監査役歴14年のベテラン監査役、眞田宗興氏へのインタビュー記事。東芝事件などについて聞いています。
東芝の監査人について厳しいことをいっています。
「――取締役会や監査法人についてはどう思われますか。
眞田監査役:・・・
会計監査人の問題について、報告書は言及を避けています。しかし、例えば、パソコン事業における製造委託先への部品支給価格のマスキング。実態価格を知られたくないためとは言いながら仕入れ価格の数倍です。監査法人はここに注意を払うべきで、何年も監査をやっている監査法人であれば、不自然な数字に気が付いているはずです。2012年度の12月、パソコン事業で806億円の営業利益で、これは637億円の売上高を上回りました。監査法人は理由を聞いていますが、通り一遍の説明を受けて終わっています。いくら何でも利益が売上高を上回るのはおかしい。」
内部監査については・・・
「眞田監査役:東芝は委員会設置会社で、監査委員が自ら監査するというよりも、内部監査部門を活用する方法です。その内部監査部門は、経営監査部という組織で44人の社員を配置していました。ところが、ここは事業性監査に重きを置き、経営改善を図る観点から業務の有効性や効率性を調べていました。会計監査やコンプライアンスが軽視された可能性があります。」
また、監査委員会は、「会計監査は監査法人に任せる」「監査法人の無限定適正を待っている」という姿勢だったと批判しています。
監査役の責任が問題になった事例についてもふれています。
――「監査役事件簿――監査役と訴訟事件」という題で講演をしているようですが、どんな内容ですか。
眞田監査役:不正会計や企業不祥事に関し、裁判記録や第三者委員会の調査報告書について、監査役の動きを中心に分析し、それを話しています。例えば、2010年に発覚したメルシャンの循環取引。監査役は疑惑を持ち、専務に報告しています。だが、社長にも取締役会にも報告していません。監査役も専務もプロパー。社長は親会社から来ており、親会社の社長の耳に入ると、その事業部がつぶされると心配したようです。私も同じような思いをしたことがあります。気持ちはよく分かります。でもダメなんですよ。
同じような循環取引が明らかになったある照明会社では、親会社から監査役が送り込まれていましたが、何と12社の監査役を兼ねていた。毎月の取締役会にも満足に出られません。でも、第三者委員会の報告書で責任ありと判断された。何社も兼務をさせられている監査役がたくさんいます。報酬が増えるわけではない。気の毒です。
――セイクレストにおける不正な増資事件では、監査役に厳しい判決が言い渡されました。
眞田監査役:厳しいですね。監査役は取締役会で何度も発言しています。通常の監査役のレベルから言えばよくやっています。しかし、裁判所は、要するに監査役監査基準にある「勧告」まではしていないということを指摘しています。監査役の言うことに経営者が耳を貸さない場合、一歩進んだ行動を起こさないといけないということなのでしょう。監査役監査基準にも書かれているからもっと有効に使いなさいよということです。このような厳しい判決もあり得るのかなとも思います。でも、ここで社長が解任されれば、銀行借り入れもできなくなる状態でした。そのような状況下での監査役の立場を考えると、気の毒だなと思います。」
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