2017年度の法人企業統計が発表されたという記事。利益剰余金が、全産業(金融・保険業を除く)で前年度比9.9%増の446兆4844億円となり、過去最高を更新したとのことです。
「内部留保が過去最高となるのは第2次安倍晋三政権が発足した12年度以降、6年連続。製造業は9.1%増の153兆3205億円、非製造業は10.4%増の293兆1639億円で、ともに1割近く拡大した。
経常利益は11.4%増の83兆5543億円。製造業では化学や電気機械、輸送用機械の業種で海外販売が拡大したことが寄与。非製造業では、卸売り・小売りや情報通信を中心に受取配当金が増加したことなどが増益要因となった。」
内部留保が賃上げにつながらず 米中貿易摩擦で企業慎重姿勢強まる(産経)
「だが、好調な企業業績が必ずしも賃上げにはつながってはいない。企業の稼ぎを人件費に回した割合を示す「労働分配率」は前年度の67.5%から下がり、66.2%にとどまっている。投資についても、人手不足を背景に省力化投資などに踏み切る企業は増えてはいるものの、経常利益の伸びに比べる投資の伸び率は小さく、企業が利益をため込む傾向は大きく変わっていない。」
労働分配率が下がっているのは問題だと思いますが、投資に関しては、損を見込んで投資をする会社はないのであって、通常は投資を行えば、将来、利益が発生し、利益剰余金も増えるはずです。投資をしないことが利益を貯め込むことにはならないでしょう。内部留保が多すぎるという論者も、損をしてまで投資して剰余金を減らせとはいっていないと思います。(設備投資時点では、「固定資産/現預金」という仕訳ですから、そもそも利益剰余金には影響しません。)
「人口減少で国内市場が縮小する中、中小企業の危機感は特に強く、資本金1千万円未満の企業の内部留保は21.0%増に拡大している。内部留保に対する課税導入に向けた議論もあるが、企業からは「法人税との二重課税になる」と反対の声も強い。企業が上げた利益を、経済の好循環につなげる施策を見いだせない状況が続いている。」
素人考えですが、無理に外国人の就労を増やすような政策をとらなければ、自然と、「賃上げ→消費拡大」となって、好循環が生まれるように思われます。
中小企業(資本金1千万円以下)の内部留保については、446兆円のうちの約16兆円しかなく、絶対水準が低いため増減率が大きく出るのでしょう。実際、2015年には2割以上下がっています。
(法人企業統計調査結果( 平成29年度 )より)
当期純利益が増加している影響なのでしょうが、配当比率が下がり気味のようです。
人件費分配率 下落続く 企業の内部留保 最高446兆円(東京)
「労働分配率は前年度から1・3%下がり一九七四年度以来、四十三年ぶりの低水準となった。第二次安倍政権では発足当初の二〇一二年度の72・3%をピークに、ほぼ右肩下がりを続けている。この間、生産活動を通じ企業が原材料を加工するなどして、新たに生み出した「付加価値」は約三十九兆三千七百億円増えたにもかかわらず、賃金の伸びは約九兆五千八百億円にとどまっているからだ。
安倍晋三首相は企業に賃上げを再三要請し、政権幹部も設備投資などで内部留保をはき出すよう促してきた。一部には改善した経済指標もあるが、法人企業統計の結果からは、十分な効果が上がっていると言い難い。」
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