名無しの教師の日誌

ある公立中学校教師の教育私論と日記です。

現役教師が教える、教師ウケのよい読書感想文

2017-08-24 17:03:37 | 日記(学校)
小中学生の夏休みの強敵と言えば、読書感想文である。

今日は、夏休みも終盤にさしかかり、宿題にラストスパートをかけているであろう中学生諸君に

現役教師である筆者の考える、教師ウケのよい感想文の書き方を、伝授したいと思う。

あくまで筆者の見解です。

すべての教師がこの記事のように考えているという保証はありません。



まずは、本選びについて。

どのような本がよいでしょう?どのような本はまずいでしょう?

一般的な教師は、「年齢に応じたふさわしさ」という視点を持っています。

だから、「難しい本を読まないと、先生たちの評価が悪くなるのかな?」なんて心配する必要はありません

極端な例ですが、マルクスの資本論やクラウゼビッツの戦争論、ヒトラーのわが闘争などを題材にしてきたら、普通の教師は逆に違和感を感じるはずです。

まぁ、個人的には、そんな読書感想文を書いてくる生徒がいたら、それはそれで読んでみたい気がしますけどね。

最近はやりの、ライトノベルやボカロ原作などというものはどうでしょうか?

これは、人によりますね。

私は、そうゆう本が題材でも、中身がしっかりしていればいいんじゃね?と思っています。

しかし、ラノベやボカロ本が題材であるというだけの理由で、これではだめだとしてしまう先生もいるかもしれません。



では、どのような中身の感想文なら、「しっかりしている」と感じてもらえるでしょうか

先に、逆に「だめだこりゃ」と教師が感じるであろう感想文を述べます。

・その本を読んだ動機が不明瞭、または弱い。

友達に勧められた、話題の本だから、表紙の絵がかわいかった、などですね。

ただし、これは挽回可能です。

動機が弱くても、その後の内容がよければ、トータルとしてそこそこの評価がもらえます。

・あらすじ+簡単な感想で終わっている。

これは特に多いです。

読書感想文なんだから、感想を書けば良いんでしょ!?と考えてしまうようですね。

これはもう「だめだこりゃ」感想文の典型です。



じゃ、何を書いたら良いでしょうか。

私が考える、良い読書感想文の構成は、下記の通りです。

1.その本を選んだ動機・きっかけ
2.簡単な本のあらすじやその本が書かれた背景、筆者についてなど
3.本を読んでどう思ったか
4.この本を読んで、今後どのように生活していきたいか
(超重要)

これから、それぞれについて詳しく解説していきます。



1.その本を選んだ動機・きっかけ

できたら、生活に関連している動機が良いです。

サッカー部に所属しているから、サッカー選手の本を読んだ。

最近、こんなことに興味を持って生活しているから、それについての本を選んだ。

この間、こんな困ったことに遭遇してしまったから、その解決を求めてこの本を選んだ。

などですね。

動機やきっかけについて何も触れないのは、やめるべきです。

簡単でも良いから、何かしらは書いてください。



2.簡単な本のあらすじやその本が書かれた背景、筆者についてなど

これは長くなくて良いです。

これを長く丁寧に書いても、評価が良くなることはないです。

むしろ、できるだけ簡潔に、要点を絞って述べることが好ましいです。

だって、感想文であり、書籍紹介文ではありませんから。



3.本を読んでどう思ったか

これを書き漏らす生徒はなかなかいないんですけれど

「登場人物の○○という行動に感動した」
「先が気になって、読んでいてどきどきした」

などは、あまり良くありません。

この内容は、2.と4.の接続という意味合いが強いです。

以下に記す、4.で書くべき内容を読み、それの橋渡しとなるような感想を書いてください。



4.この本を読んで、今後どのように生活していきたいか

これが超重要なんですけど

この部分を書かなかったり、1文2文で簡単に終わってしまう生徒が、とても多いです。

考えてみてください。

そもそも、教師はなぜ生徒に読書感想文を書かせるのでしょう?

それを読んで何を知りたいのでしょう?


教師が一番知りたいのは、その本のストーリーでもなく、登場人物の人物像でもなく、本の文章に隠されたトリックでもありません。

その本を読み、その生徒が何を学んだのか、どのような向上につながったのか、です。

だから、締めくくりが

「ぼくも、登場人物の誰々のように、友達を大切にしたいなと思いました」などと簡単に終わったら、「あーあ、残念」なのです。

また、「ぼく・私は今後どうしたい」という、主語が生徒自身であることもポイントです。

「日本人は、こうあるべきだ」

とか

「北朝鮮の理性ある行動を望む」

とか

「社会全体がこう変わらねばならない」

というのを、中学生の読書感想文に求める教師はめずらしいだと思います。

大学のレポートじゃないんですから。

ですから、必ず、終盤に

この本を読んで、こんなことがわかった、こんなことが勉強になった。

だから、これからはこんなことに気をつけて生活していきたい。

本を読んで初めて気づけたが、自分の置かれている○○というような境遇はとても感謝すべき事なのだとわかった。

というようなことを書いて下さい。


ここが最も読書感想文で力を入れるべきところです。



実は、私の学校の生徒たちは、不幸にも、読書感想文の締め切りが、始業式ではなく、出校日でした。

そのため、私は自分のクラスの生徒たちの感想文をすでに読みました。

最後に、その中から、私が「これはいい」と感じたものの、簡単なあらすじを紹介します。

A君の読書感想文

1.1学期に、総合の学習で、障害のある方について学んだ。それを踏まえ、点字を発明した人の伝記を読んだ。と、動機が書かれている。
2.この本によると……と、伝記を読んでわかったことがまとめられている。
3.今でこそ普及している点字だが、その開発にはこんなことがあったのか、なかったら不便だろうな、という感想が書かれている。
4.自分にとって当たり前のことが、人によっては当たり前ではないと言うことを知れた、とか、困ってる人を見かけたら親切にしたい、というような、これからの自分の生活について書かれている。

Bさんの読書感想文

1.私はディズニーが大好きだ。何度も家族旅行で行っている。でも、この間行ったとき、そこで働いている人にも興味がわいた。だから、ディズニーで働く人を題材にした本を読んだ、と動機が書いてる。
2.この本によると……と、伝記を読んでわかったことがまとめられている。
3.幼少の頃はただ楽しむだけだが、実はたくさんのおもてなしの心によって成り立っていることがわかった、という感想が書かれている。
4.これからの学校生活でも、思いやりの心を忘れずにいきたいし、気配りのできる大人になりたい、と今後の人生の抱負が書かれている。



これを読んでいる中学生諸君、パクるなよ?(笑

A君、Bさん共に、表現が悪いですが、勉強はあまりできない生徒です。

ところが、素敵な読書感想文を書いてきて、「お、いいな」と思いました。

まだ読書感想文を書いていない諸君、一発逆転のチャンスですよ。

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