金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」(第1回) 議事録
10月5日に開催された金融審議会「ディスクロージャーワーキング・グループ」の議事録が公開されました。
(会議資料等はこちらから→当サイトの関連記事)
この回は、四半期開示見直しについて議論しています。
以下、各委員の発言より引用。(適時開示やエンフォースメントに関してはここではあまり引用していません。)
「3点目の四半期決算短信の内容についてです。四半期報告書がなくなるということですので、基本的には、この事務局説明資料の22ページに記載の表でいいますと、四半期報告書の重複で見直されたということがあると思いますので、見直し前の水準に戻すべきではないかと思っております。特に、サマリー情報に加えて、連結財務諸表、これはキャッシュ・フロー計算書も含みますが、それと主な注記というのは非常に重要と考えております。
また、注記の中でも、ちょうどこの事務局説明資料の25ページで言いますと、四半期貸借対照表関係、四半期損益計算書関係、あるいはセグメント情報、四半期キャッシュ・フロー計算書関係などの注記というのは、本表を理解する上では不可欠な開示と考えております。ただ、あとの四半期報告書にあります四半期決算短信にない情報、例えば事業の内容、事業等のリスク、経営上の重要な契約等、研究開発活動の状況、提出会社の状況といった開示については、重要な変更があった場合、適時開示あるいは臨時報告書で対応するということでいいのではないかと考えております。こういった考えの背景というのは、冒頭で申し上げましたように、四半期開示というのは中長期的な計画等の進捗の状況を定量的に確認するために必要という考えに基づくものです。」(井口委員)
「4点目の四半期レビューです。令和3年度ディスクロージャーワーキング・グループ第6回の事務局説明資料にもありましたように、第1・第3四半期にも、会計上の理由によって、年度末と同程度の数の企業が決算延期しているということは重要な確認事項と考えております。これはレビューの有効性というのを示しておりまして、正確性確保の観点でレビューは有効で欠かせないと思っています。また、これは投資家だけではなく、不正を早期発見できるという意味で企業にとっての有用性も示しているのではないかと思っています。」(同上)
(虚偽記載について)「半期報告書で、中間時点でしっかりエンフォースメントとするという考え方もあるのではないか」(同上)
「半期報告書の監査レベルに関してです。事務局説明資料の42ページの主要各国の状況、それと、発言しましたように、これまで日本でも四半期レビューが一定の効果を発揮したということを考えますと、海外同様、監査又はレビューというようなことも考えられるのではないかと思います。」(同上)
「四半期決算短信の開示内容ですが、四半期報告書では事業等のリスクであったり経営上の重要な契約等、研究開発活動の状況について重要な変更があった場合について開示を求めているということでありまして、四半期決算短信でもこれらの項目の開示を義務化するのではなくて、企業が重要と判断する場合に自主的な開示を適時行うことができるというような形を促せばいいのではないか、このように考えます。
一方で、投資家の立場から、今まで開示されていた項目として、経営戦略の進捗状況を把握する上で、セグメント情報であったり、四半期キャッシュ・フロー計算書であったり、減価償却費、のれんの償却額などが引き続き開示されるということは望ましいと考えますが、半期報告書でそれらが義務化されているということ、四半期決算短信で企業の自主性に任せるということも一つの案かもしれないとも思います。」(近江委員)
「四半期レビューにつきましては、国際的な整合性が取れているという観点からも継続が望ましいと考えます。」(同上)
「第1に、四半期決算報告の義務付けの有無です。第1・第3四半期報告書を四半期決算短信に一本化することによって廃止するということは、第1・第3四半期報告書を四半期決算短信で代用するという意味だったはずです。今回議論いただきたい事項の中に、四半期決算短信の義務付けをやめるかという論点が出されていること自体、私には理解できないところです。四半期決算短信の義務付けを廃止するならば、四半期報告書を復活させるべきであり、四半期報告書を廃止した以上、四半期決算短信を一律に義務付けるのは当然のことではないかと思います。」(黒沼委員)
