自民党が提出した政治資金規正法改正案の法律案要綱です。一部修正されて、衆議院で可決し、いまは参議院に回されています。
「政治資金監査の強化」という項目もありますが、監査のやり方が大きく変わるわけではなく、預貯金の残高をチェックするという手続きが加わるだけのようです(今までしていなかった?)。(ただし、その前提として、預貯金による政治資金の保管が定められています。裏金不記載の訂正で、裏金をあやしい使途(買収資金、私的流用など)で使ったのではなく現金でもっていたと主張するようなことはやりにくくなるのでしょう。)
「第2 政治資金監査の強化
1 預貯金による政治資金の保管
国会議員関係政治団体の政治資金については、国債証券等又は金銭信託による運用に係るものを除き、銀行その他の金融機関への預貯金の方法により保管するものとすること。 (第19条の8の2関係)
2 国会議員関係政治団体の範囲の拡充
(1) 政策研究団体(第5条第1項第1号に掲げる団体)を「国会議員関係政治団体」とすること。 (第19条の7第1項第3号関係)
(2) 政策研究団体は、当該団体を主宰する国会議員又は主要な構成員である国会議員の氏名及びその者に係る公職の種類等を届け出なければならないこと。 (第6条第1項関係)
3 翌年への繰越しの金額の確認等
(1) 国会議員関係政治団体の会計責任者は、政治資金監査を受けるまでの間に、収支報告書に記載すべき翌年への繰越しの金額が、収支報告書に記載すべき年の12月31日又は解散等の日における預貯金口座の残高を確認することができる書類(以下「残高確認書」という。)に記載された残高の額と一致しているかどうかを確認しなければならないこと。 (第19条の11の2第1項関係)
(2) 国会議員関係政治団体の会計責任者は、(1)による確認により翌年への繰越しの金額が預貯金口座の残高の額と一致しないことが判明したときは、政治資金監査を受けるまでの間に、その旨及びその理由を記載した書面(以下「差額説明書」という。)を作成しなければならないこと。 (第19条の11の2第2項関係)
4 登録政治資金監査人による政治資金監査の拡充
登録政治資金監査人による政治資金監査において確認する事項として、残高確認書及び差額説明書に基づいて翌年への繰越しの状況が収支報告書に表示されていることを追加すること。 (第19条の13第2項第5号関係)」
期末の預貯金の残高さえ合っていればいいということのようです。
附則として、独立機関の活用などを検討することを述べています。
「政治資金の透明性を確保することの重要性に鑑み、この法律による改正後の規定については、その施行の状況等を勘案して必要があると認められるときは、独立性が確保された政治資金に関する機関の活用も含めて検討が加えられ、その結果に基づいて所要の措置が講ぜられるものとすること。 (附則第12条関係)」
可決された修正案では、独立機関を設置するといっています。
「(政治資金に関する独立性が確保された機関の設置)
第十五条 政治資金に関する独立性が確保された機関については、政治資金の透明性を確保することの重要性に鑑み、これを設置するものとし、政策活動費の支出に係る政治活動に関連してした支出に関する当該機関による監査の在り方を含めその具体的な内容について検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。」
税務についてもふれているようです。
「第十六条 (中略)
2 個人が政治活動に関する寄附をした場合の寄附金控除の特例及び所得税額の特別控除(次項において「寄附金控除の特例等」という。)の対象の拡大、当該特別控除に係る控除率の引上げその他の個人のする政治活動に関する寄附を促進するための措置の在り方については、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。
3 公職の候補者が選挙区の区域(選挙の行われる区域を含む。)を単位として設けられる政党の支部で当該公職の候補者が代表者であるものに対してする政治活動に関する寄附を寄附金控除の特例等の適用の対象としないための措置の在り方については、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。(以下省略)」
会計士協会は、政治資金監査を拡充するだけでは無駄だというような趣旨の会長声明を出していましたが、改正が確定する時点で何か出すのでしょうか。
当サイトの関連記事(会長声明「国会における政治改革に関する特別委員会の設置について」)
自民党裏金問題は「監査」の問題ではない? 会計士協会がわざわざ「会長声明」を出して責任逃れ(現代ビジネス)(記事の一部のみ)
「実は、政党や政治家が代表を務める政治資金団体などには「外部監査」の制度が導入されている。では、その監査を行っていた「監査人」にはまったく責任がないのだろうか。政党はれっきとした監査法人が担当、政治資金団体は法律の定めによって公認会計士や税理士、弁護士が監査することになっている。会計のプロが報酬をもらった上で「監査」を行っているのだから、問題が起きれば本来、責任が問われるべきだ。」
改正全般については...
政治資金規正法改正案が衆院を通過 自公維などの賛成多数で(NHK)
「一方、政治資金の透明性を向上させる方策として、外部監査を強化し、議員の政治団体の支出だけでなく収入も監査の対象に含めることや、議員に収支報告書のオンライン提出を義務づけることを盛り込んでいます。」
「要綱」では、「収入も監査の対象」という点は読み取れませんでした。ただし、代表者による確認の対象には含まれているようです。