青樹句会

主宰:高橋信之(花冠名誉主宰)

ご挨拶

2012-03-25 15:20:38 | 日記

第9回きがるに句会にご参加ありがとうございました。入賞の皆さまおめでとうございます。ここ横浜日吉本町の桜は蕾がようやく膨らんできました。寒いといいながらも、桜は例年通りに開く気配です。皆さまのところは、いかがでしょうか。一週間もすれば、花だよりも聞かれることでしょう。楽しみにしています。今回も特別選者の皆さま、管理運営の信之先生にはたいへんお世話になり、ありがとうございました。また、コメントをお書きくださった方、ありがとうございます。これで、第9回きがるに句会をおわります。(高橋正子)

第9回句会入賞発表

2012-03-22 22:49:12 | 日記
◆入賞発表/2012年3月25日◆

【最優秀】
★浅間山真向いにして花を待つ/小口泰與
堂々とした浅間山に真向かい、いまだ蕾の桜が咲き満ちる姿を想う。浅間山を咲く桜をまっすぐにわが心に受け止める姿勢がよい。(高橋正子)

★卒業の歩を運びゆく足袋白き/川名ますみ
「歩を運びゆく」から、袴姿の女子学生が想像できる。白い足袋が、潔くもあり、また、しなやかである。(高橋正子)

【高橋正子特選/5句】
★雨上がり百までは数え摘む土筆/祝恵子
雨に急に丈をのばした土筆であろう。雨が上がると一面の土筆に目を見張る。気もはやって摘み取る。百本以上の収穫が嬉しい。(高橋正子)

★山畑のその二列の菜花かな/桑本栄太郎
山の畑には春大根やほうれん草などがあり、そのうちの二列には菜花が黄色く風に揺れています。春の長閑な風景です。 (井上治代)

★下草になおも活き活き落椿/河野啓一
青い草の上に紅い椿が落ちています。今落ちたばかりでしょうか。椿の精霊の息づかいまできこえるようです。 (井上治代)

★春一番過ぎゆき伊予路光り満つ/藤田裕子
強い風の春一番が過ぎると空は青く澄み、伊予路には明るくあたたかい光が満ち溢れています。伊予路には遍路道もあり、これからお遍路さんの姿も多く見られることでしょう。 (井上治代)
暖かい風が南から吹き過ぎて、伊予路に春がっやってきました。ゆったりとして辺り一面に光が溢れ、誰もが春の喜びを満喫する季節です。素直な詠みで気持のよい句ですね。 (河野啓一)

★赤土にチューリップの芽ほんの少し/小西 宏
暖かくなり、様々な花が競うように咲き始めました。チューリップの芽はほんの少し顔をのぞかせ、あたりの様子をうかがっているようです。小さいものにも愛情を注いでいる作者の優しさが伝わります。 (井上治代)
赤土に小さなチューリップの芽が覗きました。花を待つ気持と、やっと芽が出たという安堵感とが「ほんの少し」の措辞で巧みに表現されています。 (河野啓一)

【黒谷光子特選/5句】
★近況を聞きつつ彼岸の帰り道/多田有花
お墓参りの帰りでしょうか、久しぶりに出会った知人に近況を聞くのもお彼岸ならではのご縁でしょう。(黒谷光子)

★残り菜の花菜明かりとなりにけり/桑本栄太郎
白菜など畑に残った菜っ葉類が黄色い花をつけ畑を彩っています。残り菜への視線がやさしいです。(黒谷光子)

★街に子らの自転車あふれ春休み/津本けい
気候もよく進学進級などで宿題もなく、伸び伸びとした子供たちの春休みの情景が思われます。(黒谷光子)

★お彼岸や漉し餡厨に匂い立つ/佃 康水
お供のおはぎの漉し餡を作られるのですね。お手間いりのご馳走にご先祖様もお喜びのことでしょう。甲斐甲斐しい様子がうかがえます。(黒谷光子)

★故郷へ続く鉄路の陽炎えり/古田敬二
春の日差しにゆらゆらと揺らぐように見える鉄路、この線路は故郷へ続いているのだと思うと感慨深いものがあります。高齢になるほど故郷は遠くなりますが、思いは近くなっていくようです。(黒谷光子)

【迫田和代特選/5句】
★播磨灘沖行く船に風光る/多田有花
今の風は光って見えます。いいお天気だったのでしょう。沖を通る船に春の光った風が吹いていたという綺麗な句ですね。(迫田和代)

★少年のふと大人びて春休み/津本けい
少年の頃はよく変わります。そんなささやかな変化を見逃さない優しい身近な目がある幸せ 優しい心に乾杯。(迫田和代)

★お彼岸や漉し餡厨に匂い立ち/佃 康水
とても懐かしい句でした。と申しますのは、昔祖母の漉し餡の香に魅せられ 私も漉し餡を作っておりました。美味しい懐かしい句です。(迫田和代)

★群青の湖のかなたは薄霞/黒谷光子
湖の先は薄霞で見えないのでしょう。余計群青の湖が目立ちますね。湖の蒼い色は格別ですから。(迫田和代)

★お茶の葉の村の垣根の新芽かな/桑本栄太郎
もうすぐ垣根の新芽で美味しいお茶が飲めますね。お茶の垣根っていい考えと思います。(迫田和代)

【佃 康水特選/5句】
★地にすみれ空に鳥声野道ゆく/河野啓一
春の野道を愛でながら散策されて居る心の豊かさを感じます。俳句ならではの春を謳歌する季節を活き活きと詠まれています。 (佃 康水)

★春分の煙りまっすぐ空へたつ/多田有花
煙がまっすぐに立つと言うのは風の無い穏やかな日なのでしょう。春分になれば日一日と温かくなって外に飛び出して行きたいですね。 (佃 康水)

★木々芽吹く尾根に見下ろす湖青き/黒谷光子
湖とは琵琶湖でしょうか。木々の芽吹いてくる頃は空も空気も綺麗で大いなる琵琶湖もさぞ青々と美しいことでしょう。また訪れて見たくなりました。 (佃 康水)

★遅れても桜前線くっきりと/迫田和代
今年は例年に無く何時までも寒い日が続きましたがやっと桜の開花が見られる様になりました。待ちに待った桜の季節、長い川土手に満開になるのももう直ぐですね。 (佃 康水)

