四半期開示見直しは、自民党の公約にまで入ってしまったようです。
「自民党が衆院選の公約に掲げる四半期開示制度の見直しについて、高市早苗政調会長は12日の記者会見で、企業は「長期的な視点も大事にしないといけない」との考えを示した。
高市氏は、株主だけでなく従業員や消費者にも配慮した経営のための環境整備に岸田文雄首相が「とても力を入れている」と説明。短期的な利益だけを考えた場合、「企業にとっては長期的な人材投資もできないし、長期的な研究開発もできない」と語った。」
自民党が衆院選公約、コロナ対策や成長・分配など8つの柱(ロイター)
「衆院選公約の概要
...
2:新しい資本主義を実現する成長・分配政策
─賃上げに積極的企業への税制支援
─企業業績の四半期開示見直し
...」
四半期決算開示、金融審で見直し議論へ 実現には壁高く(日経)(記事冒頭のみ)
「企業が3カ月ごとに業績などを開示する「四半期開示」の見直しに向けた議論が始まる。木原誠二官房副長官は12日の記者会見で、「金融庁の金融審議会で投資家や企業の意見を踏まえて、市場への影響を十分に見極めて丁寧に検討を進める」と述べた。見直しは企業の負担軽減につながる半面、投資情報が減ることに投資家の反発は根強い。実現に向けたハードルは高そうだ。」
「市場への影響」というのは、株価への悪影響のことでしょうか。「分配」政策のうち、金融所得課税強化は引っ込めてしまったので、四半期まで撤回するのは、けっこう難しそうですが...。
ところで、見直しといっても、四半期開示制度導入前の状態に戻すわけではないでしょう。少しテクニカルで細かい話になりますが、さまざまな論点があります。
まず、任意での四半期開示を認めるかという論点があります。四半期が短期主義を助長するのなら、任意開示を認めず、禁止すべきですが、たぶん任意での開示は容認、あるいは国際的企業については推奨でしょう。
次に任意の開示を認めるとして、企業が任意開示する場合に、四半期報告書を提出させるかどうかという点があります。四半期報告書を出させるという場合は、任意だけれども法定の開示ですから、従来どおり、財務諸表部分については、四半期の会計基準や表示の基準、それ以外については開示府令に従うということになるでしょう(中身は見直すかもしれませんが)。金商法の四半期報告書の制度をまるまる廃止するという場合は、任意で開示される四半期情報について、会計基準や財務諸表以外の部分の開示ルールをどうするかという問題が出てきます。証券取引所ごとに何らかのルールを定めるか、完全に企業の自由にするかのどちらかでしょう。
四半期を見直すといっても、半期での法定開示は継続するのでしょう。そうすると、その会計基準・表示基準・財務諸表外の開示ルールはどうなるのでしょうか。以前の状態に戻すのであれば、ゾンビのように残っている中間財務諸表作成基準やそれに基づく表示基準などが適用されるということになりますが、もう一つの選択肢として、四半期会計基準・四半期財規・開示府令の第2四半期に適用される規定を、半期での法定開示に適用するという方法も考えられます(基準・規則の名前は変えないといけませんが)。これまでの開示との継続性や会社の負担を考えると、後者の方が妥当でしょう。
しかし、そうすると、同じ半期の法定開示といっても、今の第2四半期と同様の開示と、現行の半期報告書のルールに従った開示の2種類が生じることになります。これはどうにかしないといけないでしょう。
財務諸表に対する監査・レビューに関しても、任意の四半期開示にレビューを求めるのか、半期の法定開示はレビューなのか中間監査(これもゾンビのように残っています)なのかという問題があります。
日経記事では、金融審議会で検討するといっており、それはそのとおりなのでしょうが、その検討結果次第では、会計基準や監査・レビュー基準(これらは企業会計審議会やASBJの守備範囲)にも影響が出てくるでしょう。なるべくシンプルで合理的なルールにしてほしいと思いますが...。
(四半期見直しの有無にかかわらず、会計基準は、半期、四半期のどちらにでも適用できる期中財務諸表の基準として再編する、中間財務諸表は廃止し、銀行などで別の開示が必要であれば、業種別のルールとして別途設ける、中間監査は廃止し、レビューに統一するという検討をやるのがよいのでは。四半期見直しが撤回されたとしても、ムダにはなりません。)
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kaikeinews
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