日立キャピタル(東証1部上場)のプレスリリース。
中国子会社における不正常取引疑惑についての調査報告書(公表版は全約40ページ)を受領したというものです。
結論的には...
「特別調査委員会の調査で判明した 2019 年 3 月期連結財務諸表に与える影響額は、添付の「調査報告書(開示版)」に記載のとおりです。当社はこれを受けて、2019 年 3 月期に約 206 億円の引当金を計上することといたしました。」
調査のきっかけは...
「 2019 年 3 月 29 日、日立キャピタル株式会社(以下「HC」という。)の取締役会において、HC の子会社(議決権所有割合:100%)である日立商業保理(中国)有限公司(以下「HCF」という。)がサプライヤーによる架空取引に巻き込まれた疑いがあることが報告された。
当該報告を受け、HC は、2019 年 4 月 22 日に社内調査委員会(以下「社内調査委員会」という。)を設置し、HCF における債権の実在性等を確認したところ、甲案件、乙案件、丙案件及び丁案件の計 4 案件(以下、総称して「4 案件」という。)において、債権の実在性につき疑義が生じ、その原因として第三者による詐欺又は不正行為の嫌疑が浮上した(以下、社内調査委員会による調査(以下「当初調査」という。)において発覚した第三者による詐欺又は不正行為の嫌疑を総称して「本件詐欺等」という。)。さらに当初調査の過程で、4 案件のうち一部の案件は、HC の子会社(議決権所有割合:90%)である日立租賃(中国)有限公司(以下「HCL」という。)が HCF に紹介したものであることが確認された。 」
調査委員会は3名から構成されており、PwCから約50名(メンバーファーム含む)が参加したそうです。
報告書の前半では、ファクタリングやリースの取引内容や業務フローなどを説明しています。
肝心のあやしい4案件の債権実在性については、23ページ以下で説明されています。
例えば甲案件は...
「 甲案件は、2018 年に実行された、債権者を C 社、債務者を D 社とする売掛金債権に係る2 者間リコース付通知・承諾有売掛ファクタリング契約である。」
「HCF が別のルートからアポイントメントを得て D 社の別の人物と面談した結果、従前面談した人物(上記の D 社の責任者を自称する人物)は実は D 社の責任者ではなかった(本物の D 社の責任者とは別人であった)ことが判明し、また、HCF が収集した証憑類はいずれも偽造されたものである可能性があり、実際には取引実態がなかった可能性があることが明らかになった。 」
結局、会社はだまされて融資したということになるようですが、法律的には、ファクタリングの債権としては実在しているのだそうです。(だから、架空の債権の計上を取り消すのではなく、引当金計上で済ませることができるのでしょう。)
「これらの案件は債権者と HCF の間の 2 者間リコース付通知・承諾有売掛ファクタリング契約となっており、「本件ファクタリング契約において法律、行政法規等の強行的規定に違反せず、かつその他の無効事由がない場合、本件売掛債権が真実に存在するものではないとしても、本件ファクタリング契約が有効と認められる可能性が大きい」との法律意見書を社内調査委員会が入手していることも考え合わせると、原債権者に対するリコース債権は実在するとの当初調査の結果に特に不合理な点はみられなかった。 」
「本件詐欺等を防ぐことができなかった原因」として以下の事項を挙げています(第4章)。
・中国におけるファクタリング事業のリスクが十分に認識されていなかったこと
・オペレーショナルリスク管理態勢に強化の余地があったこと
・社内規定等が、悪意ある詐欺行為等を確実に排除できる内容にはなっていなかったこと
2019年3月期の決算短信を7月25日に公表しています。
↓
2019年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)(PDFファイル)
四半期の訂正はやらないのでしょうか。だまされて融資したのが第3四半期以前であれば、その時点で回収可能性があやしかったのですから、引当金を見直すべきでしょう。
最近の「不正経理」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2000年
人気記事