今まで、本物のハイビスカスを見たことがなかった。
ハイビスカスの存在を知ったのは中学生の頃だった。
当時PIKOというブランドが流行っていて、みんなPIKOのTシャツを着ていた。
このときTシャツに描かれていた花がハイビスカスだということを、クラスの誰かに教わったのだった。
描かれていたそれはなんだか底抜けに元気で明るく、ひどく無神経な花だ、という印象を抱いた。
ばかみたい。
着ているみんなも ばかみたい。
色使いも気に入らなかったし、ロゴも嫌いだった。
PIKOに対して妙な敵対心さえ覚えていた。
こうしてPIKOから入ってしまったハイビスカスの第一印象は最悪だったのである。
それから十年以上も時が経ち、
PIKOに敵対心もなくなり卑屈な中学生でもなくなった私は、
この夏、初めて本物のハイビスカスにであった。
気まぐれなスコールに打たれながら、赤く大きく咲き誇るその花は、
強く、たくましく、美しかった。
自然の厳しさを知りながらも、苦労を表に出さずに
道行くものに元気をくれる。
やさしい、やさしい花だった。
私は、ハイビスカスに謝りたい気持ちでいっぱいになり、
そんな美しいハイビスカスを描いたPIKOに謝りたくなった。
ほんとにほんとにごめんなさい。
でもきっとハイビスカスが人だったら、許してくれると思う。
『いいのよ、むかしのことなんて』
そう笑い飛ばして、でも内心傷つきながら。
ほんとにほんとにごめんね。
30AUG 2010 沖縄にて