自民党総裁候補である河野大臣が、2015年に週刊エコノミストで発表した、核燃サイクル廃止に関する論文を再掲載した記事。
核燃サイクル廃止論を明確に主張しています。最近の報道を見ると、原発再稼働容認に変わっているものの、核燃サイクル廃止に関しては持論を保持しているようです。
「日本原燃が来年(2016年)3月、青森県六ケ所村に建設を進める使用済み核燃料の再処理工場を完成させると言っている。もともと1997年に完成予定だったのが、相次ぐトラブルによって竣工が22回遅れ、建設費も当初の7600億円から約3倍へと膨れ上がったいわくつきの施設だ。しかも、もし今回、再処理工場が完成しても、この工場を稼働させる必要がそもそもない。プルトニウムを使用する高速増殖炉の商用化が、これも当初は1980年代と言われていたにもかかわらず、いまだメドが立っていないからだ。
ウラン燃料が原子炉で燃えてできた使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、これを高速増殖炉という特別の原子炉に入れて燃やすと、理論的には投入した以上のプルトニウムを取り出すことができる。これが「核燃料サイクル」と呼ばれる我が国の原子力政策だが、もはや核燃料サイクルは国民にとってまったくメリットがない。」
「原発に関する国民的議論が高まる中で、「使用済み核燃料の搬出先がないから核燃料サイクルを動かす」という本末転倒の論理は通用しない。再処理にはまったくメリットがなく、直ちにやめるべきだ。そして、使用済み核燃料の中間貯蔵、最終処分について、逃げずに真正面から議論して、合意形成を進めることが必要だ。」
正しい主張だと思います。また、世界中のほとんどの国は、核燃サイクルなしで原発を動かしているわけですから、再稼働容認という方針にも矛盾しません。
もし核燃サイクルが廃止されれば、会計上はどうなるのか...
再処理工場や高速増殖炉(廃止が決まっている)は、当然減損処理が必要でしょうし、廃止に必要な費用は即時に全額引当てしまければなりません。すでに処理済みの費用で足りるのかどうかが問題でしょう。
電力会社への影響はよくわかりませんが(ある本によれば、電力会社の会計は「一般に公正妥当と認められた」会計ではない、「一般に認められていない」会計だそうですから、普通の会計士には解読不能)、使用済み核燃料を再処理工場が有価物として引き取ってくれるという前提の会計処理をもしやっているのなら、核燃サイクル廃止決定後は、単なる有害な廃棄物として、ゼロ評価の上、安全に処理するための費用を、即時に全額引当てする必要があるでしょう。
例として、関西電力の有報(2021年3月期)の貸借対照表を見てみると...
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/34/ee/f9236cebffe796cb03b4030943c0b5f5.png)
あやしい固定資産仮勘定が8千億円超、核燃料も5千億円超計上されています。
「一般に認められていない」会計の例。
廃炉、福島第2で着手 東電、完了まで44年 まず汚染物除去(2021年7月)(日経)(記事冒頭のみ)
「福島第2原発の廃炉には総額で約4100億円かかる見通しだ。原発の解体に約2800億円かかるほか、使用済み燃料の再処理費用なども必要になる。すでに約2300億円を解体引当金として積み立てている。
事前に引き当てていない約1800億円は分割計上を認められている「廃炉会計」を使い、10年間にわたって償却する。」