彼女に振られてからの私は、他人からよく見られたいという欲求に取り憑かれた。仕事で大きな成果を残せない自分が他人からよく見られたい欲求を満たすために着飾るという方法を選んだ。手取り18万円なのにも関わらず、10万円以上するバッグを購入したり、1着数万円するような服を購入したりした。<o:p></o:p>
その散財で少ない貯金は全て消えてしまった。さらには消費者金融でお金を借りてまでも散財をするようになってしまった。初めは10万円、それから5万円追加というようにあっという間に融資限度額の80万円に到達することになる。それでも返済額は月々2万円程度だったので何とかなると思い込んでしまっていた。<o:p></o:p>
高い服を着ると、それなりの効果はあったように思う。女性と知り合っても好意を持たれることが多くなったし、オシャレだと言われる回数も増えた。それで調子に乗ってしまい、クレジットカードのリボ払いにまで手を出した。毎月の返済額だけで8万円程度になり、ほとんど借金の元本は減っていないという状況に陥った。<o:p></o:p>
その時の私は、地獄を這いつくばっているような気分だった。何度も借金の残金と睨めっこして、「毎月4万円上乗せで返済すればいつまでに返済が終わるな」などと考えていた。しかし、上乗せして返済した分はその月のうちにまた消費者金融で借りてという繰り返しだった。<o:p></o:p>
全く減らない借金と、次々と襲いかかってくる物欲や自己顕示欲に泥沼にハマってしまった。それでも他人からよく見られたいという欲求からくる物欲は止められなかった。<o:p></o:p>
そんな私に転機が訪れたのは、今思えば奇跡のようなものだった。<o:p></o:p>
Aさんに再会したのである。<o:p></o:p>
職場の同僚の結婚式に呼ばれた私は、上座にAさんを見つけた。雰囲気も着ているものも変わっており最初は誰だか分からなかった。しかし、座席表の名前を見た私は思わずアッと声を上げてしまいそうになった。<o:p></o:p>
しかし、上座まで行ってAさんに声をかける勇気はその時の私にはなかった。<o:p></o:p>