好況の大手会計事務所の「ボーナス取りやめ」が米経済界に与えた波紋
米国のEYが従業員への年末のボーナスを取りやめたという報道が、経済界に波紋を与えているという記事。
まず、米国のボーナスの特徴を説明しています。
「アメリカのボーナスのシステムはとてもわかりにくい。日本のように、夏と冬に臨時給与として払うことを労使ともに前提としている「あってしかるべき」性格のものとは異なる。
むしろ、会社側が人材を安定的に引き止めるためのバンドエイドのような対処的性格を持っているので、各社によってその計算方式はバラバラであり、公平を目指そうとすればするほど計算方式も複雑になっていて、さまざまな種類の「ボーナス」が存在する。」
「今回、アーンスト・アンド・ヤングが毎年支払うことになっていたのを取りやめたボーナスは、いわゆる「パフォーマンス・ボーナス」というものだ。...
筆者の経験でも、それらのボーナスは課長クラスでも数百万円相当に上ることがあり、有能な社員をキープするための高いコストと、雇用者側に求められる柔軟性の必要を、いつも想起させられる。」
今回のボーナス取りやめの背景など。
「前述のファイナンシャル・タイムズ紙は、大手監査法人であるアーンスト・アンド・ヤングの今回の処断は、 2023年の不景気を覚悟してのものだったと論評している。
経済評論や新聞取材とは違って、会計監査法人は、外には出せないクライアントのナマのデータを見てきているので、アーンスト・アンド・ヤングは2023年には確実に不景気の足音が聞こえてくると判断したのかもしれない。
それに加えて、アメリカはコロナ禍を契機に著しい人手不足に見舞われていて、全業種横断的に失業率が低い。人手不足のときに約束のボーナスを取りやめるということの異常性が、経済界を驚かせたと言えるだろう。」
といっても、新規採用計画は変えていないそうです(記事の中で「今期、22万人の新しいスタッフを採用」というのはたぶん間違いでしょう。そんなに多くはないはずです)。
結論的には...
「おしなべてこれまでの経済変動になかった動きに労働市場が混乱に陥っているのは確かである。数十年ぶりのインフレに加えて不景気も重なり、(現時点の唯一の好材料である失業率の低位が)いよいよ反転して失業率が高じていくのならば、今年は経験したことのない経済状況に雇用者側も従業員側もさまざまな混乱に見舞われるかもしれない。
そして、今回のアーンスト・アンド・ヤングの「ボーナス取りやめ」は、その予兆かもしれないのかとアメリカの経済界では囁かれている。」