「第3に、四半期決算短信の開示内容です。四半期決算短信が第1・第3四半期報告書に変わるという発想からいいますと、比較可能性を確保するために、ある程度の様式の統一が必要ではないかと思います。四半期決算短信は定期的に開示されるものなので、他の適時開示とは異なります。だから、適時開示で補うことのできない部分があるのではないかということです。開示内容としては、四半期財務諸表は必要だと思います。それから、経営成績に関する定性的な記載も、これは定期的に開示される財務情報を理解するために必要な情報ですので、これも復活させるべきではないかと思います。こういった四半期決算短信の開示内容を充実させた結果、開示時期が少し遅れても、従来の四半期報告書の45日以内の範囲であれば許容範囲ではないかと考えます。」(同上)
「四半期決算短信の信頼性を確保するために、四半期決算短信の情報に対するレビューやエンフォースメントが必要になる」(同上)
「後退せずに効率化する観点から、四半期決算短信を公表した後に、四半期報告書の代わりに、四半期決算短信に無い内容を補足する形で臨時報告書を開示すればいいと考えます。つまり、四半期決算後45日以内に臨時報告書を提出して、内容としては、四半期決算短信のレビュー報告書、キャッシュ・フロー計算書、注記などが含まれることを期待しています。」(三瓶委員)
(第2四半期または半期について)「具体的には、第2四半期分の臨時報告書の提出期限を決算後45日以内にして、中間監査の代わりに四半期レビュー、財務情報は連結ベース、そして四半期財務諸表に関する会計基準の適用、四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する記載事項等を適用することになります。」(同上)
「四半期レビューの後退というのは考えられない」(同上)
「四半期決算短信の作成・提出は、現状と同様に上場企業に対して一律に義務付けるべき」(小倉委員)(会計士協会)
「四半期レビューは義務付けるべきと考えます。四半期業績の虚偽記載について法的責任が問えないとの指摘があって、金融商品取引法に基づく四半期報告制度が導入されたという経緯を踏まえますと、四半期業績に関する財務情報の公表については、虚偽記載に対する刑事罰、課徴金などの罰則規定を維持すべきと考えます。」(同上)
「仮に四半期レビューを行うのであれば、適正性の結論が表明できるレベルの財務諸表の表示と開示が必要となる」(同上)
「四半期レビューを求める場合は、四半期決算短信は現状どおり公表した上で、四半期財務諸表はレビュー後に公表することが考えられます。」(同上)
(半期報告書・中間監査のあり方)「四半期決算短信において四半期財務情報の開示を行うのであれば、金融商品取引法の制度開示が半期だとしても、現状の四半期報告書の開示水準と変更する必要はないと考えます。
半期報告書の保証については、我が国固有の制度となっている中間監査の適用範囲を従来以上に拡大することには反対します。中間監査の実施を要求する場合、現行以上の負担増が想定され、そのコストに見合うベネフィットが何かが明確でないと考えています。さらに、今般の改正に合わせて、非上場企業の半期報告書は不要としてはどうかと考えております。」(同上)
「「四半期決算短信の開示内容」についてです。現行の四半期報告書の記載事項のうち、四半期決算短信に含まれていないものについてですが、財務情報、特に事務局説明資料の27ページに記載のキャッシュ・フローに関する情報とセグメント情報の2つを四半期決算短信に含むことを強く要望します。日本企業は、米国企業等と比較して事業の多角化が進展している実態がありますので、セグメント情報は特段重要と考えています。
次に、「四半期決算短信に対する監査人によるレビューの有無」については、これまでも私はこの会議で発言してきておりますが、引き続き情報の信頼性、虚偽記載の早期発見、あるいは虚偽記載の動機自体を抑えるという観点から、第1及び第3四半期決算短信に対して監査人によるレビューが行われることが望ましいと考えます。ただ、仮にレビューを義務付けないという決定が行われた場合には、企業の判断でレビューを任意に受けることができるようにするという案に賛成します。」(中野委員)
「レビューを義務付けない場合に、シンガポールのように、会計不正が起こった場合や内部統制の不備が判明した場合に四半期レビューを義務付ける案にも賛成」(同上)
「新しい意味での半期報告書の位置付けなのですが、基本的には、現在の第2四半期報告書を半期報告書として位置付けていくのが、制度移行に伴う影響は最も小さく、合理的と考えます。そうしますと、その場合は、現行の四半期報告書の提出期限、記載内容を踏襲するということになります。
