経営破たんした林原の元社長へのインタビュー記事。財務は専務(元社長の弟)に任せきりで、役員たちの関心も低かったようです。
「---林原の社内では、会社の財務状況を共有する場はなかったのですか。
林原:林原では年末に、グループ全社を集めた経営方針会議を開催していました。グループ各社の役員幹部が集まり、2、3日かけて1年の業務報告と翌年の目標、戦略を発表する。実務全般を弟に任せていた私は、この会議に出席していませんでした。出席していた役員の話によると、この経営方針会議の前に林原本社の役員だけが集められ、経理担当役員から決算内容の説明を受けるようになったそうです。
「林原の売り上げは〇〇億円で、昨年度より〇億円増えました」
「トレハロース事業は〇億円の利益が出ました」
大体、このような感じだったらしい。報告といってもこの程度で、PL(損益計算書)やBS(貸借対照表)の資料を配るようなことはない。誰かが借入額を質問しても「あまり儲かっていないけれど、大丈夫ですよ。心配要りません」と詳しく答えなかったという。
私が出席する会議でいえば、役員昼食会が毎月ありました。会場は林原グループで保有していた岡山の多目的施設。この施設内には中国料理店やイタリア料理店が入っており、店を順番に変えながら本体とグループ会社の役員20人ほどが昼食を共にしました。だがこの会は経営のことを話すのではなく、あくまで情報交換が目的の親睦会。雑談がメーンで、グループ各社で共有したいトピックについて話す。「今度、天皇陛下が林原の研究所をご来訪されることになりました」といったもので、お金の話は一言も出たことはない。
つまり林原において、役員が集まるオフィシャルの場で財務のことが話題になる機会は、一般の会社では考えられないほど欠落していました。おそらく私や経理部門以外の役員は、借入金が100億円台なのか1000億円台なのか、それすら知らなかったのではないか。
役員、社員がメディアの取材に対応したり、講演したりしたときには「林原は安定した財務体質を基に、長期的な視野で研究に取り組んでいるのです」と、さも根拠があるように話していましたが、単なる刷り込みによるものだったのです。このように私をはじめ林原の役員には資金繰りに対する危機感が全くもって欠落していました。」
この本の宣伝記事のようです。
![]() | 林原家 同族経営への警鐘 林原健 日経BP社 2014-05-16 by G-Tools |