★地に伏せば広がる野原いぬふぐり/祝恵子
いぬふぐりは踏みそうに低くに咲いています。少し地に伏せて見ると野原が広がった様に空色の花が沢山咲いて居ることに驚きます。 (佃 康水)

【小西 宏特選/5句】
★残り菜の花菜明かりとなりにけり/桑本栄太郎
収穫されることなく残され、伸びて薹の立った野菜畑を詠われて、しかし明るく朧な花影が心に残ります。(小西 宏)

★ちょっと摘み過ぎかと思う土筆むく/津本けい
あまりに嬉しくて、せっせと摘まれたのでしょうね。お料理する段になっていささか後悔。ちょっと滑稽である詠いぶりも春らしく聞こえます。(小西 宏)

★地に伏せば広がる野原いぬふぐり/祝恵子
いぬふぐりをよく見ようと地に伏せて顔を近づければ、意外や大きな野の広がりが見えてくる。小さな者に助けられての風景の転換ですね。(小西 宏)

★見下ろせば青麦の田の湖岸まで/黒谷光子
ハイキングにいらしたときの、峠からの風景とか。琵琶湖の畔まで青々と麦の葉が広がる田園風景がゆったりと写しだされていて、春の明るさ、湖周辺の広やかさを堪能することができます。(小西 宏)

★病棟の裏より医生卒業す/川名ますみ
晴れの卒業姿。それを病棟からじっと見送る患者の優しいまなざし。そこには静かに心をゆさぶる深い思いが伝わってきます。(小西 宏)

【津本けい特選/5句】
★宿下駄を響かせ戻る春の宵/小口泰興
旅先では夕方まで下駄をつっかけて辺りを散歩するのが楽しみの一つです。下駄音がからころと付いてきて、非日常の開放感が心地よく響きます。 (津本けい)

★頂をとりまいてみな木の芽張る/多田有花
山はどの木も芽吹きうす緑に溢れます。その芽が頂をとりまいているという視点が素晴らしいと思います。 (津本けい)

★吹き抜ける風の高さや揚雲雀/桑本栄太郎
雲雀が揚る速さ、高さはいつ見てもはっと嬉しいものです。それは、風が吹き抜けて雲雀を揚げている。そうなのかと納得しました。 (津本けい)

★春耕の黒きを縫って鉄路伸び/古田敬二
耕されたばかりの黒土が日に照り、その中をうねり縫って線路が輝きます。早春の風景が明るくて心弾みます。 (津本けい)

★蕗の薹遠嶺は白く光りおり/黒谷光子
蕗の薹がぽつぽつと出始め見上げる遠嶺には残雪が輝きます。いつもの今頃の風景ですが、春を迎えた喜びは年毎に新しく、増してもゆくように感じました。 (津本けい)

【川名ますみ特選/5句】
★合格を告げて手向けぬ桃の花 / 小口泰與
可愛がって貰った親類、また、ご先祖様へ合格を報告。明るい桃色が喜びを引き立たせます。 (川名ますみ)

★ひとり来て静かに梅を見て帰る / 多田有花
平明な御句の通りでしょう。ひとり静かに梅を見る、その愉しみに憧れます。 (川名ますみ)

★残り菜の花菜明かりとなりにけり / 桑本栄太郎
その黄色が灯るように映る花菜。残り菜となっても、確かに「花菜明かり」たる姿に惹かれます。 (川名ますみ)

★チャイム押す手のひら収め沈丁花 / 佃 康水
扉の傍に思い掛けず植わっていた沈丁花。その香りをきいた手の動きが、いきいきと浮かびます。 (川名ますみ)

★見下ろせば青麦の田の湖岸まで / 黒谷光子
高台から見下ろす早春の湖岸は、より新鮮に映ったことでしょう。青麦の勢いに押されそうなほど。 (川名ますみ)

【祝 恵子特選/5句】
★宿下駄を響かせ戻る春の宵/小口泰與
外湯でもいかれたのでしょうか、宿の下駄をならし、ゆったりとした春の旅ですね。 (祝恵子)

★鶯や考えごとの中に入る/多田有花
考え事の最中にふと鶯の声が聞こえてきた。考え事を忘れて、鶯の声に聞きいる作者です。 (祝恵子)

★少年のふと大人びて春休み/津本けい
少し見ぬ間に少年の大人びた仕草に、うれしさや寂しさが、わいてきたというところでしょうか。 (祝恵子)

★お彼岸や漉し餡厨に匂い立ち/佃 康水
厨でいい香りが漂っています。お彼岸には決まって作られるお手製の漉し餡。さぞかし仏様も皆さんもお待ちかねでしょうね。 (祝恵子)

★卒業の歩を運びゆく足袋白き/川名ますみ
卒業の「足袋白き」で袴姿なのかなと思います。この時ばかりはゆったりとした歩きなのでしょう。 (祝恵子)

【入選】
★雨あとの山の鶯なめらかに/藤田洋子
「鶯なめらかに」と詠み、「山の鶯」を身近に捉えた。「雨あと」であれば、大気が澄んで、山の生きものを身近に生きいきと感じる。(高橋信之)

★清明や愛媛の空と海の青/井上治代
一句を「青」で終え、「青」が印象的である。「清明」の「青」であり、「愛媛」の青」である。「清明」を今の暦に当てはめるには、いくらかの無理があるが、「清明」には、「春を迎えて郊外を散策する日」という意味があるので、季節感がある。(高橋信之)

★見下ろせば青麦の田の湖岸まで/黒谷光子
ハイキングで小高い丘を歩かれました。青麦の色を楽しみながらのハイキング、空も湖も青くきっと爽快なひとときだったことでしょう。(多田有花)

★遅れても桜前線くっきりと/迫田和代
今年は梅が遅く、それに押されて桜前線も歩みがゆっくりです。それでも確実に列島を北上する桜、ほんものの暖かさを連れてきます。(多田有花)

★岬への道白蓮の蕾解け/津本けい
岬への道というのがいいですね。何もかもが開放的で空も広くそこにほぐれはじめた白蓮、明るいです。(多田有花)

