会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

東芝の粉飾を見逃した「新日本監査法人」が存亡の危機(現代ビジネスより)

東芝の粉飾を見逃した「新日本監査法人」が存亡の危機
金融庁の厳しい処分がまもなく下る?


新日本監査法人への処分勧告を取り上げた記事。

「歴史は繰り返すのか――。

9年前、筆者がスクープした日興コーディアル証券の粉飾決算に「適正意見」を付けていたことで息の根がとまったみすず監査法人(旧中央青山監査法人)。在籍していた公認会計士の大半が移籍したのが、新日本監査法人であった。その組織が再び、存亡の危機に瀕している。」

全体としては、新日本側を追及する記事ですが、ここでは、金融庁(公認会計士・監査審査会)の処分勧告の問題点についてふれた部分を引用します。

「お断りしておくが、筆者は、A4用紙にしてわずか2枚に過ぎない今回の勧告を褒め称える気はない。

むしろ、この種の勧告のスタイルとして定着してしまった感があるが、内容が抽象的で、具体性を欠いている点に違和感を覚えている。この程度の立証振りで生殺与奪を左右する行政処分を科されたのでは、監査法人として納得できる道理がない。特に、一連の東芝問題にまったく関与してない職員だけでなく、社会的にももっと丁寧な説明が必要だ。

ちなみに、6年9ヵ月の間に2248億円の税引き前利益の水増しをした東芝の粉飾事件を受けて、公認会計士・監査審査会は今年9月14日から、新日本監査法人に対する関連の調査と定期検査をあわせて実施していた。

ところが、今回の勧告は、具体的な問題としては「(以前から)繰り返し指摘されてきた」にもかかわらず、「周知徹底を図っていない」ため、「改善できていない」といった具合に簡単に問題点を指摘しただけだ。

問題点が、東芝の問題なのか、それ以外の会社なのか、どの勘定科目に関わるもので、公認会計士のどういう判断がいけなかったのかといった点には一切言及していない。一般論として言えば、もっとアカウンタビリティ(説明責任)に配慮したものに、勧告を改めていくべきだろう。」

外部からは、金融庁本体とその傘下の審査会の役割分担がわかりにくいと感じます。審査会制度ができるより前にも、粉飾事件があれば、監査人の責任も追及され、故意の見逃しや監査の大きな不備が認められれば、関与していた会計士個人や監査法人に処分が行われていました。それだけでは、粉飾が表面化しない限り、監査の中身が問われないということになるので、審査会に検査をさせ、監査事務所の体制をチェックさせ、その結果により、処分勧告させるというルートを、追加したのでしょう。

審査会勧告を通さないルートは、今も残っており、東芝のケースは、粉飾がはっきりしている(会社も認めている)のですから、そちらの方でやってもよかったのだと思いますが、その場合は、会社や関与した役員も含めた東芝粉飾事件全体の中での、監査人(関与していた社員+監査法人)の処分ということになるので、課徴金だけで一件落着させた東芝への処分とのバランス上、それは難しかったのかもしれません。また、このルートだと、A4用紙2枚で済ませるわけにはいかず、具体的な立証が必要であり、処分を科すハードルが高く、時間もかかるのでしょう。(監査法人にはA4を2枚ということはなく、もっと詳しい検査結果の通知を渡しているとは思いますが)

そこで、「著しく不当」という結論を出すことを前提に、審査会に検査をやらせて(建前上は監査法人全体の業務管理体制が対象)、処分を行うフリーハンドを得たということなのでしょう。これは、監査法人にとっても、いきなり厳しい処分を受けるよりはましであり、業務改善命令ですむかもしれないというメリットはありますが、その後、金融庁やマスコミの矛先が東芝よりも監査法人に向けられるようになり、想定外の事態になっているようです。

外部からは、結局東芝の監査の何が悪かったのか(そもそも不備があったのかどうか)が不透明なままになっています。これでは、大騒ぎしても、監査の品質向上には結びつきません。

A4が2枚の処分勧告についてはこちら。

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