また、半期報告書の保証についてですが、事務局説明資料の40ページに説明されていますとおり、中間監査は日本独特の監査制度であるのに対して、四半期レビュー基準は国際的な監査基準との整合性が取れていますので、基本的には、四半期レビュー基準、さらには四半期会計基準を新しい意味での半期報告書に適用するのが合理的と考えます。
さらに、非上場企業の半期報告書の記載内容、会計基準及び保証の基準につきましても、上場企業のほうが半期報告制度となるのを機に、上場企業のほうに寄せていくことも検討に値するのではないかと考えております。」(同上)
「四半期決算短信の内容について、あまりいろいろ盛り込んでいく、それからレビューをした四半期財務諸表を一緒に出さなきゃいけないという形にすると、やはりそこは重くなってきてしまって、なかなか難しいところが生じる点もあるのではないか」(清原委員)
「四半期レビューに関しては、四半期財務諸表にはレビューが必要だけれども、四半期決算短信については特に必要ないのではないかと考えております。第2四半期に出される半期報告書の財務諸表については、四半期レビューという形でこれまでと同様のものを継続することが適切ではないかと考えるところであります。」(同上)
「四半期決算短信の義務付けについてどうするかというところに関しては、私は、もし見直しをする余地があるとすれば、プライム市場上場銘柄とそれ以外とで分けることは十分検討に値するのではないかと。」(同上)
「半期報告書、中間監査並びに四半期決算短信へのレビュー要求などは、開示の簡素化にはつながらないだけでなく、速報性を阻害する懸念さえあります。開示の効率化、簡素化の流れに逆行することがないように留意をお願いしたい」(柿原委員)
「今回の一本化の議論を第一歩として、より抜本的な制度の見直し、つまり完全な義務付けの廃止に向けた継続的な検討を続けてほしい」(同上)
(四半期決算短信の開示内容について)「開示内容を拡充することにより、タイムリーな開示と実務負担の軽減が阻害されることや、四半期報告書はこれまでもほとんど注目されず、追加的な情報価値が確認されていないということから、現行の四半期決算短信の開示内容を基本とすべき」(同上)
「レビューによって四半期決算短信の開示内容は大幅に増大し、企業の負担はかなり増えます。また、レビューの作業のために公表タイミングが遅くなり、タイムリーな情報開示を阻害することになりますので、レビューの要求はすべきでないと考えております。」(同上)
「第2四半期は、第1四半期と同様に四半期決算短信に一本化し、中間監査も不要とするべき」(同上)
「現状の中間監査というのが、これは八田先生の詳細な御研究が報告されていましたけれども、そこの点にもありますように、これは相当古い信頼性確保のプロセスがいまだに残っているということかなと思いますので、今回、上場企業においてもこの制度全体を見直すというところで、一旦この半期の部分については、現状の四半期のレビューと同様の形であってもよろしいのかと思います。」(上田委員)
「第1・第3四半期決算短信につきましては、レビューにつきましては任意とすべきではないかと思っています。少なくとも全ての企業に義務付けるという必要はないと思ってございます。」(佐々木委員)
「監査となれば非常に負担が大きく、また、中間監査そのものが日本独特というふうなこともあります。半期の保証の関連もやはりレビューが妥当であろうというふうに思います」(同上)
「最低限開示が必要な項目を四半期制度の中で義務付けるべき」(永沢委員)
「例えばプライム市場においては義務化して、それ以外についてはシンガポールのように何か課題のあるところは四半期決算の義務化をするとか、少し企業の大きさによって分けるということも考えてもいいのかなとは個人的には思います。」(田代委員)
(証券アナリスト協会のアンケート結果など)「総合いたしますと、第1・第3四半期については、適時性と正確性のバランスを期待する一方で、エンフォースメントへの期待は必ずしも大きくないのかなというふうに思っております。一方で、第2四半期については、第1・第3四半期に比べ、高い水準の保証を期待すると同時に、相応のエンフォースメントも期待したいということだろうというふうに考えてございます。私個人としましては、金融商品取引法に基づく開示書類が要求される第2四半期、第4四半期について、虚偽記載についてしっかりエンフォースメントができれば十分であるというふうに考えておりますけれども、四半期決算短信については、レビューのあるなしに関わらず、取引所において、取引所の規則に基づくエンフォースメントのあり方について議論していただくことは重要であるというふうに思っております。