★船ゆくや河津桜に見え隠れ/佃 康水
河津桜といえば早桜だから もう綺麗な花が咲いてるでしょう。沖をゆく船が花の影に見え隠れしている。一幅の絵ですね。それも俳句でしか出せない絵。 (迫田和代)

★陽と藁にふれて蔓伸ぶ豆の花/小川和子
杭に紐と藁を吊るしその藁に絡まりどんどん伸びて行きます。こちらは未だですが日差しを受けながら花をつけるのももう直ぐです。素朴な可憐な花ですね。豆ご飯やさや豆料理大好きで収穫も楽しみです。 (佃 康水)

★雨やめば工事の音と囀りと/多田有花
感覚がするどい方と思われます。雨が止んだら工事が始まり鳥も囀ることがはっきりお判りですもの。感心します。 (迫田和代)

★春耕の黒きを縫って鉄路伸び/古田敬二
黒土の畑を縫うように鉄道の線路が伸びてるのでしょうか。時々は列車も通るでしょう。なにか広々した大らかさを感じます。 (迫田和代)

▼コメントのない句にコメントをお願いします。下の<コメント欄>にお書きください。

第9回句会全作品

2012-03-22 22:44:39 | 日記
◆第9回句会全作品/現在16名(3月18日~24日)◆

No.1 小口泰與
春の野や風花犬とたわむれぬ 
春月や見舞帰りの駐車場
合格を告げて手向けぬ桃の花
川風に光りこぼせし花菜かな
カメラ持つ我にたはむる黄蝶かな
積み肥の畦に置かれし冴え返る
さえずりやお宮の松の風やわき
宿下駄を響かせ戻る春の宵
潮騒に起こさる宿や百千鳥
久々に娘と酌みし春炬燵
歓声を上げし峠や春の海
紅梅や子等の声のせ水奔る
釣糸を手繰るや我に虻襲う
たんぽぽや瀬尻の岩のてらてらと
梅の香とともに来たりし友の顔
湖の風をまといし柳かな
まるまるの梅の蕾の弾けけり
浅間山真向いにして花を待つ

No.2 河野啓一
翁らの昔語りや春の午後
花咲いて小さきラッパは黄水仙
春の磯蟹横走る波の陰
春彼岸僧はドライブ忙しく
庭草の伸び著し春分の日
青春の息吹もかくや春一番
地にすみれ空に鳥声野道ゆく
春分の日差しのどかにレース越し
陸奥の森甦れやぶつばき
バラ芽吹く茜に燃えて朝日浴び
花馬酔木白い珠玉を連ね咲く
春分や朝日の向きの変わり来て
森の木々芽吹きみどりにいのち継ぐ
春禽の羽根休めゐる枝の先
苗木植う緑の森を夢に見て
列島の森潤して春の雨
下草になおも活き活き落椿
花韮を揺らせ駆け行く庭雀

No.3 多田有花
雨がちの午後を彼岸参かな
丁寧に彼岸の墓石を拭いけり
近況をききつつ彼岸の帰り道
播磨灘沖ゆく船に風光る
梅が枝の伸びたる先を雲渡る
見上げればつらつら椿青空に
春分の煙まっすぐ空へたつ
窓開けし目に春分の朝の霜
春分の大橋くっきり晴れ渡り
ひそやかに真っ赤な梅の隅に咲く
波型を描きつ鵯の春の空
どこからか梅が香運ぶ風なりき
観梅の人のそぞろに歩きけり
頂をとりまいてみな木の芽張る
鶯や考えごとの中に入る
雨やめば工事の音と囀りと
この彼岸入りもしまいも雨となり
ひとり来て静かに梅を見て帰る
風強し紅梅吹雪となりて散る
芽柳の明るき風に躍る昼
梅林に照りて翳りて風の吹く

No.4 桑本栄太郎
ものの芽の雨滴伝いて春の雨
生きいきと木肌色めき春の雨
牡丹餅の包みは生協入り彼岸
降りしきて竹林しなる春の雨
うす闇の花菜明かりの家路かな
生きいきと春星生まれ雨あがる
支柱までいまだ丈なし豆の花
お茶の葉の村の垣根の新芽かな
村人の吾に会釈や春の風
溝流る春の小川の樂を聞く
残り菜の花菜明かりとなりにけり
沼渡る風に靡かず蘆の角
吹き抜ける風の高さや揚雲雀
山畑のその二列の菜花かな
木蓮の芽のしかじかと咲く構え
華やげる雨の舗道や落椿
春雨の尾灯滲ませバス車庫へ
ひたひたと樋の音色や春の雨

No.5 津本けい
雲雀野の天地に囀り湧くばかり
街に子らの自転車あふれ春休み
ちょっと摘み過ぎかと思う土筆むく
春寒し空と海との境なく
際やかに春空突いて関帝廟
薄曇るコンビナートや百千鳥
少年のふと大人びて春休み
日当たりて椿落ちけりまたひとつ
岬への道白蓮の蕾解け
奥座敷まで日の眩しく春夕べ
春昼の日向に寝そべりシープドッグ
おまけよと農婦芽キャベツ摘みくれし

No.6 藤田洋子
鶯に立ち止まりつつ墓前へと
雨あとの山の鶯なめらかに
芽木ゆする風に卒塔婆鳴りにけり

No.7 祝恵子
地に伏せば広がる野原いぬふぐり
雨上がり百までは数え摘む土筆
砂均す姿見えおり春の舟

No.8 佃 康水
残り香に重ねて墓参彼岸かな
校門の祖母や抱き寄す卒業子
お彼岸や漉し餡厨に匂い立ち
船ゆくや河津桜に見え隠れ
海光る河津桜の揺るる丘
チャイム押す手のひら収め沈丁花

No.9 小川和子
陽と藁にふれて蔓伸ぶ豆の花
区画され棟上げされて薺咲く
春分の日の晴れやかに野廻りす
紫陽花の芽吹きを知れるわが視線
梅咲きみつ明るき一樹天に向く
遮断機の点滅にじむ街おぼろ

