“今はお金を使わないことにそれほど苦痛を感じていないと思います。しかし、これから先、N君は成功者としての道を歩いていきます。その時に周りを見て、今と同じようにお金をコントロールすることはかなり難しいことです。例えば、学校を卒業して資格を取得すれば介護職よりも年収は200万円程度上がると思います。今までは周りには介護職しかいなかった。だから200万円年収が上がれば、200万円をそのまま貯金できると多くの人は考えます。しかし、資格を取得した後は、介護職よりも200万円程度年収が高い人たちと日々を過ごすことになります。言っている意味がわかりますか?”
“はい、わかります。確かに資格によって自分の地位が上がると、同じような年収の人たちと一緒に過ごすことになりますね”
“200万円年収が違う人たちを想像してみると、今のN君と生活にそれほど違いがないように思うかもしれません。しかし、たったの200万円の違いでも生活というのは大きく変化します。食事会で選ぶお店も変わってくるし、着ている服や持ち物のランクも違う。誰かとデートするにしても、これまでは5,000円のコースで満足してくれていたものが、10,000円のコースくらいじゃないと相手は驚いてくれなくなる。軽自動車に乗っている男の人はいない。そんな環境の中で、今と同じように生活を切り詰めていくのは想像している以上に難しいことです。私の指導を受けていればN君の年収はその程度では収まらなくなります。年収600万円、800万円、1,000万円と増えてくと、当然周りにいる人たちのランクも変わってきます。それでも、守りの成功を目指すということであれば徹底的にやらなければいけません。それができますか?”
今の私にはメンターが言っている意味がよくわかるが、当時の私にはあまりよく分かっていなかったのだろう。私は簡単に考えていたし、できると信じていた。しかし、メンターの言っていたことは完全に未来を見据えたものだったと思い知ることになる。
“できると思います。私は守りの成功を目指したいと思います”
そのように返事をした。
お金を使わないことで成功につながる。それが、私が通ってきた守りの成功の道だった。しかし、メンターが言っていたようにお金を使わないというシンプルで単純な計画すら簡単ではなかった。それは、学生時代でもそうだった。
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