じりじりと照りつける暑さに顔をぬぐいながら歩く１人の男がいた。菅笠を被った股旅姿のその男は、周りに広がる光景を見ながら小声でつぶやいた。「このような有り様が１か月以上も続いている...

　ここは、赤穂藩から津山藩に入ったところにある山道である。険しい山々を通るその山道に、１人の男がやってきた。　夏の暑さに、その男は手で汗をぬぐっている。「こんな暑い最中だが、ここで...

　春の日差しが差し込み、女たちがたらいで洗濯する中を子供たちが遊びはしゃいでいる。「早くこっちへ行こうぜ！」「ちょっと待ってよ！」　女たちは洗濯の合間に、子供たちの掛け声に耳を傾け...