会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

近畿日本ツーリスト、コロナ不正の呆れた幕引き 受託事業の6分の1で「不正請求」が発生の実態(東洋経済より)

近畿日本ツーリスト、コロナ不正の呆れた幕引き 受託事業の6分の1で「不正請求」が発生の実態

近畿日本ツーリストの新型コロナ関係業務の不正請求問題の調査報告書と記者会見を取り上げた解説記事。

調査報告書(8月9日公表)の内容を紹介した部分。

「まず調査報告書では、驚くべき数字が明らかになった。調査委員会が本社内点検を経て、受託事業と判断した3152件(2020年度〜2022年度)のうち、自治体などへの請求数量と実際の稼働数量に差異があった案件は524件に及んだのだ。受託事業のおよそ6分の1で不正請求が発生していた計算になる。

近ツー各支店および個社の販売実績や毎月の販売実績は同社の取締役会などで報告されていた。そのため、調査委員会は髙浦社長ら近ツーの経営幹部は、「BPO事業の業績販売実態を把握することができたと思われる」と指摘している。」

金額ベースや、事業ごとではなく個々の取引ごとのベースでは、たぶん、もっと低い比率なのでしょうが、それにしても、6分の1の事業で不正があったというのは多すぎます。委託事業の売上に関して内部統制の大きな不備があったのではないでしょうか。

それでも、この受託事業が、会社の売上や利益にたいした影響を与えていないというのであれば、内部統制に少々不備があっても、無視できるのかもしれませんが、そうではないようです。

「2021年10月に開催された同社の経営会議で、2021年度下半期(2021年10月〜2022年3月)の重要推進事項として、「ワクチン接種支援業務などの公務BPO事業の売上総利益最大化」が掲げられた。

実際、ワクチン接種支援などのBPO事業が同社の業績を下支えしていたことは間違いない。同社の2022年度の業績は、本業の旅行事業は2019年度のの6割程度でしかないにもかかわらず、純利益は117億円とこれまでの最高益45億円(2015年12月期)を倍以上も上回った。」

ちなみに、親会社であるKNT-CTホールディングスの2023年3月期の内部統制報告では、不備なしだったようです。

利益達成のために、厳しいノルマが課されたそうです。

「その利益を達成するために現場には、厳しい「ノルマ」が課されていたことが調査報告書で垣間見えた。

「やること、見込み、進捗のお話をいくら立派に並びたてられても私には、ほとんど響きません。重厚なアクションに裏打ちされ結果で勝負するのが箇所長です」。2022年12月に西日本支社副支社長から同支店が管轄する各支店長に送られたメールだ。当月の販売高や売上総利益は「必達」である旨もメールに明記されていたという。

また、東日本副支社長は各支店長に対して2023年3月に「・他の項目で費用削減する・費用がオーバーするのなら売総(売上総利益)もその分超過させる等々で利益を死守するようにしてください」とメールを送付している。なお「利益を死守するようにしてください」については、太字で下線が引かれていたという。」

適正に請求ということは、一応、指導していたそうですが、調査報告書では、具体性に欠けると批判されています。

「一方で管理体制といえば、2022年9月に開催された西日本支社の支店長会議では「自治体からの事業は税金を使っている意識を強く持ち、変なところで儲けようとしない。利潤については取扱料金など適正に収受してください」と記載されたレジュメが示されたようだ。」

「調査報告書では、「コンプライアンスを徹底するための方法としては、(中略)抽象的に適正な行為を求めることにとどまり、具体性に欠けて」いると指摘している。」

役員や従業員の処分は...

「こうした調査報告を受けた結果として、近ツーの髙浦社長は引責辞任し、同社の幹部(退任者を含む)13名が報酬を自主返納する。社員37名が処分(詐欺事件で逮捕された関西法人MICE支店と静岡支店の社員4名の懲戒解職を含む)された。」

「対照的だったのが、親会社であるKNT-CTHDの人事だ。米田社長、小山佳延専務、三宅貞行専務の3名が報酬を自主返納するものの、経営体制はそのまま維持される。」

米田社長は6月27日に開催されたKNT-CTHDの親会社・近鉄グループホールディングスの定時株主総会で取締役に就任した。従来予定されていた近鉄グループHDの社長就任はなくなったものの、取締役の席は確保した形だ。

「詐欺事件で社員が逮捕されており、行政処分レベルの話ではない。米田社長ら経営幹部の処分は甘すぎる」と競合の幹部は指摘する。」

結局、子会社レベルの問題として、すませてしまったようです。

近畿日本ツーリストのような大企業ですら、このありさまなのですから、倫理感がもっとひくい事業者で不正請求がはびこるのは、当然なのでしょう。

調査委員会からの調査報告書の受領ならびに再発防止策の策定方針および処分等に関するお知らせ(2023年8月9日)(KNT-CTホールディングス)(PDFファイル)

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

  • Xでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

最近の「不正経理」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事