2020年度に全国の国税局査察部が強制調査を実施して告発した脱税事件の件数・金額が激減したことを取り上げた記事。
これは、新型コロナウイルスの影響と考えられていますが、コロナ以前から「マルサ縮小論」があるのだそうです。
「近年の脱税手口の複雑・巧妙化などによって、告発件数も脱税総額も減少傾向が止まらない。
筆者がマルサに在籍していた2006年度までは、全国で毎年200件の着手・処理が至上命令だったのだが、そのどちらも激減している。件数が減ると必ず台頭してくるのが「マルサ縮小論」だ。
マルサは刑事罰の訴追を目的としているために手間がかかる。1件当たりの追徴税額や調査官1人当たりの調査件数をもって課税部と比較するべきものではないのだが、この数値を持ち出して後ろ向きの組織改編を唱えるのだ。」
「バブル期の年間の告発件数は200件前後、脱税総額の最高は627億円にも達した。つまり、20年度の実績は当時と比べ、告発件数で約半分、脱税総額は10分の1程度のため、マルサ解体論がまことしやかに囁かれるのも無理からぬことだ。」
「マルサの目的は一罰百戒で、申告納税制度に背を向ける悪質な脱税者に刑事罰をあたえるために存在している。
一般の税務調査との単純な比較は許されないのだが、全国の査察官1500人で69憶円の脱税総額なら、査察官一人あたりは460万円にしかならない。この程度の追徴税額なら税務署の調査官でも簡単にクリアできる額で、新米調査官ですら「最低でも自分の給料の3倍は稼いで来い」と言われる。」
マルサ凋落の原因を3つ挙げています。
「一つは脱税のアイテムである仮名預金が激減したことだ。」
「二つ目はマルサからブラックさが消えたことだろう。今どき安月給で『24時間、戦えますか?』と聞かれても困るが、マルサがサラリーマン化している。」
「三つめはビットコイン(暗号資産)などの解明困難な脱税アイテムが出現したことだろう。」
「昨今の経済取引の広域化、国際化、ICT化によって脱税手段が複雑・巧妙化していることが背景にあって、そこにコロナが追い打ちをかけた。」
(ひとつめの仮名預金激減は、脱税手段が減ったということだから、そのこと自体はよいことでしょう。)
結論としては...
「調査が困難になればなるほどマルサ以外に突破できる部隊はない。特に海外脱税事案の証拠収集には、クラウドに残るデータを収集する権限をもつマルサの力が必要不可欠だ。
税務調査が自由にできない今こそ、暗号資産などの困難事案に積極的に着手し、「国税最後の砦の」矜持を見せてほしい。」
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