大成建設が、札幌の大型複合ビル建設工事での施工不良問題で、約240億円の損失を計上するという記事。
「大成建設は17日、札幌市で建設中の高層ビルで施工不良があった問題で、建て直し費用や違約金として約240億円の損失を計上すると発表した。」
「問題は鉄骨の傾きやコンクリート製床の厚みの不足で、工事監理者である設計事務所に虚偽の数値を報告していたため、発覚が遅れた。外部からの指摘で3月に公表した。」
正しく報告さえしていれば、大きな損失になる前に是正できたのでしょう。もっとも、発注者にばれなかったら、そのままだったかもしれませんが。
大成建設、札幌ビル施工不良で240億円損失 業績予想も下方修正(朝日)
「施工中工事の是正工事実施に伴う損失計上」及び「業績予想の修正」について(大成建設)(PDFファイル)
「2023 年 3 月 16 日に公表いたしました弊社札幌支店が施工中の「(仮称)札幌北1西5計画」において発生した鉄骨建方等の精度不良に係る是正工事関連費用として、工事原価が約 240億円増加する見込みとなりました。 」
「営業利益については、国内の建築事業における売上高の下方修正に加え、上記 1 及び主に東京オリンピック・パラリンピック関連の大型案件一巡後、戦略的に受注した複数の国内大型建築工事において、原価低減や追加工事の獲得に伴う収支改善以上の建設物価上昇により、収支が悪化する見込みとなったことを主因に、工事損失引当金の計上や手持工事の利益率が低下したことに伴い売上総利益が未達となったことから、前回予想を 364 億円下回る見込みです。」
比較的詳しい解説記事。
大成建設、前代未聞「ビル工事やり直し」の内幕(東洋経済)
「現場ではおよそ15階まで鉄骨が組まれており、工事全体の22.8%まで進んでいた。「15階まで組み上がっていた鉄骨をぶっ壊して、いちから建て直すなんて、前代未聞だ」と、準大手ゼネコンの幹部は驚きを隠さない。」
「発端は1月5日。NTT都市開発の担当者が現場を確認した際に、「このボルト、おかしくないか」と、計画とは違う仕様の施工箇所(仮設ボルトの穴にずれ)があることを見つけた。
この指摘を受けて、大成建設は1月10日あたりに、鉄骨の実測値などを書いた報告書を工事監理会社とNTT都市開発に提出した。
その後、大成建設が鉄骨の全数調査をしたところ、実数値と資料の計測値の食い違い、つまり報告書の虚偽が明らかになった。これは1月19日のことだ。梁の水平度合いの計測値を改ざんするなど、実際とは異なる数値を記載していた。」
問題発覚以前から、この現場では、会社で決めた品管プロセスに準拠していなかったようです。
「そもそも、大成建設は1月にNTT都市開発の指摘を受けた時点で、この高層ビル工事の自主検査書類を作成していなかった。大成建設では通常、各事業所で決定した品質管理計画書を基に作成した施工計画にのっとり、自主検査を行っている。その自主検査書類を工事監理会社に提出し、監理者が現地の目視をして次の工程に進むという品質プロセスを踏む。
しかし、現場ではこのプロセスを踏襲していなかった。...」
大成に限らない構造問題があるそうです。
「今回の事件の背景には、ゼネコンに横たわる構造問題がある。準大手ゼネコンの幹部は次のように語る。「大成建設に限らず、ゼネコンは現場のチェック体制があまくなっている。クオリティーが落ちている」。
ゼネコンはこれまで、品質をチェックするために少しずつ、少しずつ、時間をかけて慎重に工事を進めていた。いまは労働環境の改善を目的に工事現場でも週休2日制を求められ、しかも民間が発注する建築工事の納期はかなり厳しい。全般に余裕がなく、品質管理の部分がどうしても、かつてに比べておろそかになっているという。」