03年9月、秋季神奈川大会3回戦の横浜隼人戦。チームは2回に先制も、不安定な姿勢を見せた当時2年の先発涌井に、厳しい言葉を吐いた。「勝っているのに崩れそうで『何、下を向いているんだ』とめちゃくちゃ怒りました」。延長11回、サヨナラ負け。1人投げ抜くも敗戦投手の涌井に、試合後も叱責(しっせき)。右腕は指揮官へ返事もせずに、寮へ帰った。
渡辺氏は焦った。帰宅後、携帯電話を開き「あんちょこ(説明書)を見ながら」慣れないショートメールを送った。「松坂の後の、横浜高校の大エースになってもらいたい。だから厳しく言ったんだ」。すぐに返信が来た。「分かりました。明日から頑張ります」。
寡黙な右腕が背負った名門の重責。恩師の信頼が圧を和らげ、誰よりも熱い心に火をつけた。卒業後は事あるごとに「あの時のことが糧になって成長させてくれました」と口にする。渡辺氏も「ほっとしました」と目を細める。
日刊スポーツ
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