東芝が、半導体事業の分社化などで3月末までに5千億円超を捻出して債務超過を回避する方針だという記事。
「半導体事業の分社化で東芝は、分社した新会社の株式の2割程度を手放す方針で、少なくとも2千億円程度の売却益を見込んでいる。キヤノンや東京エレクトロンといった取引先、欧米の投資ファンドなどが関心を寄せており、すでに入札手続きに入った。東芝を支援する姿勢の三井住友銀行、みずほ銀行などの主力取引銀行や、政府系の日本政策投資銀行も傘下のファンドを通じた新会社への出資の用意がある。」
単独決算では子会社株式の一部売却により、利益を計上することは可能ですが、連結では、子会社のままでは、資本取引(売却先からの資本拠出)なので、利益は計上できません(米国会計基準でも同じでは)。新会社への出資についても、同様で、子会社のままでは持分変動益は計上できません。
もちろん、純資産にはプラスの影響となりますが、PL上、米国原子力事業の損失と相殺できるかのように宣伝しない方がよいのでは。
「さらに3千億円を支出の抑制などで捻出する。フラッシュメモリーの販売が好調で、2017年3月期の営業利益は、これまでの予想より1千億円を超えて上ぶれする見通し。20日には米国での原発部品会社の買収中止を発表。約600億円の費用を見込んでいたリストラも先送りし、支出をできる限り抑制する。」
支出の抑制といっても、期末日まで3ヶ月もないわけですから、そんなに急に減らせるものなのでしょうか。単に支払いを遅らせるだけであれば、資金繰りにはプラスになっても、純資産は増えません。リストラは、まだ決定していなければ、その費用計上の先送りはできそうです。
監査人も変な費用先送りがなされないかよく見る必要があるでしょう。
東芝、グループ会社の株売却へ(ロイター)
「米原発事業で最大7千億円規模の損失を見込む東芝が、財務改善に向け、上場グループ会社7社の株式売却を加速するため、保有見直しに着手したことが21日分かった。上場会社の株式は売りやすく、短期間で利益を出せるのが特徴。」
これも、子会社のままでは、連結上、利益計上はできないのでは。
キヤノン、東芝支援検討(ロイター)
「キヤノンの御手洗冨士夫会長は20日、共同通信のインタビューで「(東芝の半導体事業は)価値が高い。(出資を)前向きに検討する」と言明。「半導体は絶対に守るべきだ」とも話し外資ではなく国内勢が出資して支援すべきだとの考えを示した。」
東芝が米社の出資受け入れへ交渉、メモリー分社化で=業界筋(ロイター)
「業界筋によると、東芝は提携先のハードディスク駆動装置(HDD)世界最大手、米ウエスタンデジタル(WDC.O)(WD)と出資受け入れ交渉に入った。」
「不正会計問題に伴う財務の大幅悪化からの立て直し途上にある東芝にとってメモリー事業は再建の柱だけに、分社して外部資本を受け入れる場合でも、連結子会社としてグループ内に止めながら東芝本体の影響力を維持したい考えだ。」
<社説>東芝の巨額損失 経緯の解明が不可欠だ(毎日)
「東芝は債務超過に陥るのを避けるため、資本増強や銀行の支援取り付けを急ぐ考えだが、この損失発生には不可解な点も少なくない。経営陣は早急に損失額を確定させ、経緯を明らかにすることが求められる。」
「新たな損失は、このウェスチングハウスが15年末に買収した原発建設工事などを手がけている米企業に関して発生したものだ。
買収額は「0ドル」だったが、実態は最大7000億円もの損失が放置されたボロボロの会社だったわけだ。資産の査定はどうだったのか、経営陣がウェスチングハウスからどんな説明を受け、どういう判断で認めたのだろうか。
買収時期は、2300億円にのぼる東芝本体の不正会計の処理とリストラ計画が大詰めを迎えていた。当時の室町正志社長が「新しく生まれ変わり、信頼を得られるよう全力を尽くす」と語った時でもある。グループで20万人近い従業員を抱える名門企業が、なぜこうも大きな失敗を重ねるのか、理解に苦しむ。」
東芝「倒産」はついに秒読み段階か 〜取締役会議長が明かした内情(現代ビジネス)
「――巨額損失の原因が何だったのか、はっきりとした説明がない。
「S&Wでコストがかさみ、資産価値が下がり、減損が必要になる懸念があるという説明だったので、ではその原因は何だと問うても、実はわからないという状況なんです。
そもそも、今回の件は、米国会計基準に沿って、S&Wの買収から1年以内というタイミングでWHが資産の見直しを進めていたところ急遽出てきた話で、情報がそれ以上つかめていないんです。
そのため、取締役会としては報告を受けた直後、志賀重範会長らに情報集めのためにアメリカに飛んでもらったのですが、そこには膨大な伝票、資料の調査が待ち受けていて、とてもじゃないがすぐには結論を出せないということになった」」
「――結局、現時点でも詳しい原因や損失額は把握できていない?
「現状では資材の使用料などが増え、コストがかさみ、生産性が当初考えていたよりも上がらなかったのでは? という話なのですが、あくまで推測で、実際に何が原因で減損がどこまでの額になるのか見通せていません。
とにかく、一番の問題は『ネタ』がないことです。情報が十分に集まらないので、その報告を受けないと何も判断ができない。今後も、何かわかった段階でマスコミを通してお伝えするつもりではいるんですが」」
こんな状況で、決算が組めるのでしょうか。
最近の「企業会計」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事