会計ニュース・コレクター(小石川経理研究所)

膨らんだ「のれん代」1兆円超 東芝がひた隠す「原発事業の不都合な真実」(現代ビジネスより)

膨らんだ「のれん代」1兆円超
東芝がひた隠す「原発事業の不都合な真実」


東芝粉飾事件を取り上げた解説記事。報道されている第三者委員会の調査など以外にも、問題があるといっています。

「注目の決算の修正額は、過去5年間のコストの先送り(約1600億円)と事業そのものの収益力低下を反映した工場の減損処理(約700億円)の合計額、つまり2300億円前後の巨額に達する模様だ。だが、これまでの報道をみている限り、より本質的で構造的な2つの問題の解明は進まず、封印される懸念がありそうだ。」

第三者委員会は、基本的には会社から調査を依頼された事項に限って調べています。スケジュールの関係もあるので、それはやむを得ないと思われますが、調査項目以外に、精査が必要な事項がないとも限りません。

具体的には、のれんのことを言っています。

「ほとんど報じられていないが、今回のケースで怠ってはならないのは、同社の重要部門だった原子力事業の精査だろう。

中でも、鳴り物入りで2006年10月に4800億円あまりを投じて77%の株式を取得した米原発プラントメーカーのウェスチングハウス(WH)の子会社化は重要だ。当時の西田厚聡社長は、わざわざ説明会を開き、原発の建設や保全サービスなどで2015年には最大7000億円のビジネスが見込めると胸を張っていた。

この買収に伴って、東芝のバランスシート上ののれん代は急膨張した。2006年度(2007年3月末)の計上額は7467億円と1年前の6.5倍に急増した。

問題は、こののれん代の処理にある。」

「WH買収前のことだが、2005年度第3四半期決算発表の席で、担当副社長がWHののれん代について「弊社は米国会計基準を採用しているので、毎年、(下がっていないか)公正価値の再評価を実施します」としながら、有望な事業なので「直近2、3年の間に減損をすることは想定しておりません」と言明した。」

「さらに、福島第一原発事故から約1カ月が経った2011年4月14日の佐々木則夫社長(当時)の言葉は不可解だ。日本経済新聞やロイター通信のインタビューで語ったもので、「会計監査人に見てもらって今の経営の中から減損のリスクはほとんどないと評価されている。実際の収益の源は(既存の)運転プラントと燃料から来ているので、新規プラントが少し遅延しても減損に至らないと思う」と述べたのだ。

福島第一原発事故で東京電力の企業としての存続が危ぶまれ、米国に続いて日本でも原発の新設が難しくなろうとしていた時期に、減損を不要と言い張る佐々木社長の態度は、リスクの過小見積りとみなされてもやむを得ない。ちなみに、東芝が2010年12月末に計上していたのれん代は約5489億円。このうち半分強がWH分だったとされる。

2012年10月、佐々木社長はさらに約1250億円を投じて20%分のWH株を追加取得した。米エンジニアリング大手のショー・グループから契約に基づく買い取りを迫られて、拒否できなかったのだ。この価格が妥当だったかどうかも精査が必要だ。

WH買収以来、すっかり安易なM&Aが定着した東芝の2014年末のバランスシートには、実に1兆1538億円ののれん代が計上された。」

米国会計基準に準拠した減損テストが毎期毎期、適切に行われていることを、監査人が確かめているはずですが、工事契約など他の見積項目については、会社に騙されっぱなしだっただけに、心配するのは当然といえます。

もうひとつの大きな問題は監査法人だそうです。

「会計士は、会計監査のプロである。原子力事業に加えて、もう一つの大黒柱の半導体事業が死に体になっていた東芝の経営を監査して、疑わしい会計処理がいくつも存在したことを見抜けないようではプロの資格がない。」

マニュアル監査も批判しています(的外れと思いますが)。

「マニュアル監査というのは、それまでの監査法人の会計士たちが経営の深淵にまで踏み込み、経営コンサルティングを兼業することによって、粉飾に手を貸す結果になった反省から生まれた。

監査項目を記したマニュアルに従って会社をヒアリングし、表面的な回答を得ただけであってもマニュアルの要件を満たせば善しとするものだ。「実態を追及しない監査になってしまった」とベテラン会計士たちの間では批判が絶えない。」

マニュアルが悪いのではなく、マニュアルのもとになっている監査基準をよく理解していないところに「根本原因」があるのかも。

東芝 原発事業にも難題 WH株 売れぬまま(東京新聞)

「不適切会計問題に揺れる東芝が、今後心配される資金繰りに備え、子会社の米原発設備大手、ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)株式の一部売却を急いでいる。だが原発事業の新たなパートナー探しは二〇〇六年にWHを買収した当時から続けており、東日本大震災以降はさらに難航。専門家から「今どき買い手は見つかるのか」との指摘も出ている。」

前にもふれましたが、売却先が見つかった場合には、その価格次第で、のれん減損の引き金を引くことになるかもしれません。それ以前であっても、売却の準備段階で公正価値を厳しく算定しなおすでしょうから、その時点で要減損となるかもしれません。

9千億円の“巨額損失”が新たに発生? 東芝を食い潰した日米の原発利権(週刊朝日)
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