No.10 古田敬二
故郷へ続く鉄路の陽炎えり
春耕の黒きを縫って鉄路伸び
木曽からの水にきらめく春の陽よ
永遠の別れや光る猫柳
春光の木曽川遡り師へ別れ
陽炎える鉄路のむこう師と別れ
故郷の山はほほ笑む準備して
春光を浴びて故郷山丸し
放射能無き故郷の春を訪う

No.11 藤田裕子
春一番過ぎゆき伊予路光り満つ
人住まぬ家を灯せし紅梅よ
つくしんぼ袴とる児の目の輝けり
三月の光りとなりて児ら滑る
土つきし蕗の薹を愛で合えり
里の墓いつしか遠のき彼岸西風

No.12 小西 宏
まだ咲かぬ枝に春日のやわらかに
泥掻いてひかる春水かるき音
黎明の夢いつくしむ春の窓
春分の土手に威勢の赤子這う
立つ梅も広がる梅も空の青
そっけなき庭に三椏花咲けり
赤土にチューリップの芽ほんの少し
山茱萸の土手柴笛を吹き通る
気をつけて気をつけて行き菫草

No.13 黒谷光子
蕗の薹遠嶺は白く光りおり
蕗の薹土手の斜面に陽の射して
一つあれば次々とあり蕗の薹
見下ろせば青麦の田の湖岸まで
群青の湖のかなたは薄霞
木々芽吹く尾根に見下ろす湖青き
一株のすみれ清らに古寺の隅
湖に向く露座の大仏春の風
集まって蕾ふくらむ黄水仙

No.14 川名ますみ
卒業の歩を運びゆく足袋白き
病棟の裏より医生卒業す
気象庁の庭に白梅窓に雨

No.15 迫田和代
遅れても桜前線くっきりと
春の雨緑も増えて花芽にも
岬より蒼い海原 春の島

No.16 井上治代
輝やかに春の一日(ひとひ)の始まれる
満開の梅晴天にろうたける
清明や愛媛の空と海の青


※選者の選は、下記の要領でお願いします。
①上記全作品からお選びください。
②特選5句をお選びください。5句すべてにコメントを付けてください。
③選句期間は、3月24日(土)午後9時~26日(日)午前10時です。
④選句は、下の<コメント欄>にお書き込みください。選者名もお忘れなきよう、お願いします。

※選句は、多少の遅れがあっても、許されますが、その場合は、ご一報ください。

▼選者の選は、3月24日(土)午後9時に始めてください。


◆第9回きがるに句会投句箱◆

2012-03-21 05:34:32 | 日記
■投句箱■
第9回句会のご投句(3月18日(日)~3月24日(土)/1日3句以内)は、下の<コメント欄>にお書き込みください。句評など投句以外のことを書き込まないでください。投句以外の伝言などは、<伝言版>にお書きください。
※第8回句会の入賞発表は、3月25日(日)です。

第9回句会の投句(3月18日(日)~3月24日(土)/1日3句以内)は、締め切りました。

●伝言版
伝言、お問い合せなどがありましたら、下記アドレスの<伝言版>にお書き込みください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan100

ご挨拶

2012-03-19 10:44:57 | 日記

水が温み、椿やさんしゅゆが咲き、寒い日もありながら、いよいよ春となりました。第8回きがるに句会にご参加くださいまして、ありがとうございます。入賞の皆さまおめでとうございます。選者の皆さまには、選とコメントをありがとうございました。季節の句をいろいろ楽しませていただきました。
管理運営は、信之先生が一手に引き受けてしてくださいました。ありがとうございます。次回の入賞発表は、3月25日(日)の午前です。これで、第8回きがるに句会を終わります。(高橋正子)

第8回句会入賞発表

2012-03-17 09:14:46 | 日記
◆入賞発表/2012年3月18日◆

【最優秀/2句】
★店先の竹筒に挿し早桜/祝恵子
竹筒と早桜の取り合わせがさっぱりとして清々しい。季節に先駆けた「早桜」でありが。さりげなく風雅を楽しむ心意気が好もしい。(高橋正子)

★棲めるもの皆が現れ水温む/高橋秀之
水温むころ。池や川を覗くと、棲んでいるものたちがみんな現れてくる。水に深く潜っていたものたちが、水面に浮いて、春が来たぞと喜んでいる。鯉だの、鮒だの、亀だのと。生きものたちの喜びは、とりもなおさず人間たちの喜びにもなる。「棲めるもの皆が現れ」は堂々としている。(高橋正子)

【高橋正子特選/5句】
★校門のつぼみ艶めく桜芽木/桑本栄太郎
桜芽木に「校門」を配して、句に物語性がある。卒業式を控え、そして新入生を迎える準備も進んでいるであろう学校。別れと希望が入り混じって校門の桜芽木は蕾をつややかに膨らませつつある。(高橋正子)

★水温む鍬先光るまで洗う/古田敬二
冷たい冬の水と違い、春になり水も温かく、時間をかけてゆっくり洗うことができるようになりました。鍬の先が光るまで丹念に洗う様子に、これから耕すであろう畑への思い入れを感じます。(高橋秀之)

★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿の枝を一枝切る。もちろん花をつけてである。切り取った枝であるのに、却って椿の花が生き生きとしてくる。「枝のちから」がそうさせる。(高橋正子)

★日の庭に鳥の集まりクロッカス/小口泰與
「クロッカス」という言葉の音の響きがこの句を生きいきとさせている。うららかな日差しに地にはクロッカスと小鳥が遊ぶ。明るく穏やかな光景を見る。(高橋正子)

★古木より幹を貫く芽吹きかな/河野啓一
「幹を貫く芽吹き」が、力強く、芽吹きの色の優しさが視覚的によい。古木がその歳月を貫き、己自身の幹を貫く力強さを感じる。(高橋正子)

【黒谷光子特選/5句】
★スキップができて春から幼稚園/小西 宏
四月からは幼稚園、スキップもできるようになりました。幼子の嬉しさいっぱいの様子がかわいいです。(黒谷光子)

★雛飾る年に一度の客のごと/小川和子
雛飾りは、3月の節句の時期だけですが、年に一度の客という例えが、この時期を待ち侘び、雛を飾る楽しみの気持ちの表れなのでしょう。(高橋秀之)

