会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

消費増税「19年10月に延期」 首相が麻生氏に伝える(朝日より)

消費増税「19年10月に延期」 首相が麻生氏に伝える

安倍首相が、消費税率10%への引き上げを延期する方針を、財務相や自民党幹事長に伝えたという記事。

延期期間は2019年10月までの2年半とする考えも示した。」

「首相は、主要7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)が閉幕した27日の記者会見で「世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面している。G7はその認識を共有した」と強調。「アベノミクスのエンジンをもう一度、最大限ふかしていく決意だ。消費税率引き上げの是非も含めて検討する」と述べ、増税を延期する考えを示唆していた。」

「一方、首相は公共事業など新たな経済対策を盛り込んだ16年度第2次補正予算案を編成する方向で検討に入った。首相官邸の幹部は「消費増税を先送りし、大規模補正を打つという考え方もある」と主張。規模は与党内で5兆~10兆円との見方が出ており、参院選後の臨時国会に補正予算案を提出する方向だ。」

成果文書(G7伊勢志摩サミット)

G7で「世界経済が危機に陥る大きなリスクに直面している」という認識を本当に共有したのかはあやしいという報道もあるので、公式サイトで見てみました。

世界経済の回復は続いているが,成長は引き続き緩やかでばらつきがあり,また,前回の会合以降,世界経済の見通しに対する下方リスクが高まってきている。近年,世界的な貿易のパフォーマンスは,期待外れの状況にある。弱い需要及び未対応の構造的な問題が,実際の及び潜在的な成長に負荷を与えている主な要因である。非経済的な由来による潜在的なショックが存在する。英国の EU からの離脱は,より大きな国際貿易及び投資に向けた傾向並びにこれらが生み出す雇用を反転することになり,成長に向けた更なる深刻なリスクである。悪化した地政学的な紛争,テロ及び難民の動きは,世界の経済環境を複雑にする要因である。我々は,新たな危機に陥ることを回避するため,経済の強じん性を強化してきているところ,この目的のため,適時に全ての政策対応を行うことにより,現在の経済状況に対応するための努力を強化することにコミットする。」(G7伊勢志摩首脳宣言仮訳4ページより)

原文(冒頭部分のみ)。

The global recovery continues, but growth remains moderate and uneven, and since we last met downside risks to the global outlook have increased.

宣言文では「世界経済の回復は続いている」といっています。また、「下方リスクが高まっている」というのと、首相がいっている「危機に陥る大きなリスクに直面している」とはだいぶ差があるように感じます。「弱い需要」のこともいっていますが、構造的な問題、英国のEU離脱が起きた場合のリスク、紛争、テロ、難民などの要因にもふれています。

政策的対応については...

「我々は,強じん性を高め,債務残高対 GDP 比を持続可能な道筋に乗せることを確保しつつ,経済成長,雇用創出及び信認を強化するため我々の財政戦略を機動的に実施し,及び構造政策を果断に進めることに関し,G7 が協力して取組を強化することの重要性について合意する。」

We concur on the importance of strengthening our efforts in a cooperative manner to implement our fiscal strategies flexibly to strengthen growth, job creation and confidence, while enhancing resilience and ensuring debt as a share of GDP on a sustainable path, as well as to advance structural reforms decisively.

仮訳では「財政戦略を機動的に実施」といっていますが、(いくつか報道されているように)原文では「財政戦略を柔軟に(flexibly)実施」であり、今すぐ財政出動しなければならないというニュアンスではなさそうです。また、「債務残高対 GDP 比を持続可能な道筋に乗せることを確保」といっているので、国の借金を野放図に増やすことはしないと約束したことになるのでしょう。

他方、構造改革については「構造政策を果断に進める」(原文ではadvance structural reforms decisively(構造改革を断固として進める))となっています。

財政戦略は「柔軟に(flexibly)」、構造改革は「断固として(decisively)」だとすれば、財政戦略よりも構造改革の方を強調しているように読めます。

なお、会計に関係しそうなものとしては、「腐敗と戦うためのG7の行動」という附属文書も掲載されています。

腐敗と戦うためのG7の行動(骨子)(PDFファイル)

首相がサミットでデータ提示、リーマン級下落と主張 一部で異論(ロイター)

「安倍晋三首相は26日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)の世界経済を討議するセッションで、コモディティ価格が「2014年以降55%下落しており、リーマン・ショック前後と同様」とするデータを各国に提示した。

しかし、現状の経済状況が「危機」に当たるかどうか異なる意見も表明され、首脳宣言の文言について、あす27日の発表ギリギリまで調整が続く見通しだ。」

首相、リーマン級危機を警戒 サミット世界経済討議で (日経)

首相の「リーマン級」に異論 エコノミスト「データちぐはぐ」(東京新聞)

「リーマン・ショック前夜」の薄弱すぎる根拠
いったい誰が分析資料を作ったのか?
(東洋経済)

焦点:サミットで経済認識一致せず、危機強調の裏に増税延期模索の声(ロイター)

「焦点だった財政出動でも、日本の思惑は外れた。日本は今回のサミットで、需要喚起に向けた財政拡大路線でG7が一致する姿を描いていたが、財政政策の重要性を共有するにとどまり、どう政策を実施するかは「国別の状況を考慮する」と、各国に委ねる方向でまとまった。

また、首脳宣言には「財政戦略を機動的に実施」との文言が盛り込まれたものの、ある政府関係者は「原文の『フレキシブル』を『機動的』と訳すことには違和感がある。『柔軟な』とするのが一般的では」と首をかしげる。「機動的」との語感が、政府支出を積極的に増やすイメージを想起させるとの指摘だ。

その政府関係者は「G7の中でも著しく成長率の低い日本から、財政出動を呼びかけられたことに疑問を感じた国も多いだろう」と振り返った。」
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