マイナス金利の企業会計や財務に与える影響についてまとめて解説した記事。
まず、退職給付債務。
「...金利がマイナスとなると、1より小さな数値で割ることになり、将来の支払額より退職給付債務が大きくなる。この場合、実際には将来の支払額と同じ金額の現金をそのまま保有しておけば支払いに困らないはずだ。にもかかわらず、計算上はそれ以上の金額を債務に計上するゆがんだ状態になる。」
「企業会計基準委員会は、今3月期については、適用する予定の金利がマイナスであってもゼロ金利を適用してもいいという意見を表明したが、退職給付債務の計算代行をしているIICパートナーズは、「マイナス金利を前提とした計算結果を提示した企業もあった」という。マイナス金利適用会社が実際に出てくる可能性がある。」
マイナス金利を適用すれば、退職給付債務が膨らむことにより、貸借対照表上、退職給付引当金が増えることになりますが、損益計算書の方は、翌期以降、退職給付費用の中の利息費用はマイナスとなります(利益にはプラス)。他方、退職給付費用から控除される(期待)運用収益はマイナス金利状況下で低い水準になるでしょう。それをマイナスの利息費用で補う形になるでしょうから、マイナス金利が企業業績に「マイナス」ということでもないでしょう。
資産除去債務は...
「将来における工場などの設備の除却費用を負債計上する資産除去債務も、「除却予定までの期間のリスクフリーレート(国債利回り)で将来の費用を割り引いて算出する」(秋葉賢一・早稲田大学教授)。現在の必要額が将来の支払額を上回る公算は大きい。」
これも、企業会計基準委員会で議論するのでしょうか。
金利スワップについては、会計処理だけでなく取引自体に影響を与えそうです。
「マイナス金利が企業の資金調達方法に影響を及ぼすケースも出そうだ。企業財務の現場では、コストを抑えるために金融機関から変動金利で借り、その後変動金利の受け取りと固定金利の支払いを交換する契約(金利スワップ)を結び、実質的に固定金利で借りた形にすることが多い。...
金融機関から借りる金利はマイナスにはならない。一方、金利スワップでの変動金利は、短期の市場金利に企業の信用リスクが加味されて決まる。短期の市場金利はすでに一部はマイナス。皮肉にも信用リスクの小さい優良企業であればあるほどマイナスになり、金利スワップを組んでも変動金利を二重払いする公算が大きくなる。それなら、最初から固定金利で借りようということになるだろう。」
そのほか、生命保険会社のソルベンシーマージン比率についてもふれています。
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