また、第2四半期について、適時性のバランスを考えますと、半期報告書、中間監査というよりは、半期報告書ないしは四半期短信+半期レビューを支持するアナリスト、投資家が相対的に多数、半数弱を占めました。」
「第1・第3四半期の開示につきましては、基本的には現行の決算短信のレベルを維持するということが基本ではないかというふうに考えておりまして、その意味ではこの四半期決算短信へのレビューというものは不要というふうに考えております。
また、第1・第3四半期に対するエンフォースメントを特別に設けるということにつきましても、基本的にはもう現状の東京証券取引所の規律で十分というふうに考えております。
一方、第2四半期の取扱いでございますけれども、こちらにつきましても現行の第2四半期報告書のレベルを維持するということで十分と考えておりまして、それに対するレビューということを付するということでよいというふうに考えております。
なお、先ほど何人かの委員の方から御指摘がありましたように、非上場会社の半期報告書、中間監査についても見直すということには賛成でございまして、併せて、非上場会社のみならず、特定事業会社、こちらの半期報告制度についてもぜひ見直しを御検討いただきたいと思っております。」(小畑オブザーバー)(経団連)
「第1、それから第3四半期のレビューについてでございます。これまで、会計監査人としては、年度監査に加えて3回の四半期レビューを行うことで企業の財務報告の信頼性を全体として確保してきたと考えております。会計士としては、市場参加者が期待する役割に真摯に対応することが最も重要であると考えております。これは、四半期報告書が廃止をされ、東京証券取引所の取引所規則による開示になったとしても、企業の情報開示の信頼性を確保する役割には変わらず応えるべきであると考えております。したがいまして、第1と第3四半期について、レビューが仮に義務付けとならなかったとしても、任意のレビューが実施できるような体制の維持はお願いしたいと考えております。」(藤本オブザーバー)(日本公認会計士協会)
「半期報告書における保証のあり方として、中間監査か、レビューかというお話がございましたが、中間監査には反対をいたします。中間監査は、国際的に見ても、我が国の制度としては説明するのが難しく、実務においても、企業のグローバル化に伴い、海外の主要な構成単位の監査人に対する指示や説明が難しいことも御理解をいただきたいと思います。
なお、四半期レビュー制度導入後は、監査人が中間監査を行う実績に乏しく、年間の監査スケジュールも大幅な見直しとなります。また、近年の中間監査の監査時間と四半期レビューの時間の実績を比較しますと、これまでお話が出ていますように、圧倒的に中間監査の工数は多いです。中間監査の保証水準からすれば、当然、期末監査の監査時間に近いものとなり、四半期レビューは、質問、それから分析的手続が主な手続であることを鑑みますと、中間監査と比べますと四半期レビューの工数は格段に少ないものとなっております。現行の開示保証制度は、これでも円滑に回っていると考えておりまして、信頼性も確保されてございますので、半期報告書については、中間監査ではなく、レビューであるべきだと考えております。」(同上)
「四半期開示の義務付けにつきましては、企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長しかねず、中長期的な視点でのステークホルダーとの対話を阻害していること、また、3か月ごとの決算開示は膨大な人的資源の投入を必要とし、企業に多大な事務負担をもたらしていることなどから、これまで義務付け廃止を要望してまいりました。四半期開示は日本では全ての上場企業約3,800社に求められておりますが、欧州主要国では第1・第3四半期の開示は要求されておらず、アナリストがカバーしているのは600から800社程度と思われ、少なくとも全ての上場企業に義務付ける必要はないかと思っております。今回の一本化の議論は望ましい方向への第一歩と考えておりますが、今後、より抜本的な制度の見直し、つまり完全な義務付け廃止に向けた検討を続けてほしいと思っております。」(松倉オブザーバー)(関西経済連合会)
半期(第2四半期)について、中間監査をやるべきという意見がほぼなかったのは、安心しました。(「監査またはレビュー」というひとは1人いましたが...)