会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

非上場株、収益還元法で計算した株価の減価認めず 最高裁(日経より)

非上場株、収益還元法で計算した株価の減価認めず 最高裁

非上場会社において合併に反対した株主から株式を買い取る際の株価に関する最高裁の決定が出たという記事。「市場で株を売買できないことを理由に株価を低く見積もることが認められるかが争われ」ていましたが、「将来の収益などを基に計算する「収益還元法」を使う場合には認められないとする決定をした」そうです。

「これまでは市場流動性がないことを理由に株の減価を認める場合と認めない場合があり、実務が割れていた。今後は非上場会社のM&Aで収益還元法が使われる際は、算定方法が統一されそうだ。決定は26日付。

同小法廷は決定理由で「収益還元法は将来期待される純利益などを基に現在の株価を算定する手法で、市場での取引価格との比較という要素はこの手法の中に含まれていない」と指摘。算定手法にない要素を反映させて株価をさらに減価するのは不当だとする初めての判断を出した。」

平成26(許)39  株式買取価格決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件(最高裁)

判決文より

非流動性ディスカウントは,非上場会社の株式には市場性がなく,上場株式に比べて流動性が低いことを理由として減価をするものであるところ,収益還元法は,当該会社において将来期待される純利益を一定の資本還元率で還元することにより株式の現在の価格を算定するものであって,同評価手法には,類似会社比準法等とは異なり,市場における取引価格との比較という要素は含まれていない。吸収合併等に反対する株主に公正な価格での株式買取請求権が付与された趣旨が,吸収合併等という会社組織の基礎に本質的変更をもたらす行為を株主総会の多数決により可能とする反面,それに反対する株主に会社からの退出の機会を与えるとともに,退出を選択した株主には企業価値を適切に分配するものであることをも念頭に置くと,収益還元法によって算定された株式の価格について,同評価手法に要素として含まれていない市場における取引価格との比較により更に減価を行うことは,相当でないというべきである。」

最近会計士協会の東京会から送ってきた資料集では、「収益還元法はDCF法と同様に、経営権を持つ株主に対する方法であることから、少数株主ディスカウントを行う必要があります」と書かれています(東京C.P.A.公認会計士業務資料集別冊29号 平成27年3月20日発行 72ページ)。

「非流動性ディスカウント」とは少し違うのかもしれませんが、収益や還元率以外の要素を最後に織り込むという点では同じです。

一方、今回の最高裁判決は、合併に反対し買い取りを請求した株主に「企業価値を適切に分配する」という趣旨であり、合併後も保有を継続する株主と差別するような扱いは認められないということなのでしょう。収益還元法による株価が適正だとすると、退出しなかった株主はその価値をフルに享受できるのに、退出する株主はそこからさらにディスカウントされた価値しか受け取れないというのは、たしかに不公平です。(それが少数株主ディスカウントであればなおさら)

一般的な株式取得の場合には、企業価値をその企業の株主間で適切に分配するというのとは違うので、そのままはあてはまらないのかもしれません。 専門家に詳しく聞きたいところです。
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