カタスミ

『獣の奏者Ⅱ王獣編』上橋菜穂子著

さて、獣の奏者後編です。
前編からうすうす感じていたのですが
私、エリンがあまり好きでないかもしれない…
なんていうのでしょうか、なんかすごく傲慢な感じがしてさ。
王獣に対しての愛情が、周囲の人々には向けられないんだよなぁ…
必死にエリンの事みんな守ってるのに、エリンは王獣の方しか見てないの。
ばれるとやばいからやるなよ…?って言っても、王獣の為ならやるの。
でも、かばってくれている人達の立場とか、処罰の対象になりうる事とか
そう言う事全然考えてない感じがしてねぇ…
なにかやばくなったら自分が死ねばいい、みたいな考えは
無責任な気がするんだよなぁ…
そう言った浅はかさ、傲慢さに途中で気づくものの
大きな変化には繋がってないし…

エリンの何が嫌なのかなぁ、と思いながら読んでいたら
霧の民の人がエリンの事を
『自分の感情を最善のものと信じている』と言っていたのが結構しっくりきました。
自分がやりたいようにやる、そのためには人がどうなろうと構わない
って感じが深い奥底に感じ取れてしまうのがダメなのかもしれない。

結局エリンは王獣とはすごく心を通わせたのかもしれないけれど
エリンの周りの人達には壁を作っていたような。
母親がああいった形で殺されてしまったので
人を信用できない部分があるのかな。
でもエリンの周りの人って、恵まれすぎているくらい良い人達ばかりで
その事に彼女は本当のところで分かっていない気がする。

自分の意思を貫き通すのであれば、いっそ
はぁ?世界なんか知らねぇよ!こんな世界壊れちまえ!
くらいのキャラクターだったらよかったかもしれませんが
なまじ優等生な分、根底の闇の部分が妙に浮きだって見えてしまったのかなぁ。
お話自体は面白かったのですが、エリンに一切共感できなかったため
あまりお話にのめり込む事はできませんでした。

最後はぷっつり終わっちゃって、余韻みたいなのが全然なかったので
その後も少し気になったのですが、続編はこれまた大長編で
これ以上エリンに関わる気にはなれなかったので
獣の奏者はここで終了しときます。

お話の面白さも大事ですが、キャラクターってのも大切だなぁ、とつくづく実感。
この話で一番好きだったのはシュナンかな?

星は3つで。
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