会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

IASBが概念フレームワークの改訂を完了(IFRSに関するお知らせ)

IASBが概念フレームワークの改訂を完了(日本公認会計士協会「IFRSに関するお知らせ」より)

IASBは、「概念フレームワーク」の改訂版を、2018年3月29日に公表しました。

「今回の改訂は、測定及び認識の中止、表示及び開示に関する新しいガイダンスの追加だけではなく、資産及び負債の定義の改訂、重要な領域における明確化(財務報告における受託責任、慎重性及び測定の不確実性の役割など)が含まれます。改訂された「概念フレームワーク」は、2004年のプロジェクトの開始当初に作成された内容を大幅に改訂するものではなく、「概念フレームワーク」でまだ取り扱われていない論点、また、対応が必要な明らかな欠点の解消に焦点を当てるものです。」

IASBのプレスリリース。

IASB completes revisions to its Conceptual Framework(IASB)

The revised Conceptual Framework includes: a new chapter on measurement; guidance on reporting financial performance; improved definitions and guidance—in particular the definition of a liability; and clarifications in important areas, such as the roles of stewardship, prudence and measurement uncertainty in financial reporting.

その翻訳(ASBJのサイトより)

IASBが概念フレームワークの改訂を完了(企業会計基準委員会)

ポイントが1枚にまとまっています。

The new Conceptual Framework—six facts (IASB)

大手監査法人をすべて見たわけではありませんが、解説としては、これが詳しそうです。

IASBは改訂概念フレームワークを公表する(デロイトトーマツ)

「第2章-有用な財務情報の質的特性」

「本章では、慎重性の概念の明示的な言及を再導入しており、慎重性の行使は中立性を支えるとしている。慎重性は、不確実性の状況下で判断を行う際に警戒心を行使するものとして定義されている。」

「第3章-財務諸表と報告企業」

「ここでは2つの計算書のみを明示的に記述している、すなわち、財政状態計算書および財務業績計算書(後者はこれまでの包括利益計算書)であり、残りは「その他の計算書および注記」である。」

名前を変えただけ?

「第4章-財務諸表の構成要素

この章の主な焦点は、資産、負債、持分ならびに収益および費用の定義に関するものである。定義を以下に引用する 。

資産-資産とは、企業が過去の事象の結果として支配している現在の経済的資源である。経済的資源とは、経済的便益を生み出す潜在能力を有する権利である。

負債-負債とは、企業が過去の事象の結果として経済的資源を移転する現在の義務である。

持分-持分とは、企業のすべての負債を控除した後の資産に対する残余持分である。

収益-収益とは、持分の増加を生じる資産の増加または負債の減少(持分請求権の保有者からの拠出に関するものを除く)である。

費用-費用とは、持分の減少を生じる資産の減少または負債の増加(持分請求権の保有者への分配に関するものを除く)である。

新しいことは、経済的資源の独立の定義を導入し、経済的便益の将来フローへ参照を、資産および負債の定義の外に移動したことである。単に「資源」でなく「経済的便益」という表現は、IASBはもはや資産を物理的実体 としてではなく権利のセット として考えていることを強調している。資産および負債の定義も、もはや「期待される」イン・フローまたはアウト・フローを参照していない。かわりに、経済的資源の定義は、経済的便益を生み出す/移転することを要求する負債/資産の潜在能力を参照している。」

「資産の定義→負債の定義→差額としての持分の定義→持分の増減としての収益・費用の定義」という流れは変わっていないようです。

「第6章-測定

この章は、異なる測定基礎(歴史的原価および現在価値(公正価値、使用価値/履行価値および現在原価))、それらが提供する情報、およびそれらの長所と短所を記述している。現在原価は、学術文献にて広く主張されてきたことから新たに「概念フレームワーク」に導入されたものである。」

「本フレームワークは、測定基礎を選択する際に考慮すべき要因(目的適合性、忠実な表現、補強的な質的特性およびコストの制約、当初測定に固有の要因、複数の測定基礎)を設定し、財務報告の目的、有用な財務情報の質的特性及びコストの制約の考慮が、異なる資産、負債ならびに収益及び費用項目に対する異なる測定基礎の選択をもたらす可能性が高いことを指摘している。」

「現在価値」は フレームワーク原文ではcurrent valueのようです。広い意味の「時価」ということでしょう。また、ひとつの測定基礎(例えば公正価値)で済ませるのではなく、場面に応じて測定基礎を使い分けることをいっています。

「第7章-表示及び開示」

「包括利益計算書は、新たに「財務業績計算書」と名付けられているが、この計算書が単一の計算書と2つの計算書のいずれかで構成されるのかはフレームワークでは特定しておらず、単に純損益についての合計または小計を提供しなければならないことのみを要求している。また純損益計算書は、報告期間の企業の財政業績についての情報の主要な源泉であり、「例外的な状況」においてのみ、収益または費用がその他の包括利益に含まれることをIASBは決定するかもしれないことが記述されている。注目すべきは、本フレームワークでは純損益を定義していないため、何が純損益に含まれ、何がその他の包括利益に含まるべきかに関する質問は未回答のままとなっている。」

ASBJがいろいろなコメントを提出していましたが、不採用だったのでしょう。

また、「財務業績計算書」になったのは、包括利益が後退したわけではなく、「包括利益=純利益」(その他包括利益不要)という考え方と、「包括利益=純利益(最も重要)+その他」という考え方の調整がつかなかったのでは。
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