「外資ファンドの創業家イジメ」という単純な構図ではない…フジテックのお家騒動に潜む中国リスク
前会長が、香港のファンドを相手に裁判を起こしたり、株主提案をしたりして、いろいろもめているフジテックについて、前会長や前会長側の弁護士に話を聞いた記事。
「5月9日、東京証券取引所内にある記者クラブ「兜倶楽部」で注目の記者会見が行われた。
会見したのは、エレベーターメーカー「フジテック」(本社:滋賀県彦根市)の前会長・内山高一氏とその代理人弁護士である河合弘之氏ら。同社の大株主である香港拠点の投資ファンド「オアシス・マネジメント」(以下オアシス)や同ファンドのセス・フィッシャー最高投資責任者らが、内山氏や家族にまつわる虚偽情報を流布し、プライバシーを著しく侵害するなど、38件の名誉毀損行為があったとして、15億4000万円の損害賠償と謝罪広告掲載などを求めて東京地裁に提訴した、と発表したのだ。
いくつかの新聞・通信社などが提訴の事実だけを短く報道したが、実はその詳細は、日本の証券市場のありかた、また近年活発化している「アクティビスト・ファンド」と呼ばれる投資ファンドの実態、さらには狙われる日本企業に関わる経済安全保障の問題までも内包しており、極めて重要なケースである。」
これまでの経緯を説明したうえで、オアシス側が批判していた前会長の公私混同疑惑について、まず、反論しています。それが本当なら、納得できる部分もありますが、それならなぜ、去年の株主総会で反論しなかったのかという疑問は残ります。
オアシス側の悪口もいっています。
「河合弁護士は「海外投資家の日本進出には問題も多い」と警鐘を鳴らす。
「近年、海外のアクティビスト・ファンド、いわゆる物言う株主と呼ばれる投資家が日本市場にどんどん乗り込んできています。上場企業を片っ端から調べ上げ、業績が伸びて内部留保も厚く、工場などの資産もある優良企業に狙いを定め、株を買い占める」
「そして経営陣のあることないこと、プライベートまで徹底的に調査し、些細なことを針小棒大に言いつのってガバナンスに問題があると因縁をつけ、仲間のファンドも集めて経営権を奪い取る。
そうして内部留保を取り崩して配当をあげさせ、株価を吊り上げ、短期間で売却して巨額の利益を得る。こうした手法から、内山氏が今回の株主総会で提案している社外取締役候補で、元財務官僚の小手川大助氏は記者会見で『アクティビストというより、“リーチ・ファンド”と呼ぶべきではないか』と指摘しています。
リーチとは英語で蛭ヒルのこと。つまり、優良企業に食らいついて好きなだけ血を吸いとってサッと逃げる。フジテックを事実上乗っ取ったオアシスは、まさにそのリーチ・ファンドだとわれわれは見ているのです」」
「内山氏側の調査によれば、2023年5月時点の大量保有報告書で確認できる日本企業のうち、オアシスが過去も含め株を保有している企業は24社。このうち6社が上場廃止に追い込まれ、オアシスはTOBや株式交換で保有株を売却し、2社は自主的に売却していずれも大幅な売却益を得ている。上場廃止の6社を除いた18社の平均保有期間は2.3年だ。」」
また、オアシスやその経営者は、前科があるのだそうです。
「そして、これも注意しておくべき点だとして、こう指摘する。
「さらに、今回の訴状でも指摘しておきましたが、オアシスおよび代表のセス・フィッシャー氏はこれまで日本や香港当局から、株価操縦などの違法行為で制裁金を課されたことも判明しているのです」
例えば2011年9月、日本航空株の公募増資の際、相場操縦によって株価を吊り上げたとして、最終的に香港の証券監視委員会からオアシスとセス・フィッシャー氏個人に戒告処分と750万香港ドルの制裁金を課されている。訴状ではこのほか、米国などでも他の取引で戒告処分や制裁金を課されたことがあるとも記載されている。
米国市場では近年、カラ売りをめぐって不透明な取引が相次いでいる。米司法省と証券取引等監視委員会が2021年末以降、複数の投資会社を捜査している、との報道もある。一連の疑惑についてオアシスに問い合わせたが、「訴状が届いていないためお答えできない」と回答があった。」
コスモ石油といい、このフジテックの前会長といい、物言う株主への逆襲の動きが出てきたということでしょうか。株主様は神様ではないので、根拠のある反論ならどんどんすればよいでしょう。それが「対話」というものでしょう。