私は同僚の結婚式なのにも関わらず、Aさんから目が離せなかった。私と一緒に介護士として働いていたAさんと同一人物なのに、オーラが全く違う。完全に私と違う世界の人間だった。<o:p></o:p>
そんな私がトイレに行った時に後ろから声をかけられた。<o:p></o:p>
「Nさんですよね?」<o:p></o:p>
Aさんだった。私は震える声でこう答えるのが精一杯だった。<o:p></o:p>
「Aさん、ですよね?」<o:p></o:p>
Aさんは当時と全く変わらない笑顔を私に向けてくれた。私は緊張が一気に和らいでいった。しかし、何を話しかけていいものか分からなかった。<o:p></o:p>
「元気そうでよかったです。Nさんのことを時々思い出していましたよ。」<o:p></o:p>
Aさんが自分のことを思い出してくれていた。その言葉だけで飛び上がりたいくらいに嬉しかった。本来ならば、ここで近況などを伝えるタイミングなのだろうが、あまりの緊張で覚えていないが、後にAさんから聞いたところによると、私はAさんに向かってこう言ったらしい。<o:p></o:p>
「弟子にしてもらえませんか?」<o:p></o:p>
そこから私とAさんの師弟関係が始まった。Aさんは結婚式の後に時間があれば状況を教えて欲しいと私に伝えたそうだ。そこは緊張のせいかあまり覚えていないところだ。<o:p></o:p>
結婚式が終わると、Aさんが私に声をかけてくれた。明らかに成功者のオーラを身に纏ったAさんに話しかけられている私はどこか誇らしかった。私が電車で会場まで来ていたことを知ると、Aさんの車に乗せてくれるとのことだった。車種はアストンマーチンだった。<o:p></o:p>
信じられないほどの高級車の助手席に乗った私は緊張で小さくなってしまっていた。それをAさんは笑ってくれた。アストンマーチンに乗って、ホテルのカフェのような場所に到着した。個室のような場所に案内されて、私はさらに小さくなってしまう。<o:p></o:p>
「すごいところですね」私は震えてそう言った。ホテルで食事をしたことなど、これまでに1度もなかった。<o:p></o:p>
そこでの会話は私の人生を全く違うところに連れていくことになる。<o:p></o:p>
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