今から20年ほど前に放送された「愛の貧乏脱出大作戦」。その番組に登場してきた北九州市小倉北区の飲食店「さくら亭」。
引用の動画は、番組放映当時は中学生だったというプロレスラー兼ユーチューバーの青年が、視聴者からの依頼で現地を訪れて「さくら亭」の調査を行ったが全く手掛かりがなかったという内容である。
この青年の動画では東京から来福して「さくら亭」の他にも、視聴者から依頼のあった店舗を数ヶ所調査したとのことであるが、現在も営業中の店舗は皆無で店主の消息さえつかめないという有り様で、飲食業界の厳しさを改めて知る内容であった。
実は私、この「さくら亭」へ行ってきたことがあった。イカを食べさせてくれるということで、番組終了後、1ヶ月後くらいのタイミングであった。
そこの開店時間くらいの、平日の18時過ぎに終業後愛車を走らせてまっすぐお店へ伺ったが、仕込みが終わっていないということで店内で少し待って、どんなメニューかは覚えていないがイカの焼き物の付いた定食を注文した。
残念ながら店内には私以外は客がおらず、寂しくボッチ飯となっていた。
味は可もなく不可もないという印象。なぜ行ってきたかと言えば、東京にある名人の店で厳しく指導され、いい歳をしたご主人がむせび泣いていたのが印象的だったから。
真面目ながらもあまり元気もない様子も気になっていた。
ご主人はテレビ同様にあまり表情が冴えない。まあ、表情はあまり冴えなくてもきちんとしたものさえ出せば、客は来るものである。
女将さんと思われる女性から「番組を見て、来たのですか?」と尋ねられたこともあり、帰り際には「頑張ってください」と声をかけて、店を後にした。
大食漢だった私は、当時門司区にあった名店の「黒川うどん」まで足を伸ばして、「さくら亭」を出てから小一時間後にそこのうどんも食べたが、正直そちらの方が値段も半分以下で美味しかったことも思い出される。
「さくら亭」は正直、場所もあまり良いところにあるとは思われず、味は悪くはなかったが、後から食べた名店のうどんがよほど印象に残ったほどだったので、厳しいかなとは思っていたが、それから2年くらい後に偶然その場所を通ると、既に店はなくなっていた。
北九州やその周辺は舌の肥えたお客が多い土地柄。
今考えると板前修行もないまま脱サラでイカ料理を出すというのはいささか無謀な話であった。
東京の達人店を悪く言うつもりはさらさらないが、九州・山口の人は自分の居住地周辺の魚料理に親しんでいるので、なぜ地元に馴染みのある呼子や博多など地元の料理店で修行できなかったのかという疑問も沸いてきた。
やはり、地元の人に受け入れられる料理は、地元の人に教わるのがベスト。
東京で修行したものが地元の味覚に合うとは限らないから、そこはアレンジする必要はあるが、いかんせん脱サラで始めてしまったので、そこまでは工夫できなかったのかなと思わずにはいられない。
最近は「起業支援」等があり、様々な事業を立ち上げる人が増えてきたが、その大半は従来型の飲食店が多く、従来の脱サラと大差ないのが現実である。
愛の貧乏脱出大作戦については色々と思い出があるのでまた書きたいと思う。
起業支援は新しい産業を興して、全国の経済を活性化させるための施策であるが、飲食店ばかりの状況ではパイの奪い合いになるだけで、「愛の貧乏脱出大作戦」のように料理の技術も上がらぬまま多額の負債を抱える人が増えるだけではないかと、経済の先行に暗雲が立ち込めているだけに、そう思わずにはいられない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます