◆入賞発表/2012年1月29日◆
(1月22日~28日投句)
【最優秀/2句】
★葦原の枯れ尽くしても水の上/藤田洋子
「枯れ尽くしても水の上」は、意表をついて、新しい発見。蓮や菖蒲などは、枯れると茎や葉が折れて水に浸かってしまう。葦原の葦は、枯れながらもまっすぐに立ち、水には影を落とすのみ。なるほど、枯れ尽くしても水の上ある。(高橋正子)
★野に覚めし淡きみどりや蕗の董/佃 康水
「野に覚めし」によって、淡い蕗の董のみどりが目に強く焼きつく。初めて見つけた蕗の董であろう。驚きと嬉しさを隠せない。(高橋正子)
【高橋正子特選/5句】
★足跡にリズムのありて雪の山/安藤智久
雪山にリズミカルな動物の足跡。栗鼠でしょうか兎でしょうか、あるいは鹿かも。行ってみたいですね。(河野啓一)
★雪明かり車窓に過ぐる蒼き川/小川和子
車窓から見た川は雪明かりのせいで蒼い川だったと言われる句と思いますが 誰だって見たくなるような句です。(迫田和代)
★思い切り鴨羽のばし水しぶき/祝恵子
「思い切り」と詠む作者は、生きものの自由を見たのであり、それを見た作者の生きいきとして自由な心が嬉しい。(高橋信之)
★凍星の降る野を抜ける列車の灯/津本けい
★寒禽の食いこぼす実の赤点々/古田敬二
【多田有花特選/5句】
★野に覚めし淡きみどりや蕗の董/佃 康水
早くも蕗の薹が姿を見せています。それを見つけられた喜び、春の喜びであり、生命の喜びでもあります。(多田有花)
★一切の音を閉ざして雪霏々と/今村征一
空は暗く雪がしきりに降っている。一切のもの音を包み込んで、水墨画のような静かな世界です。(河野啓一)
★うねりては鈍色深む冬の海/古賀一弘
冬の、それも北国、雪国の海の色ではないかと感じました。「鈍色」確かにあの色はそうです。お見事です。(多田有花)
★庭石に軽き音たて霰あそぶ/小西 宏
雪の降らない地方の明るい冬の景色です。霰の音を「あそぶ」と表現され、まるで霰が幼い子どものように生き生きと表現されています。(多田有花)
★新雪に轍くっきり天晴るる/小川和子
珍しく雪の降った朝、すでに雪は上がり真っ青な空が戻っています。新雪にはやくもタイヤの跡があります。新鮮な光に満ちた光景です。(多田有花)
【高橋秀之特選/5句】
★寒林の枝の先までみな空へ/桑本栄太郎
寒林の木々は冬木で葉も少なく遠くが見通せるのでしょう。そんな木々の枝先も春が近づき、天を指し、空に向かっているように感じられるようになってきました。(高橋秀之)
★それぞれの影を大地に冬木立/多田有花
葉を落とした冬木立の影がしっかり大地にあるという冬らしいいい句と思います。(迫田和代)
★野に覚めし淡きみどりや蕗の董/佃 康水
今まで行ったことのない野原で淡いみどりの蕗の薹を春にさきがけ見つけられた喜び 夢中であたり一面お捜しになったなられたお姿が目に浮かびます。野に覚めし がいいですね。みどりのひらがなも素敵と思います。(迫田和代)
★葦原の枯れ尽くしても水の上/藤田洋子
正直に申しますとまだ葦原は見てないのですが枯れ尽くしたとおっしゃってるわりには 侘びしさを感じられないのです。真っ直ぐ枯れていくのでしょうのでしょうね。風情がありますね。(迫田和代)
★空晴れてミモザうす黄に蕾みけり/津本けい
ミモザがうす黄色の蕾を付けて開花の時を待っている。ミモザの黄と晴れ渡った青い空、春が待ちどうしく美しいミモザが見られるのももう直ぐですね。(佃 康水)
【小西 宏特選/5句】
★それぞれの影を大地に冬木立/多田有花
冬の日の大地に裸木が影を落す。冬木立の影はひとつひとつを見ても、またその連なりを見ても飽きることがありません。力があり、優しさがあり、柔らかさがある。影を受ける土からも温かみが伝わってきます。冬の景を詠って広がりを感じさせる、心休まる句です。(小西 宏)
★寒林の枝の先までみな空へ/桑本栄太郎
寂しげな寒林の枝の先が空に向いているといういい句です。冬も楽しいです。(迫田和代)
★凍星の降る野を抜ける列車の灯/津本けい
冬の星は鋭く明るい。その下に、冷たく暗い冬の野を貫いてゆく列車の窓の灯が共にあって、夜の広がりを躍動させている。夜の冷たさが明るい。(小西 宏)
★雪明かり車窓に過ぐる蒼き川/小川和子
一面の雪野をゆくと車窓に一筋の川が見える。川は雪明りに照らされ、静かに蒼く輝いて見える。夜汽車の薄明かり、明の中の暗、暗の中の輝きが捉えられていて、しんみりと惹かれます。(小西 宏)
★陽を浴びて冬芽冬芽の大きな木/迫田和代
見上げれば冬日が満ちており、枝枝にしっかりと冬芽が育っている。「冬芽冬芽」と繰り返されたところに空いっぱいの待春が感じられ、心が膨らむ。(小西 宏)
【黒谷光子特選/5句】
★野に覚めし淡きみどりや蕗の薹/佃 康水
今年はじめての蕗の薹を見つけたうれしさ、春を待つこころの弾みを感じます。 (黒谷光子)
★それぞれの影を大地に枯木立/多田有花
