済への介入であるとして、これを避けるべきだという意見もある(米国の公的年金が民間企業に株式に投資しない理由でもある)。
しかし、いわゆる有識者達の言動を見ると、公的年金が今よりもさらに大きな株主となることを、民間企業に対する発言力が増すとして、むしろ歓迎し、期待しているかのような印象を持つ。しかし、本気でそう思っているのだとしたら、勘違いに加えて、利益相反に鈍感である。」
「三つ目の心配については、ガバナンス改革、たとえばROEの向上を求められた経営者になった積もりで考えてみて欲しい。
端的にいって、経営者はガバナンス改革による利益の増加や株価の向上があれば、これを意図的に自分の収入増に結びつけることが出来る。・・・
・・・「ROE向上のため」をお題目に、コストカットで利益を増やして自分のボーナスを増やしたり、経営陣の報酬にストック・オプションを仕込んで株価上昇と共に自分の収入を増やしたりする経営者がいないとはいえない。」
おおむね当たっているような気がします。
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