ドイツ証券が機関投資家に販売した複数の証券化商品の時価をずさんに算出していた疑いがあるという記事。
金融機関の算出した時価を使って会計処理や開示を行うケースが多いので、いい加減な時価を算出して提示していたということになると、その時価を利用している企業の財務諸表がいい加減だということになり、大きな問題といえます。ドイツ証券の算出した時価を使って金融商品の評価を行った企業は、別の金融機関を利用するなどして、直ちに評価額を確かめる必要があります。
ただ、記事の中で不適切な事例として挙げられている「同じ証券化商品の時価(同一時点)で複数の価格を示し、投資家にどの時価を使うか判断させていた」というのは、100%いけないことともいえません。上場株式のように取引所の相場がある有価証券や、店頭で取り引きされている商品でも活発に取引が行われている商品であれば、明確に時価を把握することは可能ですが、そうでなければ、何らかの評価モデルを使って算定するのでしょう。モデルの考え方が異なれば複数の評価額が算定されることはあり得るかもしれません。もちろん、明らかに不合理な方法で算出した数値を時価だといって顧客に示すことは間違っていますが、合理的といえる範囲で複数の選択肢を示して、顧客の責任で選ばせるのはひとつ方法のようにも思われます(証券業界のルールでダメだといっているのならそれは尊重すべきですが・・・)。
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会計士協会の「証券化商品の評価等に対する監査に当たって」という通知では、監査人の立場から「企業がブローカー等から入手した時価がどのような前提によるものかを確認する必要がある」、「1 社のブローカーだけでなく、必要に応じ、複数のブローカーから時価を入手するなどして、企業がより合理的な時価の入手に努めていることを確認すべき場合もある」とされ、そもそも証券会社の出してくる時価が絶対的に正しいとは考えていません。
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