東芝の株主総会のページに臨時株主総会招集通知の添付書類として、第178期報告書が掲載されています。
以下、監査委員会報告書より一部抜粋。会計監査人の監査の方法・結果についての部分です。(こういうのは「限定付相当」意見とでもいうのでしょうか。)
「監査委員会は、会計監査人であるPwCあらた有限責任監査法人 (以下 「PwCあらた」 といいます。 ) の監査の方法及び結果につき、以下の点を除き相当であると認めます。
● PwCあらたは、 会社は2016年3月期連結決算につき、 S&W買収時及び買収後に工事コストの増加を示す情報が存在するにもかかわらず、全ての利用可能な情報に基づく合理的な仮定を使用して工事損失引当金を計上しなかった点において米国における一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠していないと指摘しております。 また、 同様の点を根拠として、2016年3月期単独決算につき、 WECの持株会社2社の株式評価減の計上について、 日本における一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠していないと指摘しております。 これらの点に関して、監査委員会は、以下のように考えます。
PwCあらたは、「取得のための調査を行った専門家が工事原価見積りを分析した際、 見積りに使用された生産性を達成できないことや建設工事スケジュールを遵守できないことによるコスト増加のリスクを識別したが、 これらは暫定的な見積りに反映されておらず、 さらに、 WECが契約により提出したS&W社の最終の貸借対照表の分析に使用した生産性に関する仮定は、暫定的な見積りに使用した仮定と整合していなかった」 と述べています。 しかし、そこにおいて、暫定的な見積りに反映されなかったとされ、暫定的な見積りと整合していなかったと指摘されている情報や仮定は、 いずれも、 S&W買収前の生産性等に関するものであり、 CB&Iが工事を行うことを前提としたものであります。 これらのCB&Iが工事を行うことを前提とした生産性の情報等については、 S&W買収後にはCB&I に替えて原子力発電所の建設工事に関する知見と経験を有する Fluor Enterprises, Inc. (以下「Fluor」といいます。)を工事に参画させ生産性を改善すること等の対策を検討していたこと、そして、当該検討は外部専門家の検討を踏まえたものであることからして、その前提が大きく異なることなどから、2016年3月31日現在における工事損失引当金の見積りの根拠とすることは相当でなく、 工事損失引当金が適切に計上されていないとする理由にはならないと考えられます。
また、 PwCあらたは、「工事原価の発生実績が当初の見積りを大幅に超過していたが、 この実績が将来の工事原価の見積りに反映されていなかった」と述べています。しかし、まず、 S&W買収前の生産性の実績に関する情報については、それ自体を、前提の大きく異なる2016年3月31 日現在における工事損失引当金の見積りの根拠とすることが相当でないことは上記のとおりです。 次に、 S&W買収後の生産性の実績に関する情報については、 FluorがCB&Iから新たに建設工事部分を引き継いでからしばらくの間は生産性が上昇に転じないことが当初から想定されており、工事の完成にはさらに数年間かかることも予定されていたことからすると、買収後数か月間の生産性に関する情報を2016年3月31 日現在における工事損失引当金の見積りの根拠とすることは相当ではなく、工事損失引当金が適切に計上されていないとする理由にはならないと考えられます。
なお、 S&Wの買収により、上記の通り生産性の改善が期待できることの他、顧客との契約金が約30億ドルの契約金額の増額が得られること、 WECがプロジェクト全体を管理することでシナジー効果が期待できること等も考慮されていたことを付言いたします。
上記と同様の根拠により、 WECの持株会社2社の株式評価減の計上を前事業年度に計上すべきとする理由もないと考えられます。」
会社の言い分どおりのことを書いているようですが、説得力に欠ける意見と思われます。達成できるかどうかまったくわからない生産性向上を、引当金見積りに織り込むなど、非常識といわざるを得ません。
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