企業会計基準委員会が、国際会計基準理事会との間で、2011年までに日本基準と国際基準の違いを埋め、共通化することで合意したことを取り上げた日経の社説。
「米国基準と国際基準が拮抗(きっこう)する新たな状況の下で、日本の会計基準について最終的な責任を負う政府(金融庁)は、国際基準との共通化を前提に戦略をどう描くかを問われている」というのが一応の結論になっています。しかし、新しい金融庁長官のインタビューなどを読んでも、国内の金融機関の監督の話ばかりで、企業会計の問題はほとんど視野に入っていないようですから、期待しない方がよいかもしれません。
企業会計基準委員会と国際会計基準理事会の共同発表のプレスリリースでは、ASBJの西川郁生委員長が、「この合意によって、今後も日本企業が日本基準によって作成された財務諸表を、補正措置なしで、EU及びIFRSを用いている他の資本市場において公表できるようになることを期待しております」と願望を述べているのに対し、IASB側は日本基準の承認に関して全くふれていません(権限がないから遠慮しているのかもしれませんが)。仮に2011年にコンバージェンスが達成されたとしても、国際会計基準とイコールになるわけではないので、日本基準が国際的に承認されるかどうかは、そのときの情勢次第でしょう。そもそもコンバージェンスが達成されたかどうかの判断も向こうが行うわけですから、達成したと認定されないおそれもあります。
海外で資金調達しようとする企業や海外に重要な子会社をもっているような企業は、コンバージェンスされるであろう(しかしコンバージェンスが達成したと認定されない可能性もある)日本基準を使い続けるか、あるいは、完全なIFRSへの移行を早期に行うかという選択を迫られることになる、というのが個人的な予想です。
いずれにしても、今後会計基準が大きく変わることは確実ですから、会計士業界でも、それについていけない「コンバージェンス難民」が発生するかもしれません。
五味前長官・佐藤新長官記者会見の概要(金融庁のサイトより)
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