会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

巨大IT企業と税制(下)各国の課税基準の違い活用 (日経より)

巨大IT企業と税制(下)各国の課税基準の違い活用(記事冒頭のみ)

日経の経済教室で「巨大IT企業と税制」という連載をやっていました。17日は、アマゾンなどの巨大IT企業が法人税を免れている一般的な仕組みを、学者が解説しています。

「FAANG(フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、アップル、ネットフリックス、グーグル)と呼ばれる米国を本拠地とする巨大IT企業への課税が世界的な問題となっている。海外で巨額の販売収益を得ているにもかかわらず、どこの国からも課税されない、あるいは少額の課税しかされないことから、不当に巨額の税を免れているのではないかと指摘されている。」

アイルランドやルクセンブルグなどの低税率国に複数の会社(1社は持ち株会社)を設立するところがポイントのようです。

「まず第1段階で、米国を本拠地とする親会社のP社が、A国(低税率国のアイルランドやルクセンブルクなど)にS1社とその子会社のS2社を設立する。S1社はS2社の株式を保有するだけの持ち株会社であり、S2社は実際に事業を統括する会社だ。

そしてP社はS1社に、それまでA国やその周辺のB国などで事業を営んでいた間のノウハウや顧客リストなどの無形資産を提供する。併せて今後はA国やB国などでの販売について「共同で費用を出し合って開発しようとする契約(費用分担契約)」を結ぶ。」

実際にA国(アイルランドなど)やその他の国(親会社の国など)での事業を統括するのは、S2社ですが、無形資産の使用料などをS1社に多額に支払うため、所得を圧縮できA国での法人税を免れます(そもそも税率も低い)。

また、その他の国では、売買契約上の売り主はS2社とし、恒久的施設の認定も回避して、法人税を免れます。

さらに、(ここがポイントだと思いますが)利益が集約されるS1社は税制の谷間となって、どの国の法人税もかかりません。

「アイルランドでこうした2つの法人を利用する仕組みは「ダブル・アイリッシュ」と呼ばれる。法人税の対象となる法人について、米国はどこで設立されたかを基準とする一方、アイルランドはどこで管理されているかを基準とする。両国の基準の違いを利用して、S1社の管理を米国などですることにより、米国とアイルランドの両国の法人税を免れることができる

ルクセンブルクの場合は、S1社を合資会社とすることにより、同様に米国とルクセンブルクの両国の法人税を免れることができる。合資会社が米国法上は納税義務者として扱われる一方、ルクセンブルクでは透明体(税法上の納税義務者でない事業体)として扱われるという両国の基準の違いを利用している。」

解説記事後半では各国の対応についてふれています。

日本については...

「わが国は18年度の税制改正で、BEPSプロジェクトの行動計画での検討に基づき、PEの認定を人為的に回避することによる租税回避を防止するための見直しをした。わが国が租税回避の問題について国際的な基準に合わせる改正だが、FAANGの課税逃れに対してはまだ不十分だ。

しかもわが国はG7諸国の中で唯一、租税回避行為の否認について分野を特定しない「一般否認規定」を制定していない。国内取引はもちろん、国際取引でも非常に複雑な契約や事業体を使った租税回避が問題とされている。わが国ではこうした租税回避に対する手段が限られている。

巨大IT企業による節税策は合法的なものであり脱税ではない。しかし巨額の販売収益が生み出されているのに、どこの国でも課税されない二重非課税は国際租税法の観点から放置すべきでない。これは「行きすぎたタックス・プランニング」であり、広い意味での租税回避と考えられる。

デジタル課税の問題はPEの見直しだけが論点でなく、どこの国でも課税されない二重非課税に対する取り組みが不可欠だ。そうした大きな視点で考えるべき問題だろう。」
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