タザ記

目指せ枕草子。

オリジナル小説 冬烈火 第9話

2021-01-24 22:31:00 | 日記
〜あらすじ〜
ひょんなことから異世界へと迷い込んだ畑崎(はたけざき)。そこは、願いを叶えることをかけて「幸界(こうかい)」を目指すレース「冬烈火」が行われる世界だった。冬烈火への参加を決めた畑崎とその部活仲間の建樹(けんき)、華日(はなか)、鈴望(れみ)の4人は冬烈火の参加者だけに与えられる特殊な力「戒(かい)」を駆使して幸界をめざす。
森に入った4人は、魔物と遭遇した…。

「ガルルルル…。」
魔物はその赤く光る目で俺たちを睨んでいる。
「やべぇ…なんだこいつ…。」
さすがに建樹も動揺しているようだ。他の2人はあっけにとられている。と、次の瞬間魔物が建樹に襲いかかった。早い!
…しかし、建樹はこの動きを捉えていた。ひらりと身をかわし、刀を振った。が、そこに魔物はいない。
「え…?」
建樹はサッと後ろを振り返った、その時には魔物の爪が建樹に降り掛かってきていた。ありえないスピードだ。
「うわぁぁぁ!」建樹の叫びを切り裂くように爪が空を切る音がなる。
キィン…。
しかし、建樹に爪は届かなかった。華日の刀が代わりにそれを受け止めていた。
「やあっ!」華日は刀で魔物の腕をはらいのけ、切りかかった。その刃は魔物の腹をかすめた。
「グルル…。」魔物は依然俺たちを威嚇する。
「センキュー華日。」
「1人で頑張りすぎないでよ!私たちもついてるからね!」
「私もできる限り援護する!」
「お、おう…。」
話をするのもつかの間、魔物がまた襲いかかってくる。今度はさらに早い。
「祝戒 ライトミスト
鈴望の新しい技だ。輝く霧が魔物を包む。魔物はその白い光に困惑し怯んだ。
「陽戒 光の鎖」
その隙を狙い華日が技を放つ。金色の鎖が魔物の動きを封じこめる。
「建樹、今!」華日が叫ぶ。
「まかせとけ!」はるか上空から建樹の声がした。夜の森にその声がこだまする。
「風戒 疾風八閃!」建樹が風を身にまとう。建樹は落ちてくる勢いに乗せ魔物に刀を振るう。疾風の如しその動きは俺の目には見えなかった。

シィィィン…。
森の静寂が俺たちを包み込む。
「グルル…。」
静寂を破ったのは魔物の声だった。
「なんでだ?確実に切ったはず…?」
「ガウッ!」魔物の一振で建樹は弾きとばされた。
「建樹!」華日が叫ぶ。
「くそっ…なんでだ…?なんで…。」建樹が体を起こそうとするが、その体はいうことをきかない。魔物は俺のほうへ向かってきた。
「畑崎いけ!ビビってる場合じゃないって!」鈴望が俺に向かって叫ぶが、俺は動かなかった。
「畑崎!なにしてんの!!」華日も叫ぶ。
魔物は依然俺に近づいてくる。ゆっくりと、確実に大地を踏みしめながら。
「おい。」この時俺は初めて声をあげた。
「そこの魔物、俺とやり合う気あるか?」
俺はこの魔物に呼びかけた。魔物はしばらくその場に立ち止まっていたが、すぐに首を横に振った。そして、じっと俺の目を見つめた。
「え…?」3人は目を丸くした。
「お前からは敵意が感じられない。」
途端、魔物の目の光は水色に変わった。

続く…。
ご覧いただきありがとうございました。
僕は宿題やります。おやすみなさい。




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