会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

人的資本の開示、来年開始 3月期決算企業から(日経より)

人的資本の開示、来年開始 3月期決算企業から
大手4000社対象、満足度や離職率 金融庁
(記事冒頭のみ)

有報提出企業は2023年3月期から人的資本の開示が義務化されるという記事。

主に11月7日に公表された開示府令改正案のことをいっているようです。開示府令改正案は、気候変動なども含むサステナビリティ関連情報全般やコーポレートガバナンス関連なども含むものですが、この記事では、人的資本に焦点を当てています。

「人材を企業の資本とみなす「人的資本」の開示義務化に向けて、金融庁が検討してきた制度の詳細が固まった。有価証券報告書(有報)を発行する大手企業4000社を対象とし、2023年3月期決算以降の有報に人材投資額や社員満足度といった情報の記載を求める。上場企業の多くを占める3月期企業は早急な対応を迫られる。」

「今回固まった制度概要では、23年3月期決算以降の有報を発行する企業が開示義務化の対象となった。...

ある上場企業からは「非財務情報を文章で記述するのは慣れておらず負担が重い」と早期の義務化を懸念する声もあった。金融庁はこうした声に配慮し、比較的開示しやすい項目を義務化の対象とした。」

新設されるサステナビリティー情報を記載する欄において、「人的資本に関する戦略や指標、目標などの明記を求める」とのことです。「人材育成方針」・「社内環境整備方針」などです。指標は、従業員の満足度や定着率・離職率、人材に対する投資額など。

人材の多様性に関する指標も開示が求められます。「女性管理職比率と男性育児休業取得率、男女間賃金格差の3つの指標の開示を新たに求める。これらは女性活躍推進法などで一定規模以上の企業に公表が義務付けられており、公表している企業は有報への記載も必要になる。」

開示府令改正案については、こちらもどうぞ。

当サイトの関連記事(開示府令改正案について)
その2(開示府令改正案の解説記事について)

「ヒトが大切」対外アピールで現場疲弊の本末転倒(東洋経済)

企業には事務負担がかかっているようです。

「まず、人的資本経営・開示の実務を担っている人事担当者とIR担当者を取材しました。「積極的に開示し、優秀な人材の獲得に繋げたい」(商社・人事担当者)、「教育予算を確保しやすくなる」(エネルギー・人事担当者)と前向きに捉える意見もありましたが、少数派でした。

多くの人事担当者・IR担当者が、人的資本開示の事務負担を嘆いていました。上場企業では来年から人的資本の開示が義務化されますが、開示項目が企業の自主性に委ねられていることから、どう開示するべきか、いま人事部門・IR部門は検討作業に追われています。」

企業の対応策は...

「複数の人事・IR関係者が指摘していたのが、「積極的周回遅れ」。つまり、他社の様子やトレンドを見極めてから、現実的な対応をしていこうというアプローチです。

「国・東証に開示項目をビシッとルール化してほしいのですが、これは期待薄。当社では、来年は最低限の開示をし、各社がどういう開示をするのかウォッチし、無理のない範囲で対応していきたいと思います。“積極的周回遅れ”というところでしょうか」(素材・人事担当者)

人的資本の“経営”と“開示”を分けて考えるべきではないでしょうか。当社でもヒトが何より大切なので、教育投資や健康経営にはしっかり取り組んでいくつもりです。しかし、情報開示については、株主・投資家やマスコミから後ろ指を指されない程度に、周回遅れで対応していきます」(精密・人事部門責任者)」

規則を決めている金融庁側も、おそらく、企業にどこまで細かく開示させればよいのかについて、現時点ではっきりした考えはなく、好事例があれば紹介するなどして、徐々に改善していけばよいぐらいの方針ではないでしょうか。初年度からがんばらなくてもよいのでは。もちろん、決められた項目は埋めないといけませんが(それだけでもたいへん)。

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