★今宵より淡く灯され雛の間に/藤田洋子
雛飾りのぼんぼりが灯されたのでしょう。ほのかな明かりにお雛様が浮かび春の夜が華やぎます。 (黒谷光子)

★鉄塔を気高く浮かせ春三日月/藤田裕子
三日月に高々と浮く鉄塔が絵のようで春の夜ならではの情景と思います。 (黒谷光子)

★受験子や社の絵馬の太き文字/佃 康水
絵馬の太き文字に充分に頑張ってきた自信を感じます。合格されたことでしょう。 (黒谷光子)

【祝 恵子特選/5句】
★梅東風や往来誰も優しくて/藤田裕子
春の風や梅の開くのをみれば道行く人たちは自然と優しい気持ちになれるのでしょうね。(祝 恵子)

★山影に残雪ありて夕焼けに/迫田和代
雪残る山影、そこに夕焼けがさしてきている。綺麗な春寒むの夕景です。 (祝恵子)

★触れてみるものの芽いまだ尖りおり/井上治代
いとおしくあふれくる芽を、自然を見ておられます。 (祝恵子)

★喜びの姿して地に蕗の薹/高橋信之
「 喜びの姿して」いる「蕗の薹」であり、作者の見つけた喜びでもあるのでしょう。また春を見つけた喜びでしょうか。 (祝恵子)

★スキップができて春から幼稚園/小西 宏 
お子さんの姿が浮かんできます。周囲の人を巻き込む喜びですね。 (祝恵子)
 
【迫田和代特選/5句】
★幼子の吹き出す虹色シャボン玉/祝恵子
幼いお子様が吹かれたシャボン玉ですもの。屹度喜ばれて歓声をおあげになったでしょう。それにシャボン玉の虹色は春らしい淡い虹色です。楽しい春の感じです。(迫田和代)

★晴れていて風吹き風の光る丘/高橋信之
丘を拭く風ってとても美しい風だと思います。おまけに晴れでしょう。風で光る丘 素敵でしょうね。 (迫田和代)

★受験子や社の絵馬の太き文字/佃 康水
願いが大きかったのでしょう。希望の学校に合格されたと思いますよ。あまりのお喜びに絵馬のことお忘れかも知れませんね。 (迫田和代)
子供のために何度絵馬を掲げたことでしょう。受験子の必勝の思いが太き文字に表れていることをうまくとらえています。(古田敬二)

★放射線科の窓の囀り吾がものに/川名ますみ
些か緊張なさっていらっしゃる放射線科の人と窓辺で吾がもの顔で囀っている小鳥との対比 素晴らしいドラマを見ているような気分になりました。 (迫田和代)

★店先の竹筒に挿し早桜/祝恵子
竹筒と早桜の取り合わせがさっぱりとして清々しい。季節に先駆けた「早桜」でありが。さりげなく風雅を楽しむ心意気が好もしい。(高橋正子)

【佃 康水特選/5句】
★日の当たる庭にものの芽確かめる/黒谷光子
ぽかぽかとした陽気に庭先の草の芽や木の芽が萌え出でて来ました。春の息吹を感じつつものの芽を嬉々として確かめていらっしゃる作者のお姿が目に浮かびます。(佃 康水)

★歌いつつ通る土手道春よ来い/迫田和代
美しい長い川土手を通るとあちこちから春の息吹を感じられる様になりました。嬉しくてついつい歌いたくなりますね。春よ来いです。 (佃 康水)

★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿を切り取り手に持っても華瓶に活けても葉も花びらも活き活きとし「ちから」を感じます。その辺りが一段と引き締まります。 (佃 康水)

★スキップができて春から幼稚園/小西 宏
お孫さんがこの春からご入園でしょうか。おめでとうございます。スキップが上手に出来るようになれば一先ずは安心。温かく見守っていらっしゃるご家族の不安と嬉しさ緊張感が伝わって参ります。 (佃 康水)

★玄関を開けて吾が家の梅の香に/川名ますみ
玄関を開ければ開花した梅の明るさと香りが仄かに漂って来ます。穏やかな春の日差しを受け吾が家の梅の花で有れば尚のこと嬉しさと幸せが身に沁みて参ります。読み手もそのお零れを頂きました。 (佃 康水)

【井上治代特選/5句】
★歌いつつ通る土手道春よ来い/迫田和代
「春よ来い、早く来い」と歌いながら歩く土手道。その道端にはたんぽぽやすみれ。その他小さくかわいい花がたくさん咲いているのでしょう。春が来るのを待ちわびていた作者の心情がよく伝わってきます。(井上治代)

★ものの芽を音なく濡らす夜の雨/黒谷光子
春の雨は音もなくしっとりと降り続きます。降り注ぐ雨に少しずつほぐれていくものの芽。あと少しで花も咲くのでしょう。楽しみです。(井上治代)

★活けられしままに芽吹いて桃の花/藤田洋子
姿もすっきりと活けられた桃の花の芽吹き。ほんのりと紅い桃の花色は心を和ませてくれます。(井上治代)

★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿の一枝を切り花瓶に活けよく見ると、その椿からあふれる生命力を感じとることができた作者。語調からも力強さが伝わってきます。(井上治代)

★梅白し母とおしゃべり遠き日へ/藤田裕子
長閑な春の一日。穢れない梅の白色に心が癒されます。お母様とおしゃべりをしているうちに、遠い日の思い出の中へ引き込まれ、懐かしさが胸にしみます。(井上治代) ★ものの芽を音なく濡らす夜の雨/黒谷光子

【小西 宏特選/5句】
★梢よりゆらめき出ずる春の雲/多田有花
やわらかな雲が、木々を越えてゆっくりと流れて来る。しばらくは枝々の間に見え隠れする時もあるのかもしれない。その枝先には木の芽や花芽が膨らんできているに違いない。雲はゆっくりと、少しずつ形を変えながら現れ、木々を離れ空に浮かぶ。「ゆらめき出ずる」とはそのような情景であろうと思う。地にあるものと空のものとの響き合いを感じさせる、大らかな春の句です。(小西 宏)

★一椀の花麩のひらく春の日に/藤田洋子
お祝いのお膳でしょうか。お椀の蓋をあけると桃色や薄緑色などの可憐な形と色が花開く。まことによい春の日和です。 (小西 宏)

★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
厚く重い花をきっぱりと支え続ける枝の力を称えておられるのだと思いますが、「一枝にあるちから」の措辞は艶やかな椿の葉の張り具合や、むろん花の力強い明るさをも表現しています。 (小西 宏)

★京菜摘む畦の十字の日のぬくみ/小口泰與
「畦の十字」の表現が絵画的であり、「京菜」の響きとあいまって暖かで伸びやかな春の風景を伝えてくれています。 (小西 宏)

★枯れしものまず伏してから葦芽ぐむ/古田敬二
昨年の枯れ葦がまだ残るそばに新しい葦の芽が顔を覗かせ始めたのでしょう。「まず伏してから」の表現が決して否定的にではなく、新しい希望に繋がるものとして芽ぐみを支えてくれています。 (小西 宏)

【古田敬二特選/5句】
★抱くごとに重くなる子よたんぽぽ黄/今村征一
お孫さんでしょうか。タンポポの咲く野原で空高くだきあげる。この前抱きあげたときより重くなっている。新しい後に対する喜びを感じました。(古田敬二)

★三月の丘よ晴れの陽をぞんぶんに/高橋信之
よく晴れた3月の日の吟行でしょうか。丘を上りり切るとそこには穏やかな春の風と温かな春の日差し。きっといい句に会えたことでしょう。(古田敬二)

★食卓の色とりどりに春めきぬ/井上治代
食卓に載せるものも菜の緑も色鮮やかに、そのほかも彩りどりに揃えられ春めく食卓となった。(高橋正子)

★近づいて離れて日永美術展/藤田裕子
日も永くなって、仕事や家事をするにも余裕ができるようになった。美術館では近づいてよく見たり、離れて鑑賞したり、ゆっくりと楽しめる。これも日が永くなればこそ。(高橋正子)

★遥かには純白の嶺々猫やなぎ/今村征一
遠くには雪嶺が見え、こちらには猫柳が芽吹く。早春の景色がうれしい。(高橋正子)

【津本けい特選/5句】
★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
切り取られてから別の輝きを見せる小枝の花。白く根を出して新しく命を宿す木もあり、細い枝に潜む生命力の不思議さが、素晴らしく感じました。(津本けい)

★淡雪に水の重みよ雪を掻く/小川和子
淡雪はずっしりと水っぽく重みがあります。春の到来に重みもまた嬉しく雪掻きに勤しまれたことでしょう。 (津本けい)

★山並みの軽み帯びつつ遠霞/藤田裕子
山に霞がかかるとふんわりと浮いているように見えます。「軽み帯びつつ」と表現されて、春霞は軽みであると感じ入りました。 (津本けい)

★喜びの姿して地に蕗の薹/高橋信之
凍土の中に小さな芽や蕾を育んできた蕗の薹。今春となり地上に生まれ、日を浴びて喜びそのものの姿を見せます。 (津本けい)

★抱くごとに重くなる子よたんぽぽ黄/今村征一
久しぶりにお孫さんを抱くとずっしりと重くなっています。嬉しくて愛しくて、たんぽぽの道を行ったり来たりするお姿を思い浮かべています。 (津本けい)

【川名ますみ特選/5句】
★祝膳の大皿すすぐ春の水/藤田洋子
大皿をたっぷりの水で洗う快さ。それが祝いの膳であり、さらに春の水であれば、さぞ明るい厨房となったことでしょう。皆の幸福な顔を映した皿を、軽やかな水音にすすぐ、その眩い一時が記念の日に刻まれました。(川名ますみ)

★古木より幹を貫く芽吹きかな/河野啓一
枯れたように見える古木、その幹から直接に春の芽が吹き出している。「幹を貫く」に老木の力強さが感じられます。 (小西 宏)

★スートピー活け婚約の君ら待つ/高橋信之
色も形も、それに香りも優美なスイートピーに託して若い婚約者の来訪を待たれる作者のお気持ちがあふれた御句かと思いました。 (河野啓一)

★肥料袋土に置かれて春の畑/祝恵子
暖くなって園芸の準備にかかる時期です。肥料袋が土の上に置かれていて、まず土づくりから、畑仕事の始まりです。きっと素晴らしい花が咲くでしょう。それとも美味しい新鮮野菜かもしれませんね。 (河野啓一)
畑に詰まれた肥料袋は、正にこれから肥料をこれから撒くためなのでしょう。いよいよ春の作付けの季節到来で気持ちが弾みます。(高橋秀之)

★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿の枝を一枝切る。もちろん花をつけてである。切り取った枝であるのに、却って椿の花が生き生きとしてくる。「枝のちから」がそうさせる。(高橋正子)

【入選/5句】
★谷からの風梅が香を運ぶ/多田有花
谷から吹き上げる風は、爽やかな気持ちにさせてくれる涼風です。この季節は、その風に梅の香りも一緒に運んできて爽やかさも一層引き立つことでしょう。(高橋秀之)

★雲去れば真っ先に陽を金盞花/津本けい
春は空模様がはっきりしない日が続きます。それでも日差しが戻ればそれを受けるように金盞花の花が輝きます。あの色も太陽らしい色です。(多田有花)
陽光を反射して耀く金盞花の鮮やかな色が目に浮かびます。 (河野啓一)

★赤土を押し上げ青々下萌ゆる/井上治代
春はやさしいだけでなく、力強さ、躍動感、生命力にも満ちています。押し上げる草の力にそれがあります。(多田有花)

★春月や桧の匂ふ露天風呂/今村征一
ヒノキの露天風呂にゆったりつかっておられます。見上げればほどよい春の月、心地よいぬくもりとヒノキの香りと月、至福ですね。(多田有花)

★瀬の音へ紅のまんさく咲き満ちる/佃 康水
黄色いまんさくが満開になりました。春、まず咲くからマンサクと聞いたことがあります。海の音も春の音に変わっているのでしょう。絵になりそうです。(多田有花)

※下の<コメント欄>には、<コメント>と<お礼>以外はご遠慮ください。<コメント>と<お礼>以外は削除されます。





◆第8回句会選句箱◆

2012-03-16 07:08:56 | 日記
■清記■

01.畑中の紅梅あかり遠くまで
02.雲去れば真っ先に陽を金盞花
03.山占めてビニールハウスが春光に
04.春霰打つ沖をゆくフェリー船
05.松林に海光透けて二月尽
06.踏青やふわりと弾む靴まさら
07.山門の梯子段鳴り春疾風
08.誘われて仰ぐ一天春の星
09.門閉ざし又も仰ぐや春の星
10.葉の真中蕾もたげし黄水仙

11.朝の陽に揺る蹲の薄氷
12.日の当たる庭にものの芽確かめる
13.あたたかき日差しに竿のもの高く
14.ものの芽を音なく濡らす夜の雨
15.ガラス器にさよりの刺身海想う
16.山影に残雪ありて夕焼けに
17.向こう岸土手のあちこちいぬふぐり
18.島通い蜜柑の花の蜂蜜を
19.歌いつつ通る土手道春よ来い
20.朝食にたっぷり飲んだ蜆汁

21.はんなりと膨らむ桜の赤い芽や
22.乾杯のグラスを挙げて春兆す
23.一椀の花麩のひらく春の日に
24.祝膳の大皿すすぐ春の水
25.活けられしままに芽吹いて桃の花
26.枝先に小さなみどり桃の花
27.今宵より淡く灯され雛の間に
28.お城山晴れてまた降る春の雨
29.幼子の吹き出す虹色シャボン玉
30.肥料袋土に置かれて春の畑

31.店先の竹筒に挿し早桜
32.朱の鳥居受験祈願の絵馬多く
33.先斗町紅白椿は交番前
34.八つ橋の菓子のケースにおひな様
35.誰が置きし椅子に椿の二三花
36.切りてなお椿一枝にあるちから
37.街並みの車窓にひかる梅日和
38.鋏入れ初咲きの椿賞でしかな
39.下萌ゆる野よ晴れわたる淡き空
40.淡雪に水の重みよ雪を掻く

41.街中に飛沫く音たて淡き雪
42.雛飾る年に一度の客のごと
43.友の句を書きとめ長閑に暮れゆけり
44.早春の木々輝きて影確か
45.赤土を押し上げ青々下萌ゆる
46.触れてみるものの芽いまだ尖りおり
47.寡黙なる亡母(はは)の好みし梅咲きぬ
48.食卓の色とりどりに春めきぬ
49.春空へ線路工事の笛高し
50.鉄塔を気高く浮かせ春三日月

51.山並みの軽み帯びつつ遠霞
52.花市のチューリップの前戻り来る
53.梅白し母とおしゃべり遠き日へ
54.近づいて離れて日永美術展
55.山里の川面いきいき風光る
56.梅東風や往来誰も優しくて
57.野の池や鳥帰りたる静けさに
58.熱々のミルクカップや二月尽
59.アイリスの芽のとんがりて伸びて来る
60.古木より幹を貫く芽吹きかな

61.花馬酔木ひと雨ごとに白くなり
62.春の土付けし筍掘り上げる
63.春潮の流れに沿いて雲走る
64.スートピー活け婚約の君ら待つ
65.春風吹くかもてなしのケーキの匂い
66.春浅き朝の机上の本を閉づ
67.閉じられて本の厚みの春浅き
68.喜びの姿して地に蕗の薹
69.三月の丘よ晴れの陽をぞんぶんに
70.晴れていて風吹き風の光る丘

71.山葵田の水すみずみに流れ行く
72.日の庭に鳥の集まりクロッカス
73.あけぼのの風素直なり沈丁花
74.芽柳の影やわらかき湖辺(ウミベ)かな
75.辛夷咲く赤城は荒き風を生む
76.竹秋や暮れかかり来し風の音
77.京菜摘む畦の十字の日のぬくみ
78.きさらぎや空気再びしんしんと
79.一斉に羽ばたきの音春の鳥
80.頂に立ち強東風を真向かいに

81.梢よりゆらめき出ずる春の雲
82.春の陽の注ぐ本堂鬼瓦
83.谷からの風梅が香を運ぶ
84.樒採る人と出会いし彼岸前
85.木蓮の芽のかしましき陽射しかな
86.水音の春の小川でありにけり
87.さみどりの摘むによしなし蓬萌ゆ
88.しつかりと風に起ち居り春菜かな
89.新駅のホーム外れや菜花の黄
90.校門のつぼみ艶めく桜芽木

91.山陰の村に灯りや春茜
92.雨止んで白木蓮の芽のあまた
93.細やかな雨降り沈み辛夷の芽
94.隠れ処に梅開いたと伝え合う
95.雪解けの水の流れる乾いた道
96.人訪うて梅園少し紅霞む
97.それぞれの庭に一木梅香る
98.スキップができて春から幼稚園
99.遥かには純白の嶺々猫やなぎ
100.春月や桧の匂ふ露天風呂

101.抱くごとに重くなる子よたんぽぽ黄
102.春暁の光まみれの山毛欅林
103.立子の句諳じながら雛飾る
104.暁光に滲みほのかに芽吹く河岸
105.暁光に頭をもたぐ蕗の薹
106.水温む鍬先光るまで洗う
107.御岳の遠望さんしゅゆ開く日に
108.枯れしものまず伏してから葦芽ぐむ
109.芽ぶきけり音楽室から歌溢れ
110.知らぬ児に声かけれて青き踏む

111.畝作る測量の綱ぴんと張り
112.春泥を踏んで寄り来る牧の牛
113.風光る真っ直ぐ長き飛行機雲
114.雛飾りなくてわが家のちらし寿司
115.夜が白み色鮮やかに梅の花
116.木の芽吹く木々の向こうに青き空
117.朝日浴び増え行く木の芽深緑
118.棲めるもの皆が現れ水温む
119.虫食いの葉も活き活きと花椿 
120.受験子や社の絵馬の太き文字
 
121.池の端に鯉浮き上がる梅日和
122.瀬の音へ紅のまんさく咲き満ちる
123.乳足りて母に笑む児の初ひいな
124.茅葺の屋根の湿りに草萌ゆる
125.雛の夜ひとり綾取る女かな
126.琴の音や五人囃子の包み解く
127.幼子の靴脱ぎ捨てる春の土
128.梅咲けるひとつふたつと晴るる日に
129.放射線科の窓の囀り吾がものに
130.春光へ水を撒きたる手のひろき

