「新しい資本主義」の改訂案が公表されたという記事。
「政府は6日、「新しい資本主義」の実行計画改定案を公表した。転職しやすい労働市場改革やスタートアップ支援に重点を置いた。」
「リスキリング(学び直し)による能力向上と市場の円滑化、職務給の導入を三位一体で進める。」
どういう給与体系にするかは、政府ではなく、企業が(適宜、労働者と協議しながら)決めることだと思いますが...。
「国のリスキリング支援は、現状では7割超が企業を通す形だ。これを5年をめどに5割超を個人経由にする。」
「市場円滑化の柱は失業給付の支給を早めることだ。現状は自己都合離職の場合は受給まで2カ月以上かかる。7日間で支給される会社都合の離職と同程度の期間にする。」
税務関係では、退職所得控除をいじるようです。
「終身雇用を前提とした退職金の課税制度も改める。今は同じ企業に20年を超えて勤めれば退職一時金をもらう際の税負担が軽くなる。働く人が安心して転職できる仕組みを整える構えだ。」
退職金の手取りが減ったら、ますます、企業にしがみついて、老後資金を稼がなければならなくなるのでは。
転職で成長が底上げされるなら、会計士業界は、(正確な統計数字はありませんが)転職激増で、日本経済の成長に寄与しているのでしょう。
そのほか、株式報酬(ストックオプションなど)の見直しもあるようですが、日経は社説で扱っています。
「岸田文雄内閣がスタートアップ企業育成策を固めた。「新しい資本主義」実行計画に盛り込み、月内に閣議決定する見込みだ。株式購入権(ストックオプション)制度などで法制改革に踏み込んだ点を評価したい。」
「現行制度を迂回する「信託型」ストックオプションと称する株式報酬の仕組みが多くの新興企業に広まり、その税務上の扱いを巡って混乱が起きた。今回の制度改革によって、税制優遇が受けられる公式なストックオプション報酬が普及するはずだ。
まず、これまで明確なルールがなかった未公開株の時価算定ルールを7月にも国税庁通達で明文化する。これによって多くの企業で税制優遇ストックオプションの権利行使価格を従来よりもかなり低く設定できるようになり、もらった人の潜在的な手取り収入が大きく増える見通しだ。」
この通達は、すでに案が公表されています(当サイト関連記事)。
会社法改正も考えているそうです。
「発行企業にとっての使い勝手も改善する。従来は株主総会決議が必要な場合が多かった権利行使価格などの条件を、取締役会で決められるように会社法を改正する。これで株価が急速に変化する新興企業にとって実用性が格段に増す。研究者など社外人材へのオプション付与の要件も緩和する。」
税制適格ストックオプションについても...
「さらに税法改正で、1200万円としている保有者1人当たりの年間権利行使上限を撤廃するか引き上げる。」
会計基準をいじるという話が出てこなかったのはよかったと思います。ストックオプション会計基準の本家本元である米国も、厳しい会計基準があるからといって、スタットアップが阻害されるということはなかったわけですから。
新しい資本主義、転職・起業で成長底上げ 労働市場改革https://t.co/8qlIhXKjS4
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) June 6, 2023
政府「新しい資本主義」改訂案 労働市場改革や生成AI強化など(NHK)
「具体的には、リスキリングに労働者が取り組みやすくするため、5年以内をめどに財政支援の比重を企業から個人に改めていく方針です。
また、勤続年数などではなく、仕事の難易度に応じた職務給の制度を日本でも広げる必要があるとして、導入企業の先行事例などを年内にまとめて公表するとしています。
さらに失業給付について、自己都合で離職した人でもリスキリングに取り組んでいれば会社の都合で辞めた場合と同様に受け取れるよう、支給要件を緩和する方向で具体的な設計を行うことも盛り込まれています。
このほか、勤続20年を超えると退職金への課税が大幅に軽減される措置が転職などを阻害しているという指摘を踏まえ、影響に留意しつつ、税制の変更を行うとしています。
そして、格差の是正策として、全国平均の最低賃金をことし中に時給1000円にすることを含め、議論する方針です。」
「将来的に10万社のスタートアップを創出することなどにより、アジア最大の「スタートアップハブ」として世界有数の集積地になることを目指すほか、企業が報酬として従業員などに与える自社株購入の権利「ストックオプション」の活用に向け、会社法の改正や税制の見直しを検討する考えです。」
「スタートアップの創業から5年未満の場合、個人保証を求めない新しい信用保証制度の活用を促進することや、事業の再構築のため、債務の減額を容易にする法律を早期に国会に提出する方針を盛り込んでいます。」
(補足)
新しい資本主義改訂版の全文はこちらから(ただし、会議に提出された「案」です)。
↓
当サイトの関連記事