昔読んだおぼえがある森鷗外の小説『雁』の古い映画をネットで観た。
ウィキペディア「雁 (小説)」あらすじ
より引用させて頂きます。
1880年(明治13年)高利貸し末造の妾・お玉が、医学を学ぶ大学生の岡田に慕情を抱き、末造の来ない日に一人で家にいるようにして、散歩に来る岡田を待つ。ところが、いつも一人で散歩していた岡田は、その日の下宿の夕食が偶然、語り手の「僕」が嫌いなサバの味噌煮だったため、「僕」とともに散歩に出た。途中不忍池で、たまたま投げた石が雁に当たって死んでしまう。かれらは無縁坂の中途にあるお玉の家の前を通ったが、岡田が一人ではなかったので、お玉は結局その想いを伝える事が出来ないまま岡田は洋行する。
不運にも命を落とす雁になぞらえ、女性のはかない心理描写を描いた作品である。ただしそれを、岡田の友人が語り手となって書いており、かれらがその当時は知りえないような、お玉と末造とのなれそめ、末造と妻との諍いなども描かれている。これは、語り手がその後お玉と知る機会を得て、状況を合わせ鏡のように知ったのだと、語り手の「僕」は作中で弁解している。
映像はデジタル加工されて、ある意味見やすくなってる。
壮大な生存の旅:雁」(1953) | クラシック冒険ドラマ | フルムービーHD (The Wild Geese)
うっすら覚えている小説の展開と違っている気がしたので、青空文庫で原作を読み直してみた。
商業的成功が至上命令の映画の原作としては、蛇退治の件くらいしか盛り上がりのない地味すぎる小説だ。
そこで、蛇退治以外にも原作にない大小数々のピークシーンを巧みに織り込み、一方で映像化に向かない原作の描写や視点は大胆にカットし、全体として(当時としては)刺激のある娯楽映画に仕上げてある。
登場人物も総じて、原作より人間臭くわかりやすく描かれている。
もちろん大文豪鷗外の名作なので、基底に流れる哲学と心理は奥深いのだが、それを映画で無理に描いても難解になるだけで、商業的成功は望めないから、これは当然の対応だ。
以後何度か映画やテレビドラマ化されたが、2000年代以降はないようだ。いまなら、さらにもっと大胆に脚色しないと、新たな映画化等の企画は通らないのかもしれん。
(My Favorite Songs)
『雨に泣いてる』〜柳ジョージ『LIVE at 東京厚生年金会館 1995.6.26 -完全版-』Digest
(過去記事増補編集再録)