冬の日の大地に裸木が影を落す。冬木立の影はひとつひとつを見ても、またその連なりを見ても飽きることがありません。力があり、優しさがあり、柔らかさがある。影を受ける土からも温かみが伝わってきます。冬の景を詠って広がりを感じさせる、心休まる句です。(小西 宏)
★ほんのりと雪おく屋根に朝日さす/小西 宏
うれしい雪である。うれしい朝日である。読み手にもうれしい風景である。(高橋信之)
★新雪に轍くっきり天晴るる/小川和子
「新雪」に「天晴るる」と詠み、そのひろびろとした世界の焦点に「轍くっきり」と置く。焦点を絞って、限りのない天地を詠んだ。(高橋信之)
★凍星の降る野を抜ける列車の灯/津本けい
【祝 恵子特選/5句】
★野に覚めし淡きみどりや蕗の董/佃 康水
蕗のとうを見つけた喜びが感じられます。「野に覚めし」素敵な表現ですね。 (祝恵子)
★庭石に軽き音たて霰あそぶ/小西 宏
雪の降らない地方の明るい冬の景色です。霰の音を「あそぶ」と表現され、まるで霰が幼い子どものように生き生きと表現されています。(多田有花)
★山々も湖も冬晴れ展望台/黒谷光子
展望台からの冬の晴天に、見渡す山々も湖も鮮やかに美しいかぎりです。眩いばかりの遠望に心も明るく広がります。(藤田洋子)
★日を乗せて白鳥湖へ急ぎけり/小口泰與
冬の日差しを受けて湖に急ぐように飛んでいく白鳥は、自然の美しさを物語りってくれる景色です。(高橋秀之)
★花苗に音なき小雪被る朝/小川和子
まだまだ小さな花の苗は、わずかの小雪でも被ると雪の白さが目に付きます。小さな自然をうまく 見つめられました。(高橋秀之)
【藤田洋子特選/5句】
★一切の音を閉ざして雪霏々と/今村征一
絶え間なく降りしきる雪の様子がありありと目に浮かびます。全ての音を断ち、いっせいに降る雪の迫力に、ひときわ厳しい冬の寒気を感じます。(藤田洋子)
★山々も湖も冬晴れ展望台/黒谷光子
展望台からの冬の晴天に、見渡す山々も湖も鮮やかに美しいかぎりです。眩いばかりの遠望に心も明るく広がります。(藤田洋子)
★それぞれの影を大地に冬木立/多田有花
冬の日の大地に裸木が影を落す。冬木立の影はひとつひとつを見ても、またその連なりを見ても飽きることがありません。力があり、優しさがあり、柔らかさがある。影を受ける土からも温かみが伝わってきます。冬の景を詠って広がりを感じさせる、心休まる句です。(小西 宏)
★新雪に轍くっきり天晴るる/小川和子
「新雪」に「天晴るる」と詠み、そのひろびろとした世界の焦点に「轍くっきり」と置く。焦点を絞って、限りのない天地を詠んだ。(高橋信之)
★野に覚めし淡きみどりや蕗の菫/佃 康水
【迫田和代特選/5句】
★雪明かり車窓に過ぐる蒼き川/小川和子
雪明かりに見える蒼い川って是非見たいと思わせる素敵な句ですね。(迫田和代)
★それぞれの影を大地に冬木立/多田有花
葉を落とした冬木立の影がしっかり大地にあるという冬らしいいい句と思います。(迫田和代)
★寒林の枝の先までみな空へ/桑本栄太郎
枯れ枝が細かく分かれ空に向かって立っています。良く見る風景ですが、軽く素直な詠みに惹かれます。(河野啓一)
★野に覚めし淡きみどりや蕗の薹/佃康水
★葦原の枯れ尽くしても水の上/藤田洋子
【入選/7句】
★冬桜咲きいて空の美しき/高橋信之
厳しい寒気の中にあって、可憐な冬桜と空の美しい出会いに、格別の感動を覚えます。冬桜の咲く、澄んだ大気と空の広がりに心洗われます。(藤田洋子)
★枝先の力強さや冬木立/高橋秀之
冬木立の枝はその自身の力で空に突き出ている。まさに「枝先の力強さ」。春へ向けて、命が張り詰めている。(高橋正子)
厳しい寒さの中に立ち尽くす冬木立。しかし御句からは差し交す小枝や梢にはこれから芽吹く前の力強い勢いと春の兆しが感じ取れます。(佃 康水)
★初詣太鼓の音に襟正す/足立 弘
初詣。神社の太鼓があたりを鎮めるように響き鳴る。思わず襟を正す。正直さが好ましい。(高橋正子)
★土交じり少し汚れた雪達磨/迫田和代
積雪が余り多く無い雪で作った雪達磨なので、少し土も交じってしまったのでしょう。でも雪を見ると雪達磨や雪合戦等の遠い昔を思い出しわくわくとした気持が湧いて参ります。少し汚れた雪達磨もその土地に相応しい冬の景色と侘しさと夢の有る御句と思います。(佃 康水)
★寒椿膨らみ嬉しわが門に/河野啓一
節分も近くなり、春が待たれる。わが門に寒椿の蕾が膨らむと嬉しさも増してくる。(高橋正子)
★鉢の梅莟めば独り座り込む/川名ますみ
鉢の梅が蕾をもった。独り座り込んでそれぞれに違う蕾を見て咲くときを楽しみにしている。待春の心持。(高橋正子)
★冬星座しばし降られる時楽し/藤田裕子
家事や仕事を終えたあと星空を仰ぐと、冬の星座が散らばり、小さな星々が降ってくる。星に降られているときの世事を忘れたひとときの楽しさがいい。(高橋正子)
▼コメントのない句にコメントをお願いします。