裁判官インサイダー、出向後は担当のTOB関連企業が中心に…株取引の規定なく「不正は想定外」
金融庁職員(出向してきた裁判官)によるインサイダー取引事件の続報。
この職員は、以前から株取引をやっていましたが、金融庁出向後は、取引銘柄を一変させていたそうです。
「金融庁に出向中の裁判官によるインサイダー取引疑惑で、裁判官が出向前後で取引銘柄を一変させていたことがわかった。出向前は有名企業が中心だったが、出向後は、同庁が未公表情報を基に審査している企業に狙いを絞っていたという。」
「裁判官は30歳代男性で、今年4月に最高裁事務総局から同庁へ出向し、株式公開買い付け(TOB)を予定する企業の書類審査などを担当する企画市場局企業開示課に配属された。
関係者によると、裁判官は出向前までは有名企業の株を中心に日常的に取引を行っていたが、出向後は、同課が扱うTOB関連の企業に取引対象を変更。自身が担当する企業だけでなく、部署内で共有されるTOB予定企業の一覧を基に、未公表情報を得て不正を繰り返していた疑いもある。」
出向後取引量を増やし、利益も相当出ていたようです。
上場企業が絡む裁判もあるはずなのに、裁判官には、株取引に関する規制は全くないのだそうです。
「裁判には、上場企業に絡む特許侵害訴訟や合併・買収(M&A)を巡る争いなど司法判断が株価に影響を与えるケースがある。裁判官自身が判断を示す前にこれらの企業の株を取引し、利益を得ることも可能ではある。ただ、「裁判官が不正を疑われるような株取引を行う事態は全くの想定外」(最高裁関係者)で、株取引を制限するルールも議論されてこなかったという。あるベテラン裁判官は今回の疑惑を「驚きを通り越してあきれるしかない。事実だとすれば過去に例のない不祥事だ」と話す。」
学者のコメント。
「金融庁や東証、銀行や証券各社は不正が疑われる取引を禁止する内規を設けているが、機能しなかった可能性が高い。金融市場や組織統治に詳しい花崎正晴・埼玉学園大教授は、「個人の資質の問題だと 矮小化せず、各組織でルール違反の有無を調べて結果を公表し、罰則の強化や職員・社員教育の徹底といった対策を講じるべきだ」と話している。」
金融庁は、公に謝罪のうえ、不正発生の「根本原因」を明らかにし、再発防止策を公表すべきでしょう。それができなければ、運営が「著しく不当なものと認められる」として、業務停止にしないといけないでしょう。
金融庁も東証も…監視役なのにインサイダー疑惑 崩壊した「職業倫理」と「バレないことはありえない」裏事情(東京新聞)
「なぜインサイダー取引に手を染めるのか。「違法行為があっても監視委はすぐに反応するわけではない。最初は、細心の注意を払っていても、バレていないと勘違いして取引を繰り返したり、取引金額が大きくなったりしてずさんになっていくことがある」。こう説くのは、監視委で調査を担当した経験がある公認会計士の野村宜弘氏だ。「刑事事件として検察に告発するためには多くの時間とコストが必要。摘発されるのは氷山の一角」とも話す。
不正はTOB情報を悪用するケースが目立つ。監視委での勤務経験がある石井輝久弁護士は「業績修正や増資は確実に株価が上がるわけではないが、TOBは株価の上昇が高い確度で見込めるため、インサイダー取引が依然多い」と話す。
ただ、不正に対する当局の目は厳しい。監視委で不公正取引をチェックしていた白井真弁護士は「特にTOBでインサイダー取引をしてバレないということはあり得ない」と断じる。」
おなじみの八田教授もコメントしています。
「今回の事案は、いわば「制度を支え取り締まる側」の悪事。青山学院大の八田進二名誉教授(会計学)は「金融庁も東証も日本の金融市場の信用を支えている組織。制度上、ルールを作り、守らせる側の違法行為は想定していない事態だ。国を挙げて投資を呼びかけて市場の活性化を訴える中、水を差すことになる」とし、こう続ける。「厳しい規則や法律を作るだけでは防ぐことはできない。不正をする動機やプレッシャーをつくらない環境づくりが重要。そのための教育や訓練が求められている」」