公正取引委員会は、下請代金支払遅延等防止法第4条第2項第3号(不当な経済上の利益の提供要請の禁止)の規定に違反する行為が認められたとして、サンデン(東証スタンダード)に対し、2024年2月28日付で勧告を行いました。
「違反事実の概要」より。
「⑴ サンデンは、資本金の額が3億円以下の法人たる事業者に対し、自社が販売する又は製造を請け負う自動車空調システム及び自動車空調用コンプレッサーの部品若しくは附属品の製造を委託している(これらの事業者を以下「下請事業者」という。)。
⑵ サンデンは、下請事業者に対して自社が所有する金型及び治具(以下「金型等」という。)を貸与していたところ、遅くとも令和4年1月1日以降、当該金型等を用いて製造する部品又は附属品の発注を長期間行わないにもかかわらず、下請事業者に対し、合計4,220型の金型等を無償で保管させることにより、下請事業者の利益を不当に害していた(下請事業者61名)。
⑶ サンデンは、令和4年6月から令和5年8月までの間に、前記4,220型のうち、合計2,458型の金型等を廃棄している(下請事業者43名)。
⑷ サンデンは、令和4年7月から令和5年8月までの間に、前記4,220型のうち、合計193型の金型等について、下請事業者に対し、見積書を徴収した上で、無償で金型等を保管させることによる費用に相当する額の一部を支払っている(下請事業者5名)。」
公正取引委員会からの勧告について (サンデン)(PDFファイル)
貸与金型をどんどん捨てさせて、結果として、補修用部品の生産に支障が生じると、サンデンやサンデンの顧客(自動車メーカー?)がいろいろ困る(エコにも反する)のでしょうが、そうならないようにするためのコストは、下請け業者に押しつけるべきではないのでしょう。
金型4000個、下請け保管を問題視 サンデンに公取委勧告(日経)
「サンデンは自動車の空調システムなどの部品製造を下請け企業に委託するにあたり、金型を貸与してきた。公取委によると、同社は長期間にわたって発注がない部品の金型など合計4220個を下請け企業に保管させていた。
1979年に貸与され、40年以上も下請け企業が保管していた金型もあった。重さが2〜3トンに上るものもあり、一部の下請け企業は場所が足りず、外部の倉庫や土地を借りて保管していた。」
「メーカーが下請け企業に金型の保管や管理を負担させる商習慣は、中小規模の企業にとって経営圧迫の要因になる。公取委や中小企業庁は実態調査などを進め、問題把握や改善策の周知を図ってきたが、違反の疑われる事例は後を絶たないという。」
メーカーが金型への投資のリスクを負担するという仕組みですから、一方的な下請けいじめではないと思いますが、発注がなくなった後も、ずっと無償で管理させるのは酷でしょう(下請け業者が金型を所有する場合も同様)。