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会長声明「公認会計士資格の適切な表記と集計の要請について」(日本公認会計士協会)

会長声明「公認会計士資格の適切な表記と集計の要請について」

日本公認会計士協会は、会長声明「公認会計士資格の適切な表記と集計の要請について」を、2022年12月26日付で発出しました。

協会によれば、この件は「公認会計士登録制度の根幹にかかわる問題」なのだそうです。

9月に「会員監査法人における公認会計士資格の表記に関する誤りについて」というプレスリリースを出していますが...

「当協会では、上場会社監査事務所名簿に登録された監査事務所に対して、公認会計士資格表記の誤りがないかの自己点検と、当協会への報告を求めた結果、複数の上場会社監査事務所の作成した書類や名刺において表記の誤りが発生している状況を把握いたしました。また、監査事務所から誤った情報を提供したことにより被監査会社の有価証券報告書の記載誤りに繋がっている事案も認められております。被監査会社をはじめとする全てのステークホルダーの皆様に、多大なるご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。 」

ミスしていた監査事務所に対しては...

「当協会は、自主規制団体として、本件事案の発生を深刻に受け止めるとともに、公認会計士登録制度の根幹にかかわる問題と認識し、当該監査事務所に対して、今後同様の事案が生じないように厳重注意するとともに、個々の原因分析結果に基づいた再発防止策の策定と実行を要請し、当協会に報告するよう、会則に基づく勧告を行いました。

今後、適切な再発防止策の策定と実行によって、当該監査事務所の業務管理体制の改善が着実に実施され、再発防止に繋がるよう指導・監督を進めるとともに、その誤表記の態様や状況に応じて会則に基づき厳正に対処いたします。 」

会員への要請。

「会員各位には、公認会計士の登録制度が公認会計士制度の根幹をなすものであることを再認識し、公認会計士資格の登録に基づいた適切な表記や集計を行うよう強く要請します。 」

些末な問題だと思いますが、他方、細かいところで手を抜くと、信用を失うという面もあるでしょう。資料を作成するスタッフなどへは、きちんと指導し、成果物をチェックすべきでしょう。

「公認会計士資格の誤表記に係る日本公認会計士協会の対応について」という参考資料(全10ページ)もついています。

この資料によると、18事務所で誤記載があり、2事務所で、登録前に公認会計士という肩書きの名刺を使っていたそうです。

(会計士協会資料より)

18監査法人で誤記載 非登録者を「公認会計士」―協会(時事)

「このうちトーマツやEY新日本、あずさ、太陽の4監査法人では、非登録者本人が誤記載を認識していたという。」

「登録していないのに、名刺に公認会計士と記載していた法人もあった。」

報酬請求に影響があったりすると、なおやっかいです。

無資格者を「会計士」と誤記載、あずさや太陽なども
18事務所で確認、有報訂正数十件
(日経)

「監査の有効性に影響はないが、顧客企業の有価証券報告書で会計士の人数などの訂正が数十件に及んでいるという。

誤記載が見つかった事務所では、会計士試験や実務補習後の修了考査に合格しても、多忙などを理由に公認会計士協会への登録をしないままの従業員がいた。組織として管理体制の不備や確認不足などもあった。トーマツ、EY新日本、あずさ、太陽では誤記載対象の本人が誤りを認識していたが、修正されなかったという。」

(補足)

協会の会員ページで、この問題に関する調査のややくわしい資料が掲載されています。ミスの原因なども書かれています。

監査事務所における公認会計士資格の誤表記に関する調査対応について

日経などは、これを見て書いているのかもしれません。

コメント一覧

kaikeinews
たしかに、試験合格者のスタッフであれば、クライアントや財務局に提出する文書のためのデータは、きちんと集計しようという意識が働くでしょうね。また、いっしょに仕事している監査チームのメンバーであれば、いつ登録したのかはだいたい把握しているでしょうし、あいまいであれば、誰かにきいたりして確認する手段もあるでしょう。

正直言って、今回の件が、協会のいうような制度の根幹に関するようなことがらとは思えないのですが、もし、監査法人の人事政策によって現場があれていることの表れだとしたら、そちらの方が問題でしょうね。
MH
大手監査法人に30年近く勤務してコロナ前に退任した者です。
資格の誤記載は起こり得る土壌があったものと感じています。
大手監査法人では7、8年ほど前から実質的な監査補助者として試験を全く受けていないアシスタントを監査現場先に連れて行き、データの整理等の判断を伴わない作業をさせています。
判断を伴わないということをもって公認会計士の独占業務としての監査の補助的業務をさせるのは可能としたことで、資格の有無についての意識が希薄になっている面があるかと推察されます。
バブル時代以降、何度か研修生として公認会計士受験者を採用したことはありましたが、採用者は試験受験者であり、また、監査現場へ連れて行くことはなかったと記憶しています。
ところが、近年では試験受験者ではない方、主に事務経験のある女性を採用して判断を伴わない作業を監査現場でさせています。
さすがに時間集計や監査報酬請求の対象外であったかと記憶していますが、人手不足に加えてコスト削減の意図もあって大手監査法人ではそのようなことをやっています。
人手不足の要因でこのようなことをやっているのが主ですが、もとをただせば過酷な人事評価のもとで人を絞り込み、人手不足を招いているのは人を大事にしない大手監査法人の人事政策にあるものと感じています。
過酷な人事政策→人手不足→試験受験者でもない補助者の監査補助的業務の実施→資格の有無への認識の希薄→今回の問題、と関わりがあるように思えています。
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