会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

貸倒引当金特例で税収減か 検査院、実態と隔たり(日経より)

貸倒引当金特例で税収減か 検査院、実態と隔たり

法定繰入率による貸倒引当金が、実際と比べて過大に計上されていると、会計検査院が指摘しているという記事。

「中小企業などの負担を減らすため設けられた貸倒引当金の特例措置を会計検査院が調べた結果、引当金が過大に計上されて法人税の減収につながっている恐れがあることが2日までに分かった。

検査院は、引当金の繰入限度額の計算方法として認められる「法定繰入率」が実際の貸し倒れ発生率を大幅に上回り、実態と懸け離れていると指摘。繰入率は1985年度以降見直されておらず、関係省庁に検証を求めた。」

「検査院が2011~15年度に特例を適用した延べ178万法人を調べると、全業種で法定繰入率が貸し倒れ発生率を大幅に上回り、金融保険業では30倍近く高かった。

その上で、発生率を基にした限度額から法人税の減収額を推計すると、農協など農林水産省の所管法人だけでも15年度で約133億円に上ることが分かった。」

税務上の貸倒引当金は、中小企業のために設けられた仕組みというわけではなく、大企業も含めて認められていたものが、課税ベースの拡大ということで、対象法人が絞られていったという経緯のものです。

中小企業向けを廃止するのは政治的に難しそうですから、さしあたり農協などをターゲットに見直したいのでしょう。

一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の設定(国税庁)

実績繰入率に基づく計算が原則で(これも対象法人が限定されている)、中小法人又は公益法人等若しくは協同組合等向けの特例として、法定繰入率に基づく計算も認められています。

「下記(1)の各法人については、繰入限度額の計算に当たり、一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の上記1の実績繰入率に基づく計算に代えて、下記(2)の繰入限度額の計算によることが認められています。

(1) 対象となる法人

イ 事業年度末における資本金が1億円以下の普通法人(ただし、下記の法人を除きます。)

・ 資本金が5億円以上の法人、相互会社又は受託法人(以下これらを併せて「大法人」といいます。)による完全支配関係がある普通法人
・ 完全支配関係がある複数の大法人に発行済株式等の全部を保有されている普通法人
・ 平成31年(2019年)4月1日以後に開始する事業年度からは、適用年度開始の日前3年以内に終了した各事業年度の所得の金額の平均額が15億円を超える法人(適用除外事業者)
・ 保険業法に規定する相互会社
・ 保険業法に規定する外国相互会社

ロ 公益法人等又は協同組合等」

会計検査院の報告書。

会計検査院法第30条の2に基づく国会及び内閣への随時報告

「...法人税に係る特別措置のうち、中小企業等の貸倒引当金の特例については、昭和60年度以降(金融保険業については56年度以降)、法定繰入率の見直しが行われていなかったり、41年度に2年間の時限措置として貸倒引当金の繰入限度額を割増しする措置が創設されて以降、累次にわたる延長が行われていたりしている。

本報告書は、以上のような状況を踏まえて、法人税に係る特別措置の一つである中小企業等の貸倒引当金の特例の適用状況並びに関係省庁及び財務省による検証状況について検査を行い、その状況を取りまとめた...」
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