131.背の高き人にブルーの春ショール
132.咲きかけの莟つつめる雪解水
133.玄関を開けて吾が家の梅の香に
134.母と吾のまんなかに供花彼岸入
135.きらきらと眩しき朝日春の海

■選句箱■
※選者の選は、下記の要領でお願いします。
①上記の<清記>の中からお選びください。
②特選5句をお選び、番号のみをお書きください。1句にコメントを付けてください。
③選句期間は、3月17日(土)午後9時~18日(日)午前10時です。
④選句の番号とコメントは、下の<コメント欄>にお書き込みください。選者名もお忘れなきよう、お願いします。
※選句は、多少の遅れがあっても、許されますが、その場合は、ご一報ください。

▼選者の選を開始してください。締切は、明日(18日)の午前10時です。

今日の秀句・今週の秀句

2012-03-14 08:06:49 | 日記
◆今週の秀句/高橋正子選◆

○3月4日~3月10日
★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿の枝を一枝切る。もちろん花をつけてである。切り取った枝であるのに、却って椿の花が生き生きとしてくる。「枝のちから」がそうさせる。(高橋正子)

○2月26日~3月3日
★店先の竹筒に挿し早桜/祝恵子
竹筒に挿されている早桜が、すっきりとして潔い。店先なのでさほど気取るものではないが、庶民的な風流心が見える。(高橋正子)

◆今日の秀句/高橋正子選◆

3月14日
★肥料袋土に置かれて春の畑/祝恵子

3月14日
★山葵田の水すみずみに流れ行く/小口泰與

3月13日
★日の庭に鳥の集まりクロッカス/小口泰與
「クロッカス」という言葉の音の響きがこの句を生きいきとさせている。うららかな日差しに地にはクロッカスと小鳥が遊ぶ。明るく穏やかな光景を見る。(高橋正子)

3月12日
★幼子の吹き出す虹色シャボン玉/祝恵子

3月11日
★木蓮の芽のかしましき陽射しかな/桑本栄太郎

3月10日
★水温む鍬先光るまで洗う/古田敬二
鍬を使ったあとは、着いた土を水で洗い落としておく。使う水も温んで、勢い、鍬先が光るまで洗ってしまった。水温むことも生活のなかの喜び。(高橋正子)

○3月9日
★梅咲けるひとつふたつと晴るる日に/川名ますみ(信之添削)

○3月8日
野の池や鳥帰りたる静けさに/河野啓一

○3月7日
★切りてなお椿一枝にあるちから/小川和子
椿の枝を一枝切る。もちろん花をつけてである。切り取った枝であるのに、却って椿の花が生き生きとしてくる。「枝のちから」がそうさせる。(高橋正子)

○3月6日
★御岳の遠望さんしゅゆ開く日に/古田敬二
木曽の御岳が遠望され、ここに早春の花のさんしゅゆが開き始めた。御岳はまだ雪を冠っているだろう。雪の白さ、山の青さに、さんしゅゆの黄色が澄んであざやか。早春ここにあり。(高橋正子)

○3月5日
★畑中の紅梅あかり遠くまで/津本けい

○3月4日
★雲去れば真っ先に陽を金盞花/津本けい
金盞花のオレンジ色の花は、日本の色というより、アジア的な、密教的な色という印象がしてインパクトが強い。雲が去れば、真っ先に陽を受けたようにかがやく。(高橋正子)

○3月3日
★風光る真っ直ぐ長き飛行機雲/高橋秀之(正子添削)

○3月2日
★枯れしものまず伏してから葦芽ぐむ/古田敬二

○3月1日
★店先の竹筒に挿し早桜/祝恵子
竹筒に挿されている早桜が、すっきりとして潔い。店先なのでさほど気取るものではないが、庶民的な風流心が見える。(高橋正子)

○2月29日
★雨止んで白木蓮の芽のあまた/小西 宏
句意のよく通る句。雨が止んだばかりの空にぞくぞくと白木蓮の芽が見える。尖った花芽からはやがて鮮やか白木蓮が咲くだろうと、楽しみにする気持ちが読める。(高橋正子)

○2月28日
★放射線科の窓の囀り吾がものに/川名ますみ(正子添削)
「放射線科」が「囀り」と取り合わせられて面白い効果を出している。放射線科の無機質で、目に見えないもののなかにいる多少の緊張に、窓の囀りがなんとも嬉しい。(高橋正子)

○2月27日
山占めてビニールハウスが春光に/津本けい(正子添削)

○2月26日
★水音の春の小川でありにけり/桑本栄太郎

▼伝言などは、下の<コメント欄>にお書きください。

■ご案内■

2012-03-14 08:06:37 | 日記
※第8回句会の入賞発表は、3月18日(日)に延期となりました。


■ご案内■
●参加者:花冠会員・同人。会員・同人以外の一般参加も許されますが、参加申込によって、花冠IDを取得してください。
●投句:一日一回、当季雑詠3句以内。ツィッターやフェイスブックに投句した句も許されます。
●投句場所:下の投句箱<コメント欄>にお書きください。投句箱<コメント欄>には、句評など投句以外のことを書き込まないでください。
●選者・選句:選者は高橋正子(花冠主宰)です。前回句会の最優秀受賞者を特別選者として招待いたします。選句・入賞発表は、随時行われます。
●ブログ管理責任者は、高橋信之(花冠創刊者)です。
※ご投句は、ご本名でお願いします。ご本名以外の場合は、削除されます。

▼伝言などは、下の<コメント欄>にお書きください。

◆第8回きがるに句会投句箱③◆

2012-03-04 08:04:22 | 日記
■投句箱■
第8回句会のご投句(3月11日(日)~3月17日(土)/1日3句以内)は、下の<コメント欄>にお書き込みください。句評など投句以外のことを書き込まないでください。投句以外の伝言などは、<伝言版>にお書きください。
※第8回句会の入賞発表は、3月18日(日)に延期されました。

●伝言版
伝言、お問い合せなどがありましたら、下記アドレスの<伝言版>にお書き込みください。
http://blog.goo.ne